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男性なら一着は持っておきたい、自分だけのオーダースーツ。ジャストサイズのスーツを仕立てて、カッコよく決めたいところですが、そのためには下準備が必要です。今回は、オーダースーツの種類や疑問、押さえておくべきマナーについて、伊勢丹新宿店 メンズ館でカテゴリースペシャリストを務める口元勇輝さんに教えてもらいました。
目次
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まずはオーダースーツの種類をおさらい
「オーダースーツ」は、大きく3つに分けられます。どこまでを自分仕様にしたいのかによって選ぶべき種類も異なるので、実際に店頭に行く前に確認しておきましょう。
ちなみに...
オーダースーツの種類を知る前に押さえておきたいのが「吊るし」の存在。「吊るし」とは既に完成している既製品のスーツのことを指しますが、「吊るし」の場合にも袖の長さや股下、ウエストといった簡単なサイズは直すことができます。
パターンオーダー
まず1つ目に紹介するのが、パターンオーダー。呼び方はブランドによって異なりますが、基本的にはゲージ服(着用ができる見本)をもとに、着丈や袖丈、股下などの縦の補正と、チェスト(胸囲)やウエストといった横の補正ができるオーダー方法です。体型補正に加えて、生地やボタン、ライニングも選ぶことができ、一番簡単なオーダースーツとされています。
カスタムオーダー
次に紹介するのが、「カスタムオーダー」と呼ばれるオーダー方法。パターンオーダーよりも細かい体型補正ができるのが特徴で、例として、ジャケットの場合には「いかり肩」や「なで肩」「屈身(身体が前傾した体型)」「反身(身体が後方に反った体型)」の4つの体型に合わせた補正ができ、ボトムスの場合は、お尻が出ている「出っ尻」とお尻が出ていない「平尻」の2つの体型に合わせることができます。「セミオーダー」や「イージーオーダー」「メイドトゥメジャー」と呼ばれることもあり、ブランドによって呼び方が異なるので注意が必要です。
フルオーダー
「オーダーメイド」とも呼ばれる「フルオーダー」は、自分の好みを反映したスーツを作ることができます。パターンオーダーやカスタムオーダーと大きく異なるのが、「型紙が作られるか」「仮縫いがあるか」の2点です。フルオーダーは、その人に合わせた寸法をもとに、「仮縫い」と呼ばれるゲージ服を作成します。仮縫いを試着した上でさらに微調整を加えて作るので、完成までは半年ほどかかります。
フルオーダーの場合は、制作時間が長いことから、完成までの間に趣味が変わってしまったり、体型が変わってしまうことがあります。そのため、再確認として仮縫いの後に「中縫い」と呼ばれるチェックを挟んでから最後の本縫いをするブランドもあります。
フルオーダーとビスポークの違いは?
よく耳にするオーダースーツの種類に「ビスポーク」というものがあります。しかし、呼び方が異なるだけで、ビスポークとフルオーダーの内容は全く同じです。
ビスポークの語源は「be spoken(話す)」。テーラーとお客さんが対話をしながら作っていくものとして名付けられているので、髪色や目の色、骨格を見て似合うものを相談したり、好みや着用するオケージョンを話しながらふさわしいスタイルに寄せる方法です。まっさらな状態から自分だけのスーツを作ることができるので、対話はビスポークの醍醐味とも言えますね。
押さえておくべきスーツのマナー
スーツは、オケージョンによってふさわしいマナーが変化するのが特徴です。そこで今回は、スーツを着用するときに押さえておくべき着こなしのポイントをご紹介します。
クリース
まず、マナーとして押さえておくべきなのが、パンツのセンタークリース(センタープレス)です。口元さん曰く、スーツは縦のラインが大事なので、クリースが入っているだけで足長効果が期待でき、印象が大きく変わるそう。
ポケットチーフ
スーツ着用時には、襟の後ろと袖口、胸元のポケットチーフの3つが覗いているとバランスが良く見えます。モダンなスタイリングを楽しみたい場合には入れなくても良いですが、ビジネスシーンでは入れておくことをお勧めします。
ネクタイ
ネクタイの結び方は、最も基本であるとされる「プレーン・ノット」がおすすめ。結び目は程よい大きさで、後ろが短くなるようにしましょう。「私はアクセントとして小剣(後ろ)が長くなるように結んでいますが、フォーマルな場面では絶対にNGなので、真似しないようにしてください(笑)」とのこと。
クリーニングに出しすぎるのはNG?スーツのケア方法
マナーと一緒に押さえておきたいのが、スーツのケア方法。スーツは自宅で洗うことができないので、クリーニングに出してしまいがちですが、出しすぎはNG。「クリーニング店では、他の洗濯物と一緒に洗うため、油汚れなどが付着してしまう恐れがあります。また、クリーニングをしすぎると生地が痩せて本来の布の光沢が無くなり、生地が薄くなってしまいます。どうしても出したい場合には、信頼できるクリーニング店を選ぶことをおすすめします」。
そこでおすすめのケア方法がブラッシングです。埃を取り除くことができるほか、ウールの場合には、着続けているとどうしても毛が寝てしまうので、それを立たせるためにも、毎日のルーティーンとしてブラシを通すようにしましょう。
クリーニングの頻度は?
