フレッシュなファッションに触れていたい一心で立ち上げられた連載「ネクストブランド発掘」。とはいえ世にある幾千万ものブランドを独自調査して発信するのもなんだか一方的な気が……(単に骨の折れる作業を避けただけ)。そんなこんなでこの連載では、セレクトショップのディレクターやバイヤーなどに協力を仰いで注目ブランドをピックしてもらうことに。面白い価値観との遭遇はなんらか自分の糧に変わるもの。初回は新宿の予約制セレクトショップ「ジャックポット(jackpot)」。知っておいて損はナシ、目利きによる推しブランドの話。(文:本田圭佑)
■【ネクストブランド発掘】jackpotで聞く
・第1章:「jackpot」が選ぶ面白いブランド
・第2章:売り買いだけじゃない、セレクトショップとブランドの新たな関係性
・第3章:次世代スウェーデンブランドの魅力
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■jackpot
1994年よりスタートしたインポートアイテム中心のセレクトショップ。繁華街である歌舞伎町を目の前にした雑居ビルの7階に構える実店舗は新宿の隠れスポット的存在。1990年代NY HIPHOPカルチャーのMIX感を根底に持ちつつ柔軟な感性でスケートブランドからハイエンドなメゾンまでを共存させた現代スタイルを提案する。
東京都新宿区新宿3丁目22-11 サンパーク7階
公式サイト
インスタグラムアカウント:@jkptstore
第1章-ジャックポット的面白いブランド-
ジャックポットで聞くネクストブランド発掘は全3章構成。第1章では、「ジャックポット的面白いブランド」を紹介する。ジャックポット流の面白いは、作り手のルーツを軸にした出力が面白く映るブランド、またそれを踏まえてジャックポットでもうまく出力できるもの。バイヤー 奥山達也が3ブランドについて語る。
■チカーノSTYLE×テーラーウェア|SECOND/LAYER
Image by: FASHIONSNAP
まず最初に紹介するブランドは2012年米国ロサンゼルス・ベニス地区を拠点に活動を開始した「セカンドレイヤー(SECOND/LAYER)」。ストリートカジュアルを土台にしながらも、そのウェアの製造はほとんどイタリアやポルトガルで行われているという。西海岸のストリート生まれにしてテーラリング重視の発想、さらにはメキシコの不良スタイルで広く知られるチカーノからインスパイアされたアプローチを上質かつエレガントに仕上げる思考など、とにかくギャップが面白い。
2022年春コレクション
Image by: SECOND/LAYER
「ジャックポットは1990年代の東海岸HIPHOPカルチャーに端を発しています。なのでどこかしらにHIPHOPに限らず音楽的な背景であったり、デザイナーズのようなデパートブランドにアウトドア、ミリタリー、スポーツウェアを合わせるような当時の斬新な感覚を大切にし、なおかつそれぞれの色のあるブランド同士の良いアンバランスさを打ち出すというのがルーツにあります。そういった視点からセカンドレイヤーは共感ポイントがとても多いブランドです」(ジャックポット バイヤー 奥山達也)
2022年春コレクション
Image by: SECOND/LAYER
「彼らとはブランドが出てきた当初、パリの展示会で出会いました。すごく綺麗なスーツスタイルにぼろぼろのスケートシューズを履いたりしていたのが印象的でした。メンバーの3人がおそらく全員メキシコ系アメリカ人。ルーツ的にもメキシカンカルチャーをとても大切にしながらスタイルへ落とし込んでいます。また元を辿るとデザイナーのアンソニーはステューシーからの流れも持っているようです。そんなアメリカ西海岸のストリートがベースにあるのにグラフィックではなくパターンやテキスタイル、それもミニマルでクリーンな世界観の洋服で勝負しているところが、どこか良い意味でひねくれた面白さを感じます」(奥山達也)
■SECOND/LAYER:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
■チロリアンパンク | RIER
Image by: FASHIONSNAP
