「ロアートヴィンテージ」オーナーの十倍直昭
Image by: FASHIONSNAP
何気なく手に取る“ヴィンテージ”。愛好家のみならず感度の高い洒落人に愛される珠玉のアイテムですが、ふと疑問に思うのは「この服はどこから来たのか?」。そこで今回、グリモワールのヴィンテージセレクトショップ「ロアートヴィンテージ(LOART VINTAGE)」がオープンするまでを密着しました。どうやってショップができ、どうやってアイテムたちは見つけられ、どうやって再び人の手に渡っていくのか。悠久の時を経た服が人と出会うまでの旅を届けます。VOL.1の準備編に続き、VOL.2は買い付け編。
1日目
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「ロアートヴィンテージ」の内装工事が着々と進む中、いよいよ店内に並べるヴィンテージアイテムを探しに出発です。オーナーの十倍 直昭(とべ なおあき)さんと共に、向かう先はロサンゼルス。ヴィンテージのディーラーが多く、バイヤーにとって立地なども便利なため、買い付けの基本とも言える場所。日本への送料もニューヨークに比べてかなり節約できるなど、メリットが多いとのこと。今回は、約2ヶ月分のアイテムを買い付ける予定です。
十倍さんの場合、特に航空会社を指定せず、その時々で価格や到着時間などベストな航空券を選ぶそう。頻度の高い人は、スターアライアンスやワンワールドといった航空会社のアライアンスを統一して、上級会員のSFCやJGCなどを取得する人も多いようですね。
旅の相棒は、使い込んだリモワ(RIMOWA)のトパーズ(TOPAS)。預け入れの範囲23キロを超えないことを考えてのサイズです。スーツケースはハード派とソフト派に分かれますが、十倍さんはハード派。理由は「ソフトよりも中へのセキュリティや物品の安全度が高いため」。ただ観光の場合は、ソフトのほうが扱いやすいことが多いそうです。
これから9時間、機上の人に。到着後すぐに各所を巡るので、なるべく睡眠にあてます。おやすみなさい。
買い付け必需品
出発前に、海外の買い付けで用意すべき必需品を見せてもらったので、ここで紹介しましょう。
サングラス
LAは特に日差しが強いため、眩しいと感じることがとても多いです。特に車の運転をする場合は命取りにもなるため必携。お洒落のためだけではないんですね。
ハサミ
とにかく切れ味が良いため、使うのはKOKUYOのハサミ エアロフィットサクサ。左右対称形のワイドハンドルのため、使いやすさも魅力。
デバイス
iPad PRO WiFi版。携帯をなくした時のために持っていくそうです。パソコン代わりにも。
パスポート
当然ですが必需品ですね。地域によってはアルコール類を購入する時などに身分証明書として提示を求められることもあるため、肌身離さずに持ち歩きます。
携帯ライト
フリマに行くなら、こちらも必須。早朝から会場入りするため、まだ周囲が暗い中で買い付けアイテムを確認するのに活躍します。大きすぎると取り回しが不便なため、小さめで光量が強いものをセレクト。
ペン
ペン。特にこだわりはないそうです(笑)。
シガーソケットUSB充電器
車移動の場合、車内での充電に使います。特に車のナビよりもグーグルマップのほうが使いやすいことが多いため、これにiPhoneを接続して使用するそうです。
バッテリー
携帯とタブレットを充電できる大容量のものを使用。
メンディングテープ
メモ書きができるなど用途が広いため愛用しているとのこと。粘着力が適度なのも使いやすい理由。
マネークリップ
STORUS(ストラス)の スマートマネークリップ。1ドルから紙幣があるためマネークリップが便利。パンツのバックポケットではなく、フロントポケットに入れられるのも防犯上◎。
国際運転免許証
車移動の場合は、こちらも必需品。
はかり
MYCARBONは最大50kgまで計量でき、スーツケースの重量オーバーを防ぐために使用します。
デジタル台はかり。商品を梱包したダンボールの重さを量るのに使用します。
ロサンゼルス到着
さて、ロサンゼルス国際空港(LAX)に到着しました。LAXは、ロスオリンピックが開催された1984年にトム・ブラッドレー国際線ターミナル(TBIT)が建設され、その後の拡張工事などを経て現在の形に至ります。TBITは規模からしても一つの空港のようですが、LAXの9つある旅客ターミナルのうちの一つなんです。
レンタカー
ロサンゼルスでバイイングするなら、レンタカーは必須。Hertz(ハーツ)やdollar.(ダラー)などが有名ですが、今回使うSAKURA(さくら)レンタカーは日本語が通じるため、何かと便利。迎車もあるので、まずは店舗まで移動します。
TOYOTAのシエナ。什器や家具なども運ぶときには更に大きい車を使用しますが、今回はこのサイズでバイイングを行います。
モーテル
今回の宿泊先は、GARDENA TERRACE INN(ガーデナ テラス イン)。名前の通りガーデナという都市にあります。ウィキペディアによると、北米で最も日本人の割合が多い都市だそうです。
宿泊施設を選ぶポイントの一つ、エレベーター。買い付けたアイテムを車から部屋まで運ぶ際には、適度な広さが必要なんです。
大量のアイテムを梱包する時に便利なのが広いテラス。そのため、テラスに面している2階をいつも指名するそう。
シンプルなレイアウトながら十分な設備。清掃のチップの目安は2〜3ドルほど。荷物を置いたら、早速バイイングに向かいます。
ウェアハウス
まず初めに訪れたのは、ヴィンテージ&レギュラー古着のウェアハウス(倉庫)。全米から集められた古着が所狭しと並んでいます。
レギュラーの古着もあれば、ヴィンテージもごちゃ混ぜの圧縮梱包された「べール」と呼ばれるユニットも。1ベールをいくらと決めているところもあれば、重さで価格が決まるところもあります。近年はバイヤーが増え、古着の値段が上がっているそう。ベールで買うのが一番安いらしいですが、何が入っているかわからないため通常はベールをバラしたところから1点1点吟味して買い付けるそうです。
ジーンズのみのベールも。
古着バイヤーの買い付けで人気なのは、やはりデニム。それとレザージャケット、ミリタリーものも人気があるそうです。ウィメンズなら、ドレスなど。
凄まじい量ですが、2ヶ月後にはすっかり入れ替わり、サイクルの速さにいつも驚くそうです。
ベールからバラされ、ディーラーが仕分けしたアイテム達。
ヴィンテージの定義と流れ
古着は様々なルートがありますが、大きな流れはこちら。
【一般の人が寄付または売却】→【一次業者が集荷しレギュラーやヴィンテージ古着に仕分け】→【ウェアハウスやディーラーが買い取り】→【店舗バイヤーが買い付け】
店舗バイヤー達のバイイングから漏れたものは、ウェアハウスが再度ベールにして開発途上国などのウェアハウスやディーラーに売却します。そのため、開発途上国では古着着用率が高いようです。
「製造から100年を経過した手工芸品・工芸品・美術品」をアンティークと定義した1934年の米国 通称関税法を根拠に、製造から100年経ったものをアンティークと位置づけるバイヤーが多いですが、ヴィンテージは定義付けがないため解釈は人によって様々。十倍さんは1970年代までをヴィンテージと考えていて、レギュラー古着を80〜90年代に設定しているそう。ただ、80年代をヴィンテージとする人も多く、争点となるのは90年代。つまり、現在から20年前のものをヴィンテージと呼ぶかどうか、なのだそうです。そのため、バイヤーによってヴィンテージを選ぶ基準は様々だとか。
スリフトショップ
ウェアハウスでの作業を終えて向かったのはSAVERS(セイバーズ)。スリフトショップと呼ばれる形態で、寄付されたものを並べるショップです。置いてあるものは衣服から家具、家電など様々。思わぬヴィンテージアイテムもあれば、誰が買うのか見当もつかない、かなりオールドの家電などもあります。
ドネーションセンター
古着を持ち込む人たち。寄付するこの行為から、古着が始まります。
スリフトショップとしてはセイバーズの他、サルベーションアーミーなども有名。スリフトでは主に、プロしかわからないマニアックなヴィンテージや、ショップの雰囲気に合うアイテムを探します。
買い出し
アイテム探しに没頭するうちに、気がつけば夕方。スーパーのTARGET(ターゲット)に寄り、夜ご飯や備品を買います。滞在の長さを考えて、飲料水などのまとめ買いを。
買い付けたアイテムを、一時的に保管するバッグも購入します。
22時頃、ようやく宿に帰宅。初日から動きっぱなしでした。
2日目
2日目の朝、スタバでコーヒーを買い、9時に再びウェアハウスへ。
1日目と同じく、大量の古着の中からピックアップする作業を昼まで行います。その後、昼食もそこそこに、スタジオシティに向かいます。
スタジオシティ
BUY&SELLのショップやヴィンテージショップなどが立ち並ぶスタジオシティ。アメリカでは、不用品を寄付する以外にも、業者に買い取ってもらう人も少なくありません。最近では、日本でお馴染みのMercariや急成長中のletgo、OfferUpなど、フリマアプリが人気だそうです。
各店で吟味していると、時間はあっという間に過ぎていきます。
ロサンゼルスの大渋滞に巻き込まれ、予定帰宅時間を大幅にオーバーして帰宅。明日は早朝からフリマに向かうため、帰宅後すぐに就寝です。
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