「エムエーエスユー(M A S U)」が「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 S/S」で開催したランウェイショーで印象的だったのはフロア全面に赤い布が敷き詰められ、レッドカーペットを思わせる会場だ。デザイナーの後藤愼平はレッドカーペットのことを「最高の舞台に続くもの」と表現した。以前からパリへの進出に高い意欲を示していたエムエーエスユーにとって、今回のショーはパリという大舞台へと続く”道”を示しているようだ。
エムエーエスユーは、「マスプロダクション」をコンセプトに掲げ2017年春夏シーズンにデビュー。リブランディングに伴い、2018-19年秋冬コレクションから後藤がデザイナーを務めている。2021年秋冬コレクションと2022年春夏コレクションではランウェイショーを開催。東京のファッションウィークへの参加は今回が初めてとなった。
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エムエーエスユーが2023年春夏コレクションのテーマに掲げたのは「ready」。物事がふさわしい場所や状態にあることを示す言葉だが、後藤の”ふさわしさ”に対する感覚は独特で、「例えば、最上級のドレスで着飾ってレッドカーペットを歩くこと、ワイドなスウェットパンツの裾を引き摺りながら裸足でレッドカーペットを歩くこと、どちらもふさわしいと感じる」と話す。リアルとアンリアル、フォーマルとグランジ、未熟と成熟など、一見相反するもののように思える事象に対し、2面性を破壊するのではなく、柔軟で俯瞰的な視点で捉えるという姿勢がエムエーエスユーのクリエイションに根付いている。
スワロフスキーやスタッズで装飾が施されたヴィンテージデニムにハットを被ったファーストルック、「ジャクソン5」を彷彿とさせるキッズモデル、スパンコールやグローブといったアイテムが象徴するように、今回のコレクションの着想源となったのは世界的スターのマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)だ。後藤はマイケル・ジャクソンについて、煌びやかな世界的ポップスターとしての側面と、フードを目深に被りパパラッチから逃げている側面の、対照的な二つの佇まいがどちらも等しく魅力的に映ったという。
エムエーエスユー 23年春夏コレクションのファーストルック
Image by: FASHIONSNAP
エムエーエスユー 23年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
今回のコレクションでは、ダブルのジャケットとスカートのセットアップに極太のスウェットパンツをレイヤードしたスタイルや、スパンコールをふんだんに使用しながらもフード付きのスーパーマキシ丈で魔法使いが着ているローブを思わせるようなワンピース、肋骨をイメージしたようなカッティングが施されたトップス、ブランドのシグネチャーであるポップコーントップスの生地を用いた仮面のルックが象徴的だった。上述したように、いずれも2面性をブランドらしい視点で再解釈し、ルックに落とし込んでいる。
エムエーエスユー 23年春夏コレクションのフィナーレ
Image by: FASHIONSNAP
エムエーエスユー 23年春夏コレクションのフィナーレ
Image by: FASHIONSNAP
エムエーエスユー 23年春夏コレクションのフィナーレ
Image by: FASHIONSNAP
エムエーエスユー 23年春夏コレクションのフィナーレ
Image by: FASHIONSNAP
フィナーレではモデルたちの登場に合わせ、会場に赤のテープが降り注いだ。ショーの最中はポップスターを思わせる佇まいを徹底していたモデルたちが、音楽に合わせ自由に踊る姿でショーは幕を下ろした。
エムエーエスユー 23年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
ショーを終えた後藤は今回のテーマである「ready」は今のブランドの状態も示しているとし、「さらなる飛躍に向けて、準備は万端。いつでもかかってこいという状態」と語った。東京からパリへ、その名を世界へ轟かせんとするエムエーエスユーの今後に期待が集まる。
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