MM6 Maison Margiela 2025年秋冬メンズコレクション
創業者マルタン・マルジェラの意思を継ぎ、コンテンポラリーなクリエイションを続ける「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」は、初めてメンズに焦点を当てたコレクションをイタリア・フィレンツェで発表した。エムエム6 メゾン マルジェラの歴史は意外にも古く、0から23の番号を振っているメゾン マルジェラの「6 : 女性のための衣服(ガーメント)」が独立し、1997年にブランドが誕生した経緯がある。今となってはジェンダーフルイドで男性からも人気を集めるブランドに成長したわけだが、ヘイキ・サロネン(Heikki Salonen)率いるデザインチームのクリエイションの真髄である、現代に生きる人々に向けて考え抜かれた「実用性」は、第107回ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Imagine Uomo)のゲストデザイナーとして招待され実施した2025年秋冬メンズショーでも遺憾なく発揮された。
会場は、ピッティ・イマージネ・ウオモの会場であるバッソ要塞から程近いオルティコルトゥラ庭園。ガラスの箱の中のような空間で、イギリスのロックバンド「パルプ(Pulp)」の楽曲「This Is hardcore」のムーディーなチューンにのせて、官能的な男性像を描いた。
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ヘイキ・サロネンは物語性のないものを追求したとし、「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のアイコニックなイメージとメゾン マルジェラのアーカイヴを再考してコレクションに反映。ジャズ界の革新者で、自らがスタイリスト、そしてアートディレクターとなってセルフイメージを打ち立てていったデイヴィスのフィルターと、前衛的な作品を発表してきたメゾンのメソッドに実用の解釈を加え、ルレックスなどのタッチでグリッターなワードローブを作り上げた。
ファビュラスな女性をイメージしてデザインしたというフェイクファーのブルゾンはリバーシブル仕様。裏返すと無骨でソリッドなメンズのボンバージャケットに様変わりし、着こなしに幅を与える。リネンにプラスチックを塗布してレザーのような質感を表現したジャケットなど、表面処理により独特の風合いを表現したアイテムも散見され、スポットライトが当てられたようにグラデーション加工されたデニムのセットアップは、モノトーンのコントラストでコレクションにアクセントを加えた。
Image by: Giovanni Giannoni
Image by: Giovanni Giannoni
Image by: Giovanni Giannoni
アクセサリーでは、伝統を感じさせるローファー、トランペットバッグ、バイカーケースが揃い、「アニェル(Agnelle)」とのコラボレーションによるモジュラーグローブも披露された。また「レプリカ」スニーカーは使い勝手の良いベロクロで仕上げており、そのデザインはどこか懐かしい雰囲気を宿している。
Image by: Giovanni Giannoni
Agnelleとのコラボグローブ
プラグマティズム(実用主義)と呼ばれる「役立つものが真理である」という考え方があるが、「人ではなく服をデザインしている」と語ったデザインチームの言葉にその全てが凝縮されている。行動や行為などの結果によって真理や価値が決まるこのスタンスのように、アーカイヴを紐解き、試行錯誤を重ねて都度アップグレードさせていくメソッドは、歴史あるメゾンだからこそなせる技だ。実用性はさることながら、トレンドや性差を飛び超えることができるからこそ生まれる"時代における着やすさ"は、服だけでなく人と服との関係性もデザインし、エムエム6 メゾン マルジェラの確立したアイデンティティとして機能している。
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