「エルメス(HERMÈS)」から16番目のメチエとして、その第1章「ルージュ・エルメス」が誕生してからはや3年。第2章「ローズ・エルメス」、第3章「レ・マン・エルメス」、第4章「エルメス・プラン・エア」と美の物語を紡ぎ、このほど最終章「ルガール エルメス」が披露された。2022年にビューティ部門のクリエイティブ・ディレクターに就任したギリシャ出身のメイクアップアーティスト グレゴリス・ピルピリス(Gregoris Pyrpylis)氏が、いちから創造した初めてのプロダクトだ。就任以来初の来日だという同氏がプレゼンテーションに登場し、思いを語った。
エルメスにとって「美の哲学」は脈々と息づくもの
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「エルメス ビューティ部門の一員に加わったことは、いうまでもなく光栄で、今でも当時の驚きをすぐに思い出すことができます」。ピルピリス氏は、歴史と伝統、革新性を兼ね備えたメゾンのチームに参加することに、緊張を凌駕(りょうが)する高揚感を覚えたそうだ。「ビューティ部門の創設は確かに最近のことですが、私はエルメスの『美の哲学』は創業当初から脈々と息づいているものだと思っています。馬具に始まり、革製品やレディ・トゥ・ウェア、ジュエリー、バッグ、シューズ、カレといったすべてにおいて、表面的な美しさ以上に、心地よさや動作の美をも引き出すようにサヴォアフェール(匠の技)が尽くされていると感じるのです」とメゾンの精神に思いをはせた。
「ビューティのアイテムは数多の卓越した技術を持つ人々との対話、過去と未来との対話によって生み出されています。アーティスティック・ディレクターのピエール=アレクシィ・ デュマ、シューズ/ジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクター であるピエール・アルディ、フレグランスのクリエイション・ディレクターのクリスティーヌ・ナジェルといった、メゾンのエスプリを体現してきたクリエイターたちがコラボレーションし、すべてが精巧に組み合わさっています。皆さんと共に製作に挑むのは、エキサイティングな出来事の連続です」と語る。
最終章の幕開け「ルガール エルメス」 美しいまなざしの仕草を導き出す
“美の追求”の物語の最終章の幕開け「ルガール エルメス」が誘うのは、まなざしの美しさ。「まなざしは、世界を見つめる魂であり、他者を映す鏡でもあります。目元を装い、瞳の輝きを描き出すことは、同時に内に秘めた感情に目を向け解き放つようなもの」(ピルピリス氏)。世界を見つめることは、自分自身をも見つめること。自由でアクティブ、そしてパーソナリティをも引き出す。
4色入りのアイシャドウパレット「オンブル ドゥ エルメス パレット クワテュール」に収められたマット、サテン、シマーの質感は、シルクのコレクションにインスパイアされたもの。マットはシルクのシフォンを、サテンはシルクツイルを、シマーはシルクのラメを彷彿とさせる。カラーパレットは、メゾンを象徴するような色彩に、ピルピリス氏の故郷ギリシャの自然や景色のエッセンスを融合。鮮やかな海のようなブルー、夕暮れのようなオレンジといった具合に。ソフトタッチな微細なパウダーは軽やかで、グラデーションやブレンディングは自由自在。思い描いた仕上がりに導き、濃淡の調整で印象深いまなざしを彩ることができる。
アルディ氏によるオブジェのデザインも見逃せない。パレットにはラウンド型とスクエア型のアイシャドウが2色ずつ組み合わせられ、グラフィカルで幾何学的なたたずまいは、バウハウスのアートワークのようなコンポジションを生み出している。4色のうち3色は濃淡の異なる3つのカラー、そこに遊び心のアクセントを加える力強いカラーが揃う。そして、スクエア型に収められた2色はナチュラル・ダークのトーンを操り、ラウンド型に収められた2色は陰影と光を目元に宿す。
「スクエア型のナチュラルカラーをさっとまぶたに広げるのは、まるで画家がキャンバスのベースを整えるようです。そんな遊び心をくすぐるかのようにアクセントカラーをプラスすれば、サプライズを起こすように多彩なニュアンスが加わります。アクセサリーをまとうように取り入れることもできるのです」とまなざしを彩るカラーパレットのこだわりを語ったピルピリス氏。プレゼンテーションでモデルの目元に軽々と色をのせていく、彼のしなやかな手元の仕草が美しさを増す。
そのほか、6色展開で登場する目元の印象を自在に遊ぶマスカラ「トレ ドゥ エルメス」や、思い通りの仕上がりを叶えるアイブロウブラシを含むアイシャドウブラシ「レ パンソー エルメス」(4種)が揃う。
「トレ ドゥ エルメス マスカラ ボリューム」(各同8800円)
終わりではなく、未来への始まり エルメス ビューティの「美の物語」は続く
「最終章」が意味するのは、新たなエルメス ビューティの幕開けでもある。「リップに始まり、チークやネイル、アイといった、象徴的かつエッセンシャルなコレクションが出揃いました。これで終わりではなく、さあここから。メイクのステップやパーツで考えれば、ペンシルやアイライナーなどまだ登場していないものがたくさんありますし、もしかしたら、アイカラーの第2弾が登場するかもしれません。可能性は無限大で、“美の追求”に終わりはないのです」とピルピリス氏。
「美しものを生み出すクリエイターや職人たちの手仕事、仕草そのものが美しいという普遍的な美の本質は、メゾンの根幹にあり続けるでしょう。私がメゾンのアーカイヴに思いをはせたように、遠い未来で誰かがルガール エルメスを振り返り、新たな創造の糧にするかもしれません。これからも、美の物語は続きます」。そう語るピルピリス氏のまなざしは、未来へと向けられていた。
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