
「中高生時代は放課後になると松本パルコに集まっていました。松本市民の“青春の思い出の場所”といえばパルコなんじゃないでしょうか」、ある地域住民はそう話す。
1984年8月に松本中心市街地に開業した松本パルコは、本日2月28日にその40年間の歴史に幕を下ろす。長年松本市、ひいては長野県内有数のカルチャースポットとして存在感を発揮してきた同店が市民、そして長野県民に与えた影響は大きい。
今回FASHIONSNAPでは、最終営業日に実施された閉店記念イベントに密着。"最後の松本パルコ"の様子を随時更新していく。同店が地域とともに歩んだ歴史、いかに地域住民たちから愛されてきたか、その姿を記録する。

目次
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10:00 開店 記念品を求める長蛇の列
【9:30】
10時の開店を控え、入り口にはオープンを待つ人は82人。凍える寒さの中、椅子を持参して並ぶ人も多く、来店者たちの高い熱意を感じる。

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先頭に並ぶ松本市内在住の40代男性は、先着400人に配布される記念品のハンガーを求めて朝7:30から待っていたという。「学生の頃よく来ていたので、最後と聞いて来ました。なくなると聞いた時はあまり実感がなかったけれど、今月に入ってからは何度も来ています」と話す。2番目に並んでいたのは、50代の男性。松本市の隣の塩尻市から訪れ、8時ごろから並んでいたという。「若い頃はよく来ていましたが、もう若者じゃないので最近は来なくなっていました。でも、今日は最後なので」と教えてくれた。2人とも今日のために有給を申請してきたという。

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【9:55】
開店5分前のアナウンスが流れる。気がつくと行列はパルコの建物を半周ほど囲み、281人が列を成していた。青春時代をパルコで過ごした世代を中心に、学生や若い親子連れ、親子3代で来店する客など顔ぶれは様々。
【10:00】
ついに最終日の営業がスタート。行列は絶え間なく入店し続け、ハンガーを手にした来店者たちは各々目当ての店舗へ向って行った。

先着400名には記念品として松本パルコのロゴを刻印したオリジナル木製ハンガーを配布した。このロゴは松本市出身のアートディレクター 清水貴栄がデザインしたものだという。客足は絶えず、開店直後に予定個数の400個の配布が終了。開店前の行列は最終的に300人に及んだ。
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【10:30】
3階のプリクラブースには高校生女子5人組の姿。「パルコにはプリクラがあるのでよく撮りにきていました」と話す。


12:00 平日昼から大盛況のフェアウェルパーティ
【11:50】
6階の特設会場では、パルコに40年間の感謝を伝えようという地元の有志によるフェアウェルパーティが始まろうとしていた。長野県内外から15店舗の人気店が出店し、料理やドリンクを振る舞う。中には今回のために用意されたメニューもあった。

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会場には12時のオープンを心待ちにする人が列を成し、平日の昼とは思えぬ活況ぶりだ。「金曜日なので、どうなることかと心配していたんですが、よかったです」と担当者は喜びを噛み締める。

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【12:10】
オープンとともに拍手が起こった会場。同県諏訪市と塩尻市から訪れたという20代のカップルは「偶然2人の休みが重なったので、せっかくだからと思い来ました。学生の頃からよく来ていたけど、デートでくるのは初めて」と笑う。

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代々木でビアホール「Watering Hole」を営む林ゆうやさんは松本市出身。松本ブルワリーで製造したクラフトビールを振る舞う。松本パルコとは“同い年”だと笑って教えてくれた。

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今回の閉店イベントを指揮するパルコの宣伝部担当者は、新卒入社時の最初の配属が松本パルコだったため思い入れもひとしおだという。「色々な店舗にもちろん思い入れはあるけれど、松本は“特別”。テナントさんとの距離が特に近い店舗で、たくさん良くしていただきました。テナントさんに育ててもらったんです」と、賑わう会場を感慨深そうに見つめていた。

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【13:30】
4階特設会場には、2月1日からメッセージボードが設置されている。付箋に寄せられたメッセージには、様々な来店者からの松本パルコへの感謝や同店の思い出が綴られていた。会場では、メッセージを書き添える人や懐かしそうにメッセージを読む来店者の姿が見られた。

















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【14:30】
各店の名物店員たちは最後の接客に勤しむ。2階のコスメ専門店「ローズマリー」の安藤店長は同店に勤めて約14年。しかし、同店の他のスタッフと比較すると“歴は短い方”だという。それだけ長年、店舗の“顔”となるスタッフたちが店を支えてきた。安藤さんは「若い頃はよく他のテナントの方とも仕事終わりに飲みに行ったりして、楽しかったですね」と振り返る。
閉店前最後の週末は3連休。名残惜しむ多くの来客があったそうだ。

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【14:50】

1階の池の鯉を眺める子どもたち
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15:00 パルコアラ登場!
【15:00】
パルコのマスコットキャラクターである「パルコアラ」が来店。各フロアを練り歩き、来店客やスタッフたちと記念撮影を楽しんだ。この後18:30まで、休憩を挟みながら各階を巡回していく予定だ。