そうは言っても、やはり汗をかいたりすると洗いたくなるもの。そこでスーツを良い状態のまま保つ目安として、夏のスーツの場合、クリーニングの頻度は1年に1回で十分。夏が終わったらクリーニングに出す、というサイクルがおすすめです。冬に着るコートやスーツは、汚れが気になったときに出すようにしましょう。それでも気になる方には、水洗いのクリーニングがおすすめです。また、ウールやカシミヤは虫が好む素材なので、虫食いが起きないよう、必ず防虫剤と一緒に保管することが大切です。
【Q&A】オーダー当日に迷わないために知っておくべきことは?
Q. イメージに合ったスーツを選ぶためのコツは?
A. いつもスーツと一緒に着用している靴やワイシャツ、ネクタイを持参すること。採寸時にいつものアイテムがあるとイメージが湧きやすく、自分に似合うスーツを作ることができます。
Q. オーダースーツの作成にはどのくらい時間がかかる?
A. 最低でも1時間30分ほど。時間に余裕があった方がじっくり細かいところまで悩みながら作ることができるので、満足できるスーツになります。
完璧に仕上げるためのチェックリスト
オーダースーツを作る時には、何をチェックするべきなのでしょうか?スーツ作成時に確認しておくべきポイントを教えてもらいました。
✔︎サイズ感
口元さん
サイズ感は、スーツの着こなしに直結するので、必ずチェックするようにしてください。特に確認するべきなのは、「フロントのボタンを留めた時に適度なゆとりがあるか」「お尻が隠れているか」「横や縦にしわが入っていないか」の3点。横にシワが入っていたらサイズが小さく、縦にシワが入っていたら大きい証拠です。
✔︎試着した時の第一印象
口元さん
ゲージ服を試着した時の第一印象はとても大切です。前から見た姿だけでなく、横、ウエストのくびれや背中など、全体のバランスを見るようにしましょう。
✔︎着心地とフィット感
口元さん
着心地は、お客様にしかわからないポイントです。店頭では、遠慮してしまって正直に言えないという人も多くいますが、安い買い物ではないので、気になるポイントは必ず店員さんに伝えるようにしましょう。
オーダースーツを作る時の流れ
続いては、オーダースーツを作る際の手順を確認していきましょう。手順は、パターンオーダーとカスタムオーダーの場合と、フルオーダーの場合の2通りに分けられます。
パターンオーダー・カスタムオーダーの場合
1. カウンセリング
まず最初に行うのが、オーダーの中でも肝となるカウンセリング。カウンセリングでは「何のためにスーツを作るのか」「どういうオケージョンで着るのか」というイメージを膨らませますが、それをもとにゲージや生地を決めることになるので、カウンセリング時にどれだけ細かい要望まで伝えられるかが、良いスーツを作るための手助けになります。
2. 生地選び
カウンセリングで話し合ったイメージをもとに、生地を選びます。生地の素材感によってシルエットの出方が異なり、印象も大きく変わります。
3.ヌード寸を測る
カウンセリングが終わったら、次にするのがヌード寸の測定です。ここでの採寸をもとに、元となるゲージを決めることになります。
4. 試着
ヌード寸をもとに、ゲージ服の試着をします。ゲージ服にはさまざまな種類がありますが、着てみたときに、自分で「合う」「合わない」を感じるので、それに合わせてより自分の体型に合うゲージ服を選ぶことが大切です。型紙にはたくさんの種類があるので、自分の好みやイメージが明確であるほど、決めやすくなります。
5. 採寸
自分に合う型紙を決めたら、最後に試着をしながら採寸を行います。この採寸をもとにスーツを作ることになるので、違和感を感じる部分があったら必ず店員さんに伝えてください。
6. 副資材を決める
スーツのライニング(裏地)やボタンなどを決めます。生地にあったものを選ぶようにしましょう。
7. 完成
採寸したスーツが仕上がったら、完成です。ブランドにもよりますが、採寸から完成までは4週間ほどかかります。完成時には、必ず店頭でフィッティングをして確認することをおすすめします。
フルオーダーの場合
1. カウンセリング
フルオーダーの場合にも同様に、1番最初にカウンセリングをして、どのような目的でスーツを作るのかを確認します。
2. 採寸
フルオーダーの場合には、生地選びの前にヌード寸を測ります。
3. 生地選び
生地によってスーツのゆとり幅が変わるため、選んだ生地をもとに、作成するスーツのサイズを調整します。
4. 仮縫いを試着
採寸をもとに出来上がった「仮縫い」と呼ばれる仮のゲージ服を試着します。その際に着用イメージと異なる場合には、再度サイズの微調整をすることができます。
5. 完成
仮縫い試着時の要望をもとに、本縫いをしたスーツが完成します。最初の採寸から完成までは半年ほどかかります。また、本縫いの前に中縫いができるお店もあります。
オーダースーツの予算相場