次に紹介する「リア(RIER)」は2018年にスタートした、南チロル地方の生活様式や伝統をファッションスタイルに反映したフランス拠点のブランド。少々聞き慣れない場所にはなるが、チロリアン柄またはチロリアンジャケットなどに見覚えのある人もいるかもしれない。リアのプロダクトにもそんなチロル地方に古くから受け継がれてきた伝統が多く生かされている。
「いくつかのメゾンを経て独立したデザイナーなのでしっかりとしたものづくりが土台にあります。その上で確固たるアイデンティティを持ちながら遊びを利かせているのが面白いなと思います。ブランドとして『チロリアンパンク』を掲げていますが奇抜さを売りにしたり、いわゆる音楽的UKパンクをわかりやすく表面化させているわけではありません。あくまでも自身の故郷で培った美学にパンクなアティテュードやマインドを掛け合わせたブランドです。個人的にパンク精神がツボということはありますが、アウトドア要素を過剰なエレガントに昇華させずとも、土臭さの一切を打ち消す美的センスや品の良さは多くの人が惹かれるポイントだと思います」(奥山達也)
■RIER:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
■ロンドンPUB SPORTS | BROSKI
第1章最後の紹介はサウスロンドンミュージックシーンの火付け役でもあるアーティスト キング・クルール(King Krule)が、友人と共同で立ち上げたプロジェクト「ブロスキー(BROSKI)」。ストリートから生まれたブランドでオルタナティブな要素を強く持つ。
Image by: BROSKI
「彼らのコミュニケーション内のひとつ、パブスポーツをキーワードに展開しているブランドです。キング・クルールがやっているというのが最初のポイントですが、中身に関してもダーツやビリヤードなどをテーマにした偏った視点が面白いなと。ビリヤードのチョーク入れを作っていて、すごく忠実にディテールも再現しています。しかもハンドメイドでブリティッシュウールを使ったり、こだわり方が異様というか(笑)」(奥山達也)
Image by: BROSKI
「さほど大きくないコミュニティーとしての動き方をしていて、彼らの服を友人関係であるサウスロンドンの旬なアーティストたちが着用している画像がSNS上で見受けられるのもインディーストリートブランドらしくて楽しいです。しかし、そのインディー感の代償と言いますか、デリバリーも少しいい加減な部分が……(笑)。サッカーマフラーがとても人気なブランドで、一緒にプロダクトを作るという話もしていますがなかなか進まなかったり。ただそういう面もジャックポットがこの規模感でやっているお店だから付き合っていけるのかなとポジティブに捉えています」(奥山達也)
※コスモ・パイク(Cosmo Pyke)をモデルに起用
「最初に紹介したセカンドレイヤーもデリバリーに関してそのきらいがありますが、不思議なものでそういったブランドが売れているということも事実であって……。コントロールできていない部分が良くも悪くもブランドの希少性を生んでいるのかも知れませんね」(奥山達也)
■BROSKI:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
セカンドレイヤー、リア、ブロスキー。この3ブランドはいわゆる〇〇〇系のようにジャンルで括るには共通点が見出しづらい。しかしジャックポットが捉える面白さにルールは不要。ルーツである1990年代HIPHOPカルチャーの精神に基づいて今後も発信を続けていく。
「紹介したブランドもですが、他にもうちで取り扱わせてもらっているマルニやオーラリーなどは百貨店や大型店舗とはかなり違う見せ方になっていると思います。正直うちのようなやり方だと好き嫌いが分かれるところですが、有難いことに今のところブランドやエージェント側としっかり話ができていて、理解もしてくれています。ブランド本来の世界観とかけ離れることなく、ジャックポットらしい出力を今後も続けていければと考えています」(奥山達也)
■【ネクストブランド発掘】jackpotで聞く
・第1章:「jackpot」が選ぶ面白いブランド
・第2章:売り買いだけじゃない、セレクトショップとブランドの新たな関係性
・第3章:次世代スウェーデンブランドの魅力
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