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18:00 「今は去っても、また逢える」アオイヤマダによるパフォーマンス
【17:30】
仕事や学校帰りの来客が増え始め、各フロアは賑わいを見せる。
6階のフェアウェルパーティ会場の盛り上がりも最高潮へ、久々の再会を果たす人や友人同士が集い、"まるで同窓会"。皆が思い出話に花を咲かせた。
同じく6階の特設会場では、1969年から現在に至るまでのパルコのB全ポスター約100枚を展示するポスター展も開催。そして同会場では18:00から行われる、松本市出身のアーティスト アオイヤマダと高村月によるユニット「アオイツキ」のパフォーマンスのリハーサルが行われていた。
アオイは松本パルコ閉店のクリエイティブに登場しており、自身が登場しているポスターの前でパフォーマンスを行う。
【17:50】
客入れがスタート、事前に行われた抽選の当選者たちで会場は超満員に。
【18:00】
パフォーマンスがスタート。アオイヤマダは「松本パルコ」を、高村月は「春」を表現し、2人が出会うことで松本パルコは「松本春子」に変化するというストーリーだ。

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「明日から春になります。気象学によれば、3月1日から春が来る。春は人生の句読点」
という語りとともに、2月末で閉店する松本パルコに対しての感謝と別れ、明るい未来への祝福を表現した。

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終盤には「あなたがパルコで鬼ごっこをしたことも、あなたがパルコで買ったお洋服も、あなたがパルコで食べたケーキも、松本パルコが覚えています。松本パルコはいなくなりますが、みなさんが過ごした時間、思い出は決して消えません。みなさまどうか、松本パルコのことを忘れないでください。本当にありがとうございました」と語り、「今は去ってもまた逢える」と歌うように繰り返してパフォーマンスを締めくくった。

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20:15 閉店セレモニー「これほど深く愛されたパルコはない」
【19:00】
2部制で行われたパフォーマンスが終わると、閉店セレモニーが始まる前に斉藤博一店長は報道陣の囲み取材に応じた。
「松本はパルコにとっては“小ぶり”なマーケットだったのにも関わらず、40年間営業を続けてこられ、これだけ多くの方々から支持をいただけたのは、松本が文化や芸術を大切にする街であったこと、そして地域の方々のデザインやモノ作りに対する関心が非常に高かったことが大きな理由だと感じています」とコメント。
数値的な面だけでは測りきれない松本の環境は、パルコの中でもかけがえのない存在であったとし、「パルコの中でも特に、お客様や地域の方々との絆が強く、愛されていた。松本パルコを支えてくださった地域の方には最大限のお礼を申し上げます」と感謝の言葉を述べた。
オープンからラストまで、賑わいを見せた松本パルコ最後の日。顧客たちからは「松本パルコが青春の思い出だった」「松本の象徴だった」といった言葉を受けたという。営業終了まで1時間を切った店内で「この瞬間をしっかりと胸に焼き付けて営業を終えたい」と語った。

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【20:00】
多くの人に悲しまれながらついにパルコが閉店する。建物の公園通り側入り口付近に閉店セレモニーを見届けようと集まった人の中には、感謝の言葉が書かれたメッセージボードを掲げる姿も見られた。

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【20:15】
いよいよ閉店セレモニーがスタート。会場の周りには、多くの地域住民が集まりその様子を見守る。

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セレモニーには、臥雲義尚松本市長とパフォーマンスを披露したアオイヤマダ、高村月がゲストとして登壇した。

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臥雲市長は「松本パルコは、松本のかっこよさのシンボル。“松本は他の地方都市とは違うんだ”という気持ちを市民に持たせてくれた特別な存在だった」とコメント。「パルコに与えてもらっていたいろいろな力を、これからは私たちひとりひとりがこの街で生み出していかねばなりません。松本市では、駅前を中心に広いエリアで変化が起きています。新たな動きを前向きに捉え、パルコとともに歩んできた40年を、これからもっともっと明るく前向きなものにしていくことを皆さんとともに誓いたいと思います」と語った。

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【20:20】
市長が挨拶を終えると松本市出身の写真家 白鳥真太郎による集合写真撮影会が行われた。公園通り側入り口の裏手にある駐車場の3階から、集まった観衆たちとともに松本パルコの姿が写真に収められた。司会者の掛け声とともに「ありがとう、松本パルコ」と唱和する。大衆から自然と大きな拍手が巻き起こった。

カメラに手を振る観衆
Image by: FASHIONSNAP

集合写真
Image by: 白鳥真太郎
【20:30】
セレモニーの最後には、斉藤店長が登壇。「これほど深く愛されたパルコはないと感じております」と集まった住民たちに直接感謝を伝えた。シャッター代わりの垂れ幕が下りると、観衆からは拍手喝采と「ありがとう!」という力強い感謝の声が相次いだ。セレモニー後には、パルコを呼ぶ“パルココール”が自然と発生。パルコの最後の姿を写真に収めようと、人だかりの熱はなかなか冷めなかった。

Image by: FASHIONSNAP
【20:50】
セレモニーを終えた20:50。松本のパルコロゴから灯りが消えた。
Video by FASHIONSNAP
カルチャーアイコンとして市民、ひいては県民たちのライフスタイルを支えた松本パルコの最後の姿には、地域住民と歩んだ日々が伺い知れた。

同店に続き、今年3月末には松本駅前の「松本 井上百貨店」も閉店する。変化の最中にある松本駅前〜中心街の今後に注目が集まる。
最終更新日:
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