ADDICTIONクリエイティブディレクターKANAKO
Image by: TOSHINORI SUZUKI(Point of Action,Inc.)
「アディクション」でのものづくりは“使う人のこと”を思い浮かべながら
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ーーニューヨークを拠点に活動している中で、アディクションのクリエイティブディレクターの依頼があったときは、率直にどんな気持ちでしたか?
それまでプロダクトを⼿掛けたこともありませんでしたし、私の作品の内容がコマーシャルなものが結構少なかったので「なぜ私?」と思いましたね。実際にブランド企画・開発の⼈たちと仕事を始めてみても、初めてだらけで⼾惑いも多かったです。でも、リサーチする⽅向性 や商品開発はこれまでの仕事と違うベクトルだったので、使う脳みその部位が違うような感覚がかえって新鮮で⾯⽩いなと思いました。
ーーデビューコレクションとなった2020年スプリングコレクションは、一気に引き込まれる鮮やかでパワフルな雰囲気で、とてもキャッチーでした。キャンペーンヴィジュアルも撮影をマリオ・ソレンティ、ディレクターにアラスター・マッキム(Alastair McKimm)を迎えていて豪華です。
この最初に⼿がけたコレクションは、ブランドは変わらないけれど、これから新たなスタートを切りますよという節⽬の意思表⽰って感じでした。 メイクに対しての向き合い⽅変えていくよって感じをヴィジュアル通して伝えたかったんです。楽しく⾃分の⼈⽣を謳歌するように、凝り固まっている美意識を少しずつ緩めていきたいなと。春、始まりを祝うインドのフェスティバルをテーマにのせて、遊び感とストリート感を描きたくて、それが得意な彼らにお願いすることに。 ⼀⾒派⼿な商品ではあったんですが、ヴィヴィッドだけどシアーな発⾊を実現することで、濁りのないレイヤーで遊べるものが提案できたのは研究所や開発チームがいてくれるからこそできたものですね。
ーープロダクトを作るときのインスピレーションはどんなものが多いですか?
その都度、印象的に感じたものから考えているので、あまり⼀貫していないかもしれません。普段の⽣活やバケーション、撮影現場など、⽇々の経験の中でこの⾊いいなって感じたものや、メイクの⾊や質感に落とし込んだ時に素敵になるんんじゃないかなと考えたものを落とし込んでいます。⾊とか質感の雰囲気から考えて、テーマなどはプロダクトの⾊や世界観から 逆算してはめ込んでいく⽅が多いですが、インスピレーションを固めていくうちにまた⾊のアイデアが浮かんだりするので、そこはコレクションによって流動的かもしれません。
それから、撮影現場でのテクニックを再現できるようなものを考えることもあります。初めて出したアイシャドウパレットは、私がメイクの現場で絶対にする⼯程があって、その肌⾊とカラーをなじませる⾊を4⾊中の1⾊に⼊れることに。その1ステップを踏むだけでメイクのクオリティーが格段と上がるんです。あとは、透け感と繊細な深みと配⾊にこだわれたと思っています。チャレンジングな配⾊に⾒えたとしても肌馴染みがいい透け感と質感なので取り⼊れてもらいやすいかなと。難しいかもしれないというハードルを出来るだけ下げて、メイクを楽しんでもらえるようにいつも試⾏錯誤しています。
ーートレンドや新しい提案を取り入れながら、“使いやすいもの”を作るのって大変ですよね。
私⾃⾝、「みんなついてこい!」じゃなくて「こういうメイクも楽しいかもよ?」が基本姿勢なので、トレンドだったり今皆さんが求めているものの半歩先くらいで楽しめるようなものづくりに、チームのみんなと挑戦している感じです。アディクションでのものづくりに関して、よく友⼈のメイクアップアーティストたちに相談します。みんなで「あれが可愛い、これが可愛い」って⽇頃からユーザー⽬線に近づきながら話すのはとてもいいヒントになっていますし、⼀番お客さまと距離の近いパーソナルアドバイザー(販売スタッフ)たちの声は聞き漏らさないように⼼がけているのと、市場調査というかプロダクト⽐較するのも⼤好きです。SNSもチェックします。現場から今どんなものが売れてるとか、バックステージの現場で世界中から来るアシスタントの⼦たちが今ハマっているメイクのテクニックを聞いて、どんな商品があると便利かなーって常にいろんな⼈と喋っています。
2020 Summer collection
15周年のアディクションを経て5年目のKANAKOが考えていること
ーーブランドは今年で15周年。限定発売の15色入りパレットはブランドの過去として人気色、今として限定色を組み合わせたアニバーサリーアイテムを発売しています。このアイテムでこだわった点は?
