顧客に寄り添うブランド作りで社会に還元
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ー事業パーパスにおいて、サステナビリティ、ESGをベースに顧客に発信していることは何でしょうか?
化粧品においては、ESGの中でS(Social)の部分も非常に重要で、それは事業パーパスにもしっかりと盛り込んでいます。日々の生活に化粧品でワクワク感や高揚感を与えられることは、人々に元気や勇気をもたらし、社会貢献に繋がっているでしょう。
例えば、カネボウは2020年春にリブランディングし、単なる美しさだけではなく内なる希望や個性を引き出す商品提案で“希望”を発信するブランドとして、新たなブランドメッセージに「I HOPE.」を掲げました。また、昨年放映した新CMでは、困難な状況だからこそ前を向いて動こうという思いを「希望よ、動き出せ。」というメッセージに込めました。商品軸では、ジェンダーに捉われないカラー展開をするなど、性別や年代関係なく使用できるブランドとして発信しています。
ーその他のブランドでも多様性の尊重や一人ひとりの個性に寄り添った提案を行っていますね。
はい、例えば「トワニー」では、昨年3月から女性の健康情報サービスを運営する「ルナルナ(LunaLuna)」さんと協業して、フェムケアスクールを開講。イオンさんにも共感いただき、一部店舗でセミナーを開催しています。トワニーは1996年のブランド誕生当初から、女性の“美しさのリズム”に基づいた製品開発、スキンケア・美容提案を行い続けています。また、スキンケアブランド「キュレル」は、乾燥性敏感肌方に向けた化粧品として誕生し、常にドラッグストア販路で売上の上位にランクインする、人気のブランドに成長。乾燥性敏感肌に悩む方のQOL向上に貢献できていると思います。
ジェンダー平等、デジタルリテラシー向上
ーカネボウの提案もそうですが、ジェンダー平等についてはどう考えますか?
もともと化粧品は、長らく女性の美容部員が活躍してきた業界ですが、当社もLGBTQについての理解を深め、日頃の事業活動に活かしていくべきだと考えています。社内では日ごろからアンケートを取ったり、外部講師を招いてセミナーを開いたりと社員の意識向上に努めています。またお客さまには、例えば昨年開設したケイトの公式 LINEアカウントで、アンケート項目の性別欄に「女性」「男性」に加え、「わからない」「どちらでもない」「回答しない」を加えるなど、細かな配慮を心がけています。
ーコロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)が業界全体で加速し、オンラインカウンセリングやブランドのYouTubeも活発になりました。特に美容部員の働き方が変わった印象です。
現在、5000人以上の美容部員が活躍しています。美容部員には「ブランドエバンジェリスト」を目指してもらっており、ブランドの伝導者として魅力を伝えるのが大きなミッションになります。そのための研修を含めたプロジェクトを始動したところです。担当ブランドごとの制服も刷新し、先ほどの名刺と同様に、美容部員にもブランドを担っていただく。デジタルリテラシーは外部の協力も仰ぎながら底上げを図っています。最終的には、全美容部員を店頭とオンラインどちらでも活躍できるブランドのエバンジェリストにしたい。ですから、まずは事例となるようなチームを作ってしっかり育成していきます。
ーそういった中、必要な人材とは?
これから社会に出ようとする学生のみなさんは、会社の価値観や志が自分と一致するかどうかまで考えて会社を選択しているように思います。当社のパーパスに共感してブランドを担ってくれる人を歓迎したいですね。
ー2022年の展望は?
コロナは予断を許さない状況ではありますが、ワクチンの接種率も高まっていることから、2022年はそろそろ化粧品の出番ではないかと予想しています。日本での重点項目としては、パーパスドリブンなブランド磨きを継続すること。加えてDXもさらに加速します。ケイトのLINE公式アカウント「KATE MAKEUP LAB.」は非常に反響がよく、「なりたい顔になるためのメイクの提案」は楽しめるコンテンツとして差別化に繋がりました。また「ソフィーナ iP」では、炭酸の泡の洗顔料の発売に合わせて、LINE公式アカウント「肌id」でくすみ測定ができるスペシャルコンテンツ「くすみAIファインダー」を公開し、こちらも評判がよいです。
DXも私の直下で進めており、日頃から「製造業からUX創造企業へ」と宣言しています。お客さまが楽しめる仕掛けを積み上げていくことで、存在意義を高め唯一無二の存在になりたいと思います。
ー最後に、村上さんご自身が取り組んでいるサステナビリティは?
リサイクルやエコバッグを使うなど日常的なことは行っています。個人的に一番大きいことは、保護猫を飼い始めたことですね。実は元々犬派だったのですが、アメリカンショートヘアの雑種の子でとても愛らしくて。保護される前の環境の影響もあり、噛んでしまったり野性的なところもありますが、ゆっくりと愛情をかけて一緒に暮らしていこうと思っています。
(文:平原麻菜実、聞き手:福崎明子)
■「トップに聞く 2022」バックナンバー
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