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雨の日やアウトドアシーン、梅雨のシーズンなどで活躍するゴアテックス(GORE-TEX)製品。ゴアテックス本来の機能を保ち続けるためには洗濯によるメンテナンスが重要です。では、正しいゴアテックス製品の洗濯方法とは?ゴアテックスを洗う際に押さえておきたいポイントなど「アークテリクス(ARC'TERYX)」のサステナビリティプロジェクトの一環でもある「リバード™(ReBIRD™)サービスカウンター」の林彰文さんに解説してもらいました。
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洗濯した方が良い理由
ゴアテックス製品を洗濯した方が良い理由は大きく二つあります。一つ目の理由は、機能を最大限に発揮するためです。ゴアテックスメンブレンは防水性と透湿性の機能を持ち、それを支えているのは生地表面の撥水加工です。撥水加工は、生地の表面に撥水基(はっすいき)という撥水の層が産毛状に毛羽立った状態でコーティングされており、撥水基の表面張力によって水が水滴状のまま生地表面を滑り落ちていくという仕組みです。しかし、この撥水基は擦れや汚れなどが付着することで、毛羽立った状態から寝た状態になってしまいます。撥水基が寝た状態では表面張力が起きないため撥水性を失い、透湿性の低下に繋がってしまいます。洗濯、ケアをすることで撥水性が回復し、機能を最大限に発揮します。
洗濯した方が良い二つ目の理由は、製品寿命を延ばすためです。ゴアテックス生地の多くは、ゴアテックスメンブレンに表地、裏地などを貼り合わせた構造です。皮脂、ヘアオイル、日焼け止めなどが付着した状態で保管していると劣化し、ゴアテックスメンブレンと貼り合わせた生地が剥離してしまう恐れがあります。アークテリクスでは、リペアサービスを用意していますが、安全に使用していただくために「製品の機能を回復させる」というリペアポリシーを設けています。ゴアテックスメンブレンの剥離は修理ができず、機能を回復できないため、ゴアテックスメンブレンが剥離しているものは修理が出来ません。汚れを落としてゴアテックスメンブレンの剥離を防ぐのはもちろん、製品の状態を確認してダメージの早期発見にも繋がるため洗濯などのケアが重要です。
最適な洗濯頻度
着用すると、雨や汗をはじめ、皮脂や整髪料、化粧品などの汚れが付着していることが多いです。汚れが付着した状態で保管しておくと、シームテープの剥がれやゴアテックスメンブレンの剥離に繋がってしまうので、理想としては着用したら毎日洗いましょう。短時間の着用であっても、週に1回以上の洗濯を推奨しています。
実際にリペアサービスへの修理依頼では、襟周りや袖の生地がメンブレン剥離しているケースも多いです。「街着として使用しているので」とあまり洗濯しない人も多いのですが、着用回数も多く、整髪料や日焼け止めなどが付着する可能性が高いので、目に見える汚れがなくても適切なケアが必要です。
洗濯前に確認するべきポイント
洗濯前に必ず確認してもらいたいのが、裾や袖に付けられているドローコードやベルクロです。着用中にドローコードやベルクロで絞っている場合は、全て伸ばしてシワがない状態にしておきましょう。絞った状態のまま洗うと、汚れが落としにくく、洗剤が残留する可能性があります。
次に、フロントジップや脇下などのベンチレーションは全て閉めます。ポケット内に洗剤が残りにくくなるよう、ハンドポケットやアームポケット、収納タイプのフードなど袋状になっている箇所のジップはすべて開けてください。
OK例
NG例
ジップやドローコードを全て整えたら、ジャケット同士が絡まることを防ぐため、1枚ずつ洗濯ネットに入れ、脱水なしの設定で洗濯をしてください。
ひどい汚れの部分洗いは?
ウェアの汚れがひどい場合は洗濯機洗いだけでは落ちきらない場合があるので、予洗い(洗濯機に入れる前に汚れのひどい場所を個別で手洗いすること)を推奨しています。予洗いする場合は特に汚れやすい箇所である、袖や襟ぐり、そして半袖のインナーの上から着用していた場合の肘部分など、パンツの場合は裾やお尻の部分は集中的に予洗いしましょう。
予洗いの方法は大きな桶などに薄めに洗剤を溶かし押し洗いをするか、汚れの気になる箇所を柔らかいブラシで優しく叩いてください。
おすすめの洗剤
洗剤については、アウトドアショップなどで販売されているゴアテックス専用の洗濯洗剤でも、一般に販売されている洗濯洗剤でも問題ありません。洗剤選びで大事な3つのポイントを紹介します。
1.中性洗剤が望ましい
生地へ与えるダメージが少ないことから、中性洗剤を推奨しています。しかし、弱アルカリ性がNGというわけではありません。中性、弱アルカリ性の特性を理解し、汚れに応じて使い分けると効果的です。特に弱アルカリ性の洗剤を使う際は、洗剤をしっかり洗い流せなかった場合、生地への負担となりますので、2回以上は濯ぎを行ってください。
2.柔軟剤や漂白剤の入っていないものを選ぶ
柔軟剤は、生地の上に柔軟成分をコーティングすることで効果を発揮しますが、生地表面の撥水基の上にコーティングがされてしまい、撥水性能が損なわれる可能性があります。漂白剤は色落ちのリスクがあるため、使用は控えてください。
3.液体洗剤を使う
粉末の洗剤や石鹸では水に溶けにくく、ウェア内に留まる可能性があります。水に溶けやすく、洗剤残りのリスクが少ないため、液体洗剤を使うことをお勧めします。
乾燥
洗濯機で洗い終わった後は、日陰でハンガーに吊るし自然乾燥を推奨しています。
撥水性を蘇らせる熱処理
洗濯しただけである程度撥水性は回復しますが、洗濯をしても撥水性が回復しない場合は、熱処理を行います。自然乾燥させた後に、弱・中温の温度設定で10~15分程度、乾燥機を使用するか、当て布をして低温でジップなどのパーツを避けてアイロンをかけましょう。熱を加えることで撥水基が再び毛羽立った状態に戻ります。
撥水のコーティングが落ち、熱処理を加えても撥水性が戻らない場合は、市販の撥水剤を使用してください。
日々の保管方法
保管する際は、生地が折り曲がった状態が続くと、圧着しているパーツや生地への負担となるので、しっかり乾燥させた後に、洗濯前と同様にドローコードやベルクロは絞らずにシワのない状態で、ハンガーに吊るして保