黒河内真衣子が手掛ける「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」が9月26日、2024年春夏コレクションをパリで発した。テーマは「Fragments」。パリ3区にあるレストラン・複合施設「オガタ・パリ」を貸し切り、ランウェイショーとプレゼンテーションが行われた。
緒方慎一郎が日本文化を伝える「オガタ・パリ」
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「HIGASHIYA」や「八雲茶寮」を手がける建築家の緒方慎一郎がプロデュースしたモダンな空間。実は「オガタ・パリ」でファッションショーが開催されるのは、初めてのことだ。フランスという異国の地で日本の文化を正しく伝える「オガタ・パリ」は、黒河内自身のクリエイションと共鳴する場所であり、個人的にも好きな場所だという。ここでブランドの世界観を伝えたいという黒河内の願いから、特別なロケーションでのショー開催が叶った。
400年前の初期伊万里の陶片から着想
デザイナーの黒河内が佐賀県有田町を訪ね、17世紀前半の初期伊万里の陶片から感じる物語や、過去と現代の陶工たちのものづくりからイメージを広げて衣服に落とし込んだコレクション。ファーストルックは「陽刻」から着想を得た、エンボス加工のシャツドレス。陽刻とは、紋様入りの型を押し当て、柄を浮かび上がらせる、初期伊万里の特徴的な技術のこと。黒河内が描き下ろした草花モチーフの図案を基にしたこのエンボスは、シャツのみならずデニムやジャケットにも使用されている。
釉薬が持つ不均一な美をファブリックに
続いて目を引いたのは、初期伊万里の淡いトーンにインスパイアされた、ニュアンスの異なるホワイト、エクリュ、ミントグリーンのファブリック。今シーズンのキーカラーでもある。柔らかな輝きを放つ陶器の佇まいを、光沢のあるシアーなラメジャージー素材やムラ染めのジャカードなどで表現した。また、手作業による絞り染めが施されたドレスは、釉薬がまだらにかかっているようなテクスチャーが印象的。アシンメトリーなシルエットは、釉薬が持つ「不均一な美」を表現している。
陶片を用いた坂本龍一の音楽
さらに、自身が繰り返し訪れた佐賀の景色を投影した、草花モチーフのジャカードが、ドレスやジャンプスーツで登場。シルクのコートやセットアップに織り込まれた唐風の模様も、パーソナルな記憶のかけらの投影だという。
音楽は、伊万里焼の陶片の音を使用した、坂本龍一の作品を用いた。優しい風鈴のような繊細な音色は、焼き物がぶつかる音。デザイナー自身、制作期間中の記憶が回想される音だという。400年前から現代まで、時代を問わず、デザイナーのフィルターを通して美しいもの、物語性があるものを落とし込んだコレクションとなった。
デザイナー自身が作るボタンやアクセサリー
なお、今回のコレクションの重要なディテールとなるのが、染付と陽刻、2種類の陶器のボタン。こちらは、有田町の窯元や作家のサポートの下、黒河内自身が形作ったものだ。ドレスやシャツのボタンをはじめ、ネックレスやイヤリングにといったアクセサリーにも使われている。これらは限定的に販売される予定だという。
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