オーダースーツの予算は、種類やお店、ブランドによって大きく異なるため、自分の中で決まった予算がある場合には、それをもとに色々なブランドの価格を比較するようにしましょう。三越伊勢丹では、パターンオーダーが5万9400円〜で、セミオーダーは7万5900円〜。フルオーダーだと29万5900円〜ですが、使用する生地によって変動します。
オーダースーツが作れるブランド
ここからは、実際に自分だけのスーツが作れるブランドやテーラーをご紹介。本格的なビスポーク(フルオーダー)が楽しめるテーラーをはじめ、全国に店舗を展開するブランドまで、幅広くピックアップしました。
ビスポークテーラー3選
SARTORIA TRAMONTO
横浜の馬車道に位置するテーラー「サルトリア トラモント(SARTORIA TRAMONTO)」。ビスポーク職人の佐々木聖男氏が、イタリア・ナポリでの経験を生かしたスーツやコートを手掛けています。価格帯は、スーツが44万円~で、ジャケットが33万円~、コートが55万円~(いずれも税込)。納期は約6〜8ヶ月です。
所在地:横浜市中区相生町4丁目 ラタンビル7階
■公式インスタグラム
FUMIYA HIRANO BESPOKE
イギリスでテーラーの経験を積んだ平野史也氏によるアトリエ「FUMIYA HIRANO BESPOKE」では、日本人に合わせたブリティッシュスタイルのスーツを提案しています。価格帯は、スーツが55万円~、ジャケットは42万3500円~、パンツは16万5000円〜(いずれも税込)で、完成までの納期は1年半ほど。
所在地:東京都港区西麻布2-23-8 南雲ビル1階
■公式サイト
Sartoria Icoa
「サルトリア イコア(Sartoria Icoa)」は、イタリア・ナポリの「サルトリア ピロッツィ(Sartoria Pirozzi)」で修行を積んだ職人 石津 健太氏によるビスポークテーラー。今年からはビスポークに加えて、カスタムオーダーの一種であるメイドトゥメジャーをスタートしました。価格帯は、ビスポークの場合はスーツが38万5000円〜、ジャケットが28万6000円〜、パンツが9万9000円〜。メイドトゥメジャーの場合は、スーツが18万7000円~で、ジャケットが13万2000円、パンツが6万500円(いずれも税込)。
所在地:東京都中央区新川1丁目11-10 明祥ビル 2-B号室
■公式サイト
パターンオーダーから作れるブランド・お店6選
伊勢丹新宿店 メンズ館
三越伊勢丹では、「パターンオーダー」「メイドトゥメジャー(カスタムオーダー)」「フルオーダー」の3種類を展開。パターンオーダーとメイドトゥメジャーの場合の納期は4~6週間で、フルオーダーは半年ほど。さまざまなブランドや世界中から厳選した生地を取り扱っているので、自分好みのスーツを作ることができます。
■伊勢丹新宿店 メンズ館:公式サイト
■日本橋三越本店:公式サイト
麻布テーラー
麻布テーラーは、全国に26店舗を構えるスーツブランド。4つのハウスモデルを基本スタイルとした日本製のウール100%の生地に、メイドインジャパンの縫製を施したスーツを展開しています。価格は4万4000円〜で、納期は最短で3週間。
FABRIC TOKYO
全国に11店舗を展開する「ファブリックトウキョウ(FABRIC TOKYO)」は、店頭で採寸をしたら、そのデータをクラウドに保存することができるサービスを提供しています。その後いつでも購入することができるので、まだ買う予定はないけど、自分のサイズを知っておきたいという人にもおすすめです。価格は3万8000円〜で、納期は4〜7週間。
DIFFERENCE
コナカが展開する「ディファレンス(DIFFERENCE)」は、サステナブル素材を使用したオリジナル生地によるスーツを展開。店頭でのパーソナライズサービスに加え、専用のAI採寸アプリで測ったサイズをもとに購入できるサービスも行っています。メンズのオーダースーツの価格は4万1800円〜で、納期は5週間前後。
KASHIYAMA
オンワードが運営する「カシヤマ(KASHIYAMA)」は、ビジネススーツに加えて、礼服やセレモニースーツのオーダーを展開。入学式や新社会人向けのオーダースーツは、2万2000円〜とリーズナブルな価格で販売しています。
SHITATE
青山商事が「洋服の青山」や「ザ・スーツカンパニー」の店舗に導入しているオーダースーツブランド「シタテ(SHITATE)」。ベーシックとスリムの2種類のスタイルと、200種類以上の生地から選ぶことができます。価格帯は3万1900〜8万6900円(いずれも税込)で、納期は最短で14日間なので、「オーダースーツが欲しいけど時間はかけたくない」という人におすすめです。
<連載:同期と差がつくビジネスファッション>
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