左から Zoe Suen、Eugene Rabkin、Nick Wooster
Image by: JFW
2024年秋冬シーズンの東京ファッションウィーク「Rakuten Fashion Week TOKYO」(以下、東コレ)は3月16日に幕を閉じた。様々なショーを取材し話を聞く限りでは、今回の東コレは国内の業界人からの評価が高いように感じる。一方でどうしても国内にいると身近な現状に対して近視眼的になりがちだ。
東コレ取材を終えたばかりの海外ジャーナリストのユージーン・ラブキン(Eugene Rabkin)とゾエ・スーエン(ZOE SUEN)、フリーエージェントのニック・ウースター(Nick Wooster)の3人に、俯瞰的な視点での東京の現状を尋ねた。
ニューヨーク在住。StyleZeitgeist誌の創刊者兼編集者であり、同名のポッドキャストも配信。「New York Times」、「Business of Fashion」、「T Magazine China」、「Air Mail」、「032c」、「Highsnobiety」、日本の「Them magazine」などに寄稿。
香港生まれ、ロンドン在住。The Business of Fashion (BoF)、Another Magazine、South China Morning Post等にファッション、ビューティ、食の記事を寄稿。
ー今回の東コレに感じた印象を教えてください。
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ゾエ・スーエン
2019年以来の2度目の参加でした。前回と比べて、ショーの来場者の雰囲気がそれぞれのブランドのテイストを反映していたように感じて、以前よりも会場全体にコミュニティ感が生まれているように見えたのが魅力的でした。
ユージーン・ラブキン
オフィシャルのジャーナリストとして来日するのは初めてですが、過去に個人的には何度か参加しています。「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」や「ナンバーナイン(NUMBER (N)INE)」など、もともと日本のブランドが大好き。東京では、海外では出会うことができない日本独自の新しい才能に先んじて出会えるのが嬉しいです。
ニック・ウースター
東コレへの参加は今回が18回目。日本は、ファッションウィークで見られたスタイルが最も市場に流通する国だと思います。そういった日本独自のエコシステムやバイヤーの買い付けセンスはとても勉強になります。もともと日本が好きだから、贔屓目もあるかもしれないですけどね。
ー他国のファッションウィークと比較して、東コレの特徴は?
ユージーン・ラブキン
比較する必要はないと思いますが、日本の良い特徴は、若手の育成に力を入れていること。若手が育っている様子にはファッションの未来が見えるし、過去に来日した時もそういった瞬間を目の当たりにしました。
ニック・ウースター
アクセスの良さが抜群(笑)。パリやロンドンは移動だけでクタクタになるから、会場がコンパクトにまとまっているのは助かります。
ゾエ・スーエン
2人のいう通り!あえて別の特徴をあげるなら、日本で見られるストリートスタイルは、他で見られるものとは違ってユニークで面白いです。若手ブランドと老舗ブランドのアイテムのミックスの仕方など、スタイリングの構築の仕方が独特だなと。
ー日本のブランドが海外に魅力を発信していくために必要なものは?
ゾエ・スーエン
SNS上でもクリエイションを見ることができる時代ですが、生で見るのとはやっぱり全然違います。私は幸運にもご招待いただいて、実際にそれを体験できていますが、もっと多くのグローバルプレスに日本のファッションウィークを見てもらう機会があれば良いと思います。
ユージーン・ラブキン
その通りですね。付け加えるなら、もっとフィジカルショーを開催するブランドが増えて欲しいし、もっと有名なブランドが東京のファッションウィークに参加して欲しいと思います。
ニック・ウースター
セールス目線での話になりますが、展示会の時期がバラバラすぎるのはバイヤーが買いにくい。それは国際ビジネスにおいて不利なので、多くのバイヤーが集まるパリと拠点とする東京の2拠点で発表する機会を設けるのが良いと思います。
ユージーン・ラブキン
現実問題としてファッションはパリが世界一です。良い悪いの問題ではなくそれが現実。でもパリに行って日本では発表をしなくなる日本ブランドも多いですよね。でもそれでは日本という拠点が育たない。私も、日本でショーをしてパリで展示会をするなど2拠点での発表を提案します。あとは世界共通語である英語で発信することも大事。これらは日本だけでなく、パリ以外の全拠点が抱えているグローバルな問題ですね。
ー印象に残ったブランドを1つ教えてください。
ゾエ・スーエン
ニックさんとまさに先程その話をしていました。私は初めて見るブランドでしたが、「コウタグシケン(Kota Gushiken)」が印象に残っています。語りをベースにするプレゼンテーションで英語の説明がなかったのには驚いたけれど、初めて見るショーの形式でとても新鮮に面白く感じました。
ニック・ウースター
わたしもコウタグシケンです。TOKYO FASHION AWARDの審査時に初めて見たのですが、自分たちが推したブランドが頑張っている姿を見るのはとても嬉しいですね。
ユージーン・ラブキン
「ハイドサイン(HIDESIGN)」は、ワークウェアの昇華のさせ方が素晴らしいと思いました。「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」は、生地の取り扱い方、カッティングの仕方がとても上手です。これは日本のデザイナー全般的に言えることですが、特に彼女は素晴らしく上手い。「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」は、非常に洗練されていて、それだけ彼のヴィジョンが成熟されているのだと思います。最後に「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」は、世界観作りがとても上手でした。
HIDESIGN 2024年秋冬
Image by: HIDESIGN
ージャーナリズムが形骸化したファッション業界において、今ジャーナリストに求められるものは?
ユージーン・ラブキン
遠慮なく容赦なく切り込んで、産業をレポートすること。そして良い仕事をするデザイナーやブランドを世界に紹介することです。
ゾエ・スーエン
お客さまから見えているのはファッション業界やブランドのある一面だけ。その間に存在する色々な側面から見たブランドの価値や魅力をお伝えしていきたいと考えています。
ユージーン・ラブキン
もう一つ付け加えるなら、「解釈をする」ことです。デザイナーの中には、ヴィジュアルを作るのは上手でも、それを言葉で説明するのが苦手な人もいます。彼らに変わってその価値を言語化することも我々の使命だと感じています。
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