Image by: FASHIONSNAP
とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第19回はカルチャーポスター編。
2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
インテリアを「カルチャー」で選ぶ、十倍直昭オススメ ヴィンテージポスター
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皆さんは自宅に置くインテリアを、どういった基準で選んでいますか?シンプル・イズ・ベストの人、機能性を重視する人、色合わせを大切にする人など、それぞれ好みがあると思いますが、僕は自分の好きなカルチャーに囲まれて過ごすのが大好き。音楽や映画など、自分好みのカルチャーにまつわるインテリアがないか、いつも探しています。今回紹介するのは、そんな僕が好んで蒐集しているカルチャーにまつわるポスターです。
まずはこちら。パッと見は少し怪しい雰囲気ですが(笑)、ファッションフォトの大家であるリチャード・アヴェドン(Richard Avedon)が撮影した作品です。被写体の髭を生やしたおじさんは、アレン・ギンズバーグ(Allen Ginsberg)というアメリカの詩人です。
十倍私物
Image by: FASHIONSNAP
ギンズバーグは、1950年代から60年代にかけてアメリカで生まれた「ビート(Beat)」というカルチャーを牽引した人物。自らの同性愛を公にするなど、旧世代がつくった社会制度や価値観を否定し、個人の魂の開放を訴えました。ビートの思想に染まった若者は、ビートジェネレーション(Beat Generation)またはビートニクス(Beatnik)と呼ばれるようになり、ミュージシャンのボブ・ディラン(Bob Dylan)もその影響を強く受けたひとり。ビートは1960年代に世界的なムーブメントとなったヒッピーカルチャーの源流のひとつにもなるなど、世界のカルチャーを語る上で欠かせないムーブメントです。...といった背景も魅力的ですが、僕がこのポスターを手に入れた理由は、シンプルにデザインに惹かれたからなんです(笑)。癖が強いデザインなので、人によっては好き嫌いが分かれるようですが、僕はとても気に入っているので、今も家の目立つ場所に飾っています。
次に紹介するポスターも、なんだか独特の雰囲気がありますね(笑)。こちらはチャールズ・ゲイトウッド(Charles Gatewood)というフォトグラファーの作品なんですが、彼はサングラス姿で煙草を吸いながら記者会見をするボブ・ディランの写真がきっかけで広く世に知られるようになりました。ゲイトウッドは、ボブ・ディランのような著名人だけでなく、身体改造のようなアンダーグラウンドカルチャーの写真も数多く残しており、僕はこのような、少しアウトローっぽい作品が好みです。
「WALL」提供
Image by: FASHIONSNAP
こちらは誰もが知る大物俳優、デニス・ホッパー(Dennis Hopper)の写真です。が、写っているのはデニス・ホッパーではなく、こちらも大物アーティスト アンディー・ウォーホル(Andy Warhol)。実はホッパーはフォトグラファーとしても長年活動をしており、この写真もホッパーが撮影したもの。これまで写真集を数多く出版するなど、そのアートセンスは高い評価を受けているんです。ポスターを見たときに、「お、ウォーホルの写真だ。でもなんでデニス・ホッパーって書いてあるの?」といった会話が生まれるのも楽しいですね。
「NEVER LAND」提供
Image by: FASHIONSNAP
最後に紹介するポスターも超大物。アメリカンポップアートの旗手として知られるキース・ヘリング(Keith Haring)の作品です。このポスターを見て「おっ!」と思った方は、この連載「令和のマストバイヴィンテージ」の愛読者ですね!連載第二弾で紹介したキース・ヘリングのTシャツと同じモチーフで、ダンサーで振付師のビル・T・ジョーンズ(Bill T. Jones)の身体にヘリングが直接ペイントし、それを写真家のツェン・クワン・チー(Tseng Kwong Chi)が撮影した作品です。このようにTシャツと同じモチーフのポスターを探す、といった楽しみ方もできます。
「WALL」提供
Image by: FASHIONSNAP
Tシャツなどに比べると手頃?「自分だけのヴィンテージ」を見つけよう
現在はTシャツをはじめとするヴィンテージウェアの価値が非常に高くなっていますが、ポスターにはまだまだ比較的手頃な値段のものが残っています。例えば、大御所フォトグラファーのブルース・ウェーバー(Bruce Weber)のヴィンテージTシャツには百万円を超える値段が付くこともありますが、ポスターだと数万円から手に入れることができます。
また、マン・レイ(Man Ray)やロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)、ハーブ・リッツ(Herb Ritts)の作品など、世界的フォトグラファーが手掛けたポスターであるにもかかわらず、一般的な知名度がそれほど高くないためにヴィンテージの市場価格が割と手頃、といったケースもあるので、「自分だけのヴィンテージ」を見つけるのも楽しいですよ。最近は古着屋でもポスターを取り扱うところが増えているので、買い物のついでにチェックしてみてください。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭
vol.1 Carhartt × STÜSSY編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 HERMÈS ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 HERMÈS アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エルエルビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 HERMÈS クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
vol.17 HERMÈS アレア編
vol.18 スカジャン編
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【令和のマストバイヴィンテージ】の過去記事
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