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1999年にプエルトリコで生まれ、アメリカ・テキサスで育った24歳のラッパー イアン・ディオール(iann dior)。エモラップ・シーンを牽引する彼の名を知らずとも、2020年に24kゴールデン(24kGoldn)との共演で全米1位を獲得した「Mood」を耳にしたことがある人は多いはずだ。
イアン・ディオールは、高校生の頃に自主制作した楽曲が新人発掘に定評のある人気プロデューサーのタズ・テイラー(Taz Taylor)の目に留まり、2019年にデビュー。その後、先述の「Mood」もあって一躍人気ラッパーの仲間入りを果たした。
今回、そんな彼が「GMO ソニック 2023(GMO SONIC 2023)」の出演のために来日したタイミングでインタビューを実施。彼の音楽性などの話は専門メディアにお任せし、アーティスト名に大好きなブランドである“ディオール”を入れてしまうほどのファッションフリークな一面を中心に、パーソナルな一面に迫った。(文・Riku Ogawa)
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—初来日だそうですが、日本の印象はどうですか?
アジアに足を踏み入れること自体が初めてだから、とにかく嬉しいよ。日本に来てまだ1日しか経っていないけど、まず空気が違うし、街行く人全員がオシャレに気を遣っているような気がするね。フーディーとスウェットパンツみたいなラフな人は全然見ないし、それぞれがTPOにあわせた格好をしているのがすごい。せっかくだし飲食店も色々探索したいと思っているから、このインタビューは来週の方がよかったかもね(笑)
—そうかもしれません(笑)。東京ひいては日本で訪れたいショップはありますか?
ショッピングに関しては念入りにリサーチしてきたけど、それよりも実際に街を歩いて見つけたショップに行きたいかな。有名なところよりも、まだまだアメリカでは知られていないようなショップやブランドで1点モノを探したいと思っているよ。
—国内外でショップを訪れる時は、自分の嗅覚に従って探すことが多いんでしょうか?
人に教えてもらった場所に行くだけじゃなくて、とにかく歩き回って自分が気になるものを探す感じだね。でも今回は流石に初めての日本だから、日本に詳しいロサンゼルスの友だちやスティーブ・アオキ(Steve Aoki)に基本情報を教えてもらって、渋谷の路地裏におもしろいショップがあると聞いたんだ。それで、渋谷について検索したら渋谷パルコの記事が多くヒットしたからとりあえず行ってみて、あるショップスタッフにブランドのアーカイヴを見たいと話したら、「アーカイブストア(Archive Store)」の存在を教えてもらったよ。こうやって、現地でいろいろな人から直接情報を仕入れるのが楽しいね。今回、空のスーツケースを持ってきたから、帰る時には洋服でパンパンにするつもりさ。
—渋谷パルコでは何か購入しましたか?
今着ている「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のトレンチコート、日本でしか買えない「グッチ(GUCCI)」と画家ヒグチユウコのコラボセーター、「アンブッシュ(AMBUSH®)」のグレーのトラックパンツだね。アンダーカバーのトレンチコートは、ウール素材なのが気に入ったんだ。レザー素材をはじめ、いろいろな素材のトレンチコートを持っているけど、ウール素材のものは無かったからね。あと、着ていてどっしりしない軽さと、フードが付いてる珍しいデザインも好き。今日、このインタビューが終わったら街に繰り出して爆買いする予定だよ。ちなみに、おすすめのショップとかある?
ーセレクトショップの「ネペンテス 東京(NEPENTHES TOKYO)」や古着屋の「ベルベルジン(BerBerJin)」は、初来日であれば訪れた方がいいと思います。「ベルベルジン」のある通りは古着屋が多く、「ドッグ(Dog)」は何かしらおもしろいアイテムが見つかるかと。あとは、「ゴッファ エックス(goffa.x)」が個人的におすすめの古着屋です。
ありがとう!行ってみるよ。
—トレンチコート以外もセルフスタイリングですか?
もちろん!全てアメリカで購入したもので、僕はスタイリストを付けずに自分で購入したものを自由に着るようにしているんだ。
ー洋服を購入するときのマイルールがあれば教えてください。
ルールというルールはないけど、普通の人だったら組み合わせないようなスタイリングが好きだね。あとは、気に入っているアイテムに合うアイテムを探すんじゃなくて、とにかく興味を引いたアイテムを購入して、後からスタイリングを考えることが多いかな。
ーということは、相当量の洋服を持っていますよね?
どれくらいだろう、数えたことがないから分からないな。でも、日本に行くことが決まった段階で大量の洋服を買うと分かっていたから、400点を売ってきたよ(笑)。
ー特に好きなブランドやアイテムはありますか?
とにかくアーカイヴアイテムが好き。特に好きなのは1990年代の「メゾン・マルタン・マルジェラ(Maison Martin Margiela)」や「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」の1点モノだね。どれも手放すつもりはないよ。
ーそれらのアイテムはどれも希少で探すことすら大変かと思いますが、どこで購入しているんでしょうか?
ロサンゼルスには、1980~2000年代の「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」や「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」を扱うアーカイヴストア「ミドルマン ストア(Middleman Store)」があったり、アーカイヴを集めているコレクターがたくさんいるんだ。彼らは、自らのコレクションを見せてくれる場所を持っていてポップアップストアを開くことがあるからそこで買うことが多いね。
ー話を聞いている限り、オンシーズンのアイテムにはあまり惹かれないんでしょうか?
そこでしか買えないものや1点モノに惹かれるから、どちらかといえば、そうかもしれないね。ただ、ソロイスト.やイッセイ ミヤケだったり好きな日本のブランドは、アメリカじゃ手に入らないアイテムを取り扱っているかもしれないから、この機会に覗く予定だよ。
ーファッションで何かを参考にすることはありますか?
特にないけど、今は「トウキョウ ジェームズ(Tokyo James)」というブランドを手掛けているデザイナーのイニエ・トウキョウ・ジェームズ(Iniye Tokyo James)が気になっているね。僕の周りには全然知っている人がいないし、ショップがあるかも分からないんだけど、「ヴォーグ ランウェイ(Vogue Runway)」で発見したんだ。新しいブランドやデザイナーを見つけるには、いつもヴォーグ ランウェイを使っているよ。
ーファッションだけでなく、ヘアスタイルもあなたのヴィジュアルに欠かせない要素ですよね。
デビュー時からずっと今のヘアスタイルなんだけど、もともとは綺麗なドレッドヘアだったんだ。でも髪が洗えなくて汚いと思ったから、ある日、お母さんに頼んで解いてもらおうとしたら痛すぎて途中で止めちゃって。その後、シャワーを浴びて鏡を見たら今のヘアスタイルになっていて、「これでいっか」とそのままにしている(笑)。5〜6年前の出来事だから、18歳くらいの時かな。
ーいつもネイルをされていますが、こだわりがあれば教えてください。
ここ1年は、2色のグラデーションが綺麗なオンブレネイルにハマっているね。3年くらい前から、ゾーラ・ガンゾリト(Zola Ganzorigt)という人気ネイリストにお願いしているよ。
ーネイルをする一方で、指にリングなどは付けないんですね。
親しみを持って共感してもらえるような雰囲気を出したいから、派手なリングを重ね付けするようなことはしたくないんだ。
ー少し話題を変えさせていただくと、日本のアニメや漫画といったカルチャーがお好きだと耳にしたことがあります。
子どもの頃にTVで「NARUTO」や「ドラゴンボールZ」が放送されていたんだけど、その時は日本のものだということを知らないで観ていて、成長して調べたら日本のものだと知って調べていくうちに魅了されていった。「寄生獣」「ソウルイーター」「鬼滅の刃」「HUNTER×HUNTER」「僕のヒーローアカデミア」がすごく好きだね。
ー動画配信サービスやDVDではなく、TVで観ていたんですね。
アメリカでは、週末の朝に日本のアニメを放送する枠があるんだ。ただ、それだと英語の吹き替えだから、今はネットフリックス(Netflix)やフールー(Hulu)の日本語字幕で観ているよ。昨日、ホテルでTVを点けたら日本のアニメが日本語で放送されていて感動したんだ。実は、母国語がスペイン語で英語はTVを観て覚えたから「こうやってアニメで日本語を覚えられたらな」ってしみじみしちゃった(笑)。
ー最後に、音楽についても話を聞かせてください。2022年1月にリリースした2ndアルバム「on to better things」の反響はどうでしたか?
あの作品は、出来る限り多くの人に聴いてほしいとか、どうリアクションしてほしいとかを求めて作ったのではなくて、自分の経験した話を作品にしたかったから、5回しか再生されなくても、1億回も再生されたとしても関係ないんだ。とにかく自分が経験したことを作品にすることで、同じような経験をしたり境遇にいる人たちが「自分は1人じゃないんだ」と思えることを大事にしたくてね。言うならば、自分が経験したことをタイムカプセルのように作品にした感じかな。
ー現段階で新作アルバムについて話せることがあれば。
この3ヶ月、制作に取り組んでいる中で自分が本当に好きなものを目指せているんだ。僕の初期のファンは、ベッドルームインディーのサウンドで好きになってくれた人が多いはずだから、そこに原点回帰しつつ、アッパーに進化させた作品を作っているよ。言うならば、ミッドナイトインディーだね。あと1ヶ月くらいで仕上げたいと思っているけど、毎週21曲くらい制作しているからまとまらなくて困ってる(笑)。というのも、今は音楽を作るのが本当に楽しくて楽しくてたまらないんだ。ずっと音楽を作っていると仕事になってしまうことがあると思うけど、僕はそのフェーズを乗り越えて充実した毎日を送ることができている。だからこそ、出来る限り多くの楽曲を制作してアルバムを完成させたいね。楽しみにしてて!
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