kolor 2025年秋冬コレクション
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
2004年に自身のブランドである「カラー(kolor)」を設立し、2005年からコレクションの展開をスタートした阿部潤一。約20年にわたり、独創的な色使いと斬新な素材開発で東京のファッションをけん引してきたデザイナーが、パリで発表した2025年秋冬コレクションを最後に退任することを明らかにした。
1965年生まれの阿部は今年で60歳。一般的な定年の年齢でもある節目の年に、次世代にバトンを渡そうという想いがあったのだろうか。遡れば約2ヶ月前の2024年11月に、伊藤忠商事の子会社で海外アパレルブランドの輸入卸売業を行うコロネットにカラーの事業を譲渡。これはデザイナー退任に向けての準備だったと見られる。ただ今後も阿部は、「kolorの中でサポートを続けていきます」としており、さながらデザイナー退任後もブランドに携わっているドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)のようでもある。
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阿部がデザイナーとして手掛けた最後のコレクションとなった2025年秋冬は、これまでの歩みだけを見せるのではなく、しっかりと新しさを更新してきた。ネイビー、ブラウン、グレーを軸に、レッド、パープル、ボルドーなどを差し色に使う阿部らしさは如実に表現され、アイテムはレイヤードを前提としたデザインに。ファーストルックのグレンチェックのスーチングの裏地とシアリングベストはアイアンブルーで色をまとめ、加えてほっこりした手編みの手袋で既視感のないスタイリングに仕上がっている。スーツの上にダウンジャケットとシアリングベストを重ねたルックや、テーラードジャケットの上にニットガウンをレイヤードしたものなど、テーラーリングを現代的解釈でアウトプットした。
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レイヤードはウエスト部分でも存分に発揮。厚手のニットカーディガンをタックインすることで、ウエストを折り返したデザインのハーフパンツを強調したほか、ショート丈のドリズラージャケットからジャカードニットを大胆に見せるコーデ、3枚のテキスタイルを重ねたスカートなどがその代表格だ。
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また、新たな提案としてコルセットをスタイリングに採用。コルセットが生まれた1800年代の貴族ように、体のラインを補正するために締め上げるのではなく、あくまでもコーデのアクセントして活用しており、ニットの下から覗かせたり、Tシャツの上に重ねたり、Pコートの上に巻くことで独自のスタイルを作り上げた。
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カラーは2017年、変化の必要を感じてパリのランウェイショーを取りやめた。ショーのためのクリエイションになってしまっていた側面にも見切りをつけたかったとし、その後はシーズンごとに新しいアイデアを取り入れたヴィジュアルでの発表に切り替えた。再びパリのランウェイに戻ることを考え始めたのが2020年。その矢先にパンデミックが起こり、映像でパリコレの公式参加を果たしたものの、渡仏できない状況は変わらず、ならばということで「今しかできないことを」と踏み切ったのが、2021年1月に開催した初の東京でのショー。翌シーズンには京急の電車内でのショーが話題を集め、学生らを招待するなど自国で発表することの意味を見出した。
時代に即して、新しい取り組みを行ってきたカラーが今後、どんなヘッドデザイナーを立てるのか注目していきたいところだが、新しいものを生み出すことを諦めたらブランドとしての未来はない、と話す阿部のスタンスは最後の最後まで表現された。創業デザイナーの背中を、その生き様を見て、カラーを更新していく次世代に期待したい。
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