アニバーサリーなので、お祭り感が欲しくて、15色を詰め込みました。今までの人気カラーである意味“ハズレのない”色を入れることは早々に決まったので、あとは既存色のバリエーションを広げて、楽しみを増やせるような色、尚且つ単体でも楽しめるような色を考えていきました。クールトーンとウォームトーンをどちらもバランス良く入れることで、どんな肌のトーンの方も手に取りやすいように調整しています。アディクションのアイシャドウはクールトーンのカラーもいわゆるイエベの方も使えるし、逆も然りです。「今日はクールカラーも使ってみよう」と思っていただけたら嬉しいです。
ーーパレットに入っている限定色のマーブルカラーもそうなのですが、KANAKOさんが作るアイテムは、透け感が独特だなと前々から思っていたんです。ちゃんと色が乗るのに輝きが繊細だったり、深い色でもシアー感があったり......。
今の時代感として、盛っていくよりも、人それぞれが持つ個性の魅力を引き出すようなメイクが求められているという空気感なんじゃないかなと。その人が元々持っている肌のトーンや唇の色を拾って、「私の⾊っていいかも」って思えるものや、⼀⾒「濃いかも?」と感じる⾊でも、「意外と私に似合うかも」と新しいメイクを楽しんでもらうためのプロダクトを考えていたら、透け感を味⽅につけることにたどり着いたんです。
アイシャドウのラメ感では特に「クリアなツヤ」を大事にしています。もう少し言うならば、透け感と光具合のバランスが良くて、白っぽくならないように。試作品の度に「もっと濁らず透けさせてほしい」と⾔って研究所の⽅を困らせちゃっていますね。毎回すごく頑張ってくれています。最近では、締め⾊の濃い⾊は⽇本ではあまり使わなかったりしますけど、少し深みを⾜すだけでメイクのグッと幅が広がりますし、そういう⾊だからこそ引き出せるセンシュアルだったりシックな魅⼒があるので、深みを出す役割のものも透け感を持たせることで抵抗なく取り⼊れてもらえるの で、ぜひトライしてほしいですね。
ーーアイシャドウパレットは秋のコレクションでリニューアルします。特に時間がかかったものはありますか?
色を考えること自体はいつもそんなに大変じゃないんですが、今回は「アディクション ザ アイシャドウ パレット + 011 Suntan Camel」のパレットで、理想の色を実現するのが大変でした。マスタードとキャメルの間のような絶妙な黄みのある色なんですが、実は前々から構想していたものの、どうしても理想のバランスにならずに商品化できていなかったんです。今回研究所の方々が頑張ってくれて、ようやくできて⼤満⾜です。お気に⼊りでメインビジュアルにも使⽤しています。
ーー同コレクションで登場する「ザ リキッド アイライナー パール」は、まさに“透けるような”カラーラインナップです。
この質感を私は「ソフトグラフィック」って勝⼿に呼んでいるんですけど、輝きと透け感、そして⾊出しの絶妙なバランスでカラーメイクと陰影が楽しめるように調整しました。最初は研究所の⽅々が「こういう発⾊が作れるようになりました」と提案が来て、可愛すぎる!と企画開発のみんなでテンションが上がってどんどん進めていきました。シアーな輝きでさりげないの で、⽬元のくすみが気になる⽅にもおすすめですし、⼆重幅に広めにひいてアイシャドウ感覚でも使えます。
ーークリエイティブディレクターに就任してから約5年が経ちました。考えや取り組み方など、どんな変化がありましたか?
最初1年程は、現場で欲しいと思ってたものを提案に差し込むことが多くて、徐々に2年⽬以降は⽇本とアジア圏のトレンドを理解し、使ってくれる⼈たちのことを考慮しつつ遊びやメ イクの楽しみを広げるようなバランスの取る⽅法との向き合い⽅を試⾏錯誤する期間に⼊り、5年⽬にしてやっと感覚が少しつかめてきたような気がしています。ブランドの⽅々は私の⾃由にしていいと寛⼤なのですが、本当に個⼈的に好きなものは⼀般の⼈のメイクに落とし込むにはぶっ⾶びすぎていて難しいので、そのバランスを調整するのは⾃分にとって毎回が挑戦で す。最近は「このラインかな」っていうバランスが分かってきてきた気がしています。なので、今が⼀番楽しいですね。反響も最初の⽅はドキドキしていましたけど、めげずにSNSチェ ックしています(笑)SNSでブランドがタグづけされている投稿をみては、商品の良さが意図した通りに伝わってるー!と思ったら嬉しくてそのアディクションユーザーの⽅のコメントにLike (いいね)を結構押しています。
ミラノコレクション Max Mara 2023SSのバックステージの様子
ーーブランドの15周年、クリエイティブディレクターとして5年の節目を経て、これからはどんなことがしたいですか?
うーん、先のことを考えるのが⼀番苦⼿です(笑)計画を⽴てるのが得意な性格じゃないので、常に⽬の前のことに⾶び込んでいくしかないかなと。これからも、“楽しそうな匂い”がしたら ⾝を委ねていきたいです。
あとは、メイク以外にメイクくらい情熱を捧げられるものが他にも⾒つかったら嬉しい。メイクはもちろん⼤好きで楽しいけど、メイクを始めた時と同じように⽌めることのできないくらい情熱を捧げるものがあると、⼈⽣またもう⼀段階⾯⽩くなるだろうなーと。なんとなくい つも頭の⽚隅には「こんな商品が作りたい」がうろついているので、これからも新商品を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
(企画・編集:平原麻菜実)
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