
Image by: FASHIONSNAP
歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第47回は1940〜60sシャンブレーシャツ編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
シャンブレーシャツがミリタリー&ワークウェアの象徴になったワケ
ADVERTISING
ヴィンテージ古着の王道と言えば、ミリタリーとワーク。今回紹介するシャンブレーシャツは、その両方に強い関わりを持つアイテムです。経(たて)糸に色糸を、緯(よこ)糸に白糸を用いた平織り生地で、経糸と緯糸の色が混じり合った独特の表情が特徴のシャンブレーは、16世紀頃にフランス北部の都市カンブレー(Cambrai)で誕生したと言われています。元々はリネン素材が用いられており、柔らかな肌触りと丈夫さ、通気性を備えていることから、シャツやハンカチ、寝装品など肌に直接触れるアイテムに使われていたようです。

Image by: FASHIONSNAP
そんなシャンブレー素材をミリタリーウェアとして採用したのが、20世紀初頭のアメリカ海軍です。それまでのアメリカ海軍では、白色の作業服が使われていました。しかし、白い服はどうしても汚れが目立つので、洗濯のために航海で貴重な水を多く使ってしまうことが問題視されるようになります。こうした背景から、制服の生地としてデニムと共に採用されたのが、シャンブレーだったんです。シャンブレーシャツはその後、軍の放出品として民間の労働者にも広がります。先述したように、シャンブレーシャツは機能性に優れているので、農業や製造業など、あらゆるワークシーンで働く労働者たちが着るようになりました。このような経緯で、シャンブレーシャツは、アメリカのミリタリー&ワークウェアを代表するアイテムとして定着したのです。
50sでもまだまだ手が届くお手頃ヴィンテージ
今回ピックアップしたのは、1940年代から60年代にかけてのワークブランドのアイテム。当時、あらゆるワークウェアブランドがシャンブレーシャツを製造していたので、いかにワークウェアとして広く浸透していたかがわかります。

右下の「ヘラクレス(HERCULES)」のアイテムは1940年代の個体
こちらは1902年に創業したアメリカを代表する大手小売企業 JCペニー(J.C.Penney)のプライベートブランド「ビッグマック(BIG MAC)」の1950年代のアイテムです。経糸に黒糸を用いたシャンブレーシャツは、ヴィンテージ業界では「黒シャン」と呼ばれる人気アイテム。1930〜50年代の第二次世界大戦前後の個体が多く、ブルーの生地よりも油染みなどが目立ちにくいことから、当時は鉄道や自動車産業に従事する労働者がよく着用していたようです。








Image by: FASHIONSNAP
こちらは1950〜60年代の「バーリントン(Burlington)」。白いボタンが用いられている個体は、比較的時代が浅い印象です。ペン差し穴など、リアルなワーク感があるディテールが魅力的ですね。








Image by: FASHIONSNAP
僕個人としては、シャンブレーシャツは「古き良きアメリカ」を体現するアイテムというイメージを持っています。ワークウェアらしく、着て洗ってを繰り返していくと、どんどん表情が良くなっていきますし、清潔感があって爽やかに着られるのもポイント。特に、春には最適なアイテムだと思います。とはいえ、ヴィンテージワークウェアばかりでコーディネートを固めてしまうと定番アメカジ感が強くなってしまうこともあるので(それはそれでアリですが)、テーラードジャケットのインナーに着たり、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」のようなモード系ブランドや、キレイ目のアイテムと合わせたコーディネートが好みです。
シャンブレーシャツは生産数が比較的多く、ヴィンテージ市場でもそこそこの数が出回っているので、1950年代の個体でも3万円くらいから、人気のブラックシャンブレーでも5万円くらいから、近年の個体ならば数千円程度から見つけることができ、個人的には1970年代のヒッピーカルチャーブームの影響を受けた刺繍入りのアイテムに注目しています。とはいえ、近年はスーベニアジャケットなどの刺繍アイテムが人気ですので、その影響を受けて今後価値が高まるかもしれません。シャンブレーシャツはデザインやディテールのバリエーションが非常に多いアイテム。是非お気に入りの一着を探してみてください。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭

Image by: FASHIONSNAP
最終更新日:
vol.1 カーハート × ステューシー編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 エルメス ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 エルメス アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エルエルビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 エルメス クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
vol.17 エルメス アレア編
vol.18 スカジャン編
vol.19 カルチャーポスター編
vol.20 エルメス グレンデシャン編
vol.21 アディダス レザートラックスーツ編
vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
vol.23 ハーゲンダッツ編
vol.24 エルメス トルサード編
vol.25 フレンチフレーム編
vol.26 ペンドルトン ボードシャツ編
vol.27 BDUブラック357編
vol.28 アニマル柄シャツ編
vol.29 フェードスウェット編
vol.30 モヘアカーディガン編
vol.31 ウエスタンジャケット編
vol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
vol.33 エルメス オスモズ編
vol.34 ラングラー デニムジャケット編
vol.35 ASAT トライバルカモフラージュ編
vol.36 リーバイス アクションスラックス編
vol.37 レインボーレイクジャケット編
vol.38 パタゴニア ドリズラージャケット編
vol.39 ポロ ラルフ ローレン レザースイングトップ編
vol.40 L-2Bフライトジャケット編
vol.41 エルメス ブックルセリエ編
vol.42 アメリカ軍ヘリンボーンツイルジャケット編
vol.43 パタゴニア パフボールベスト編
vol.44 リーバイス コーデュロイジャケット編
vol.45 ステットソン ハット編
vol.46 1930〜50sカバーオール編
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【令和のマストバイヴィンテージ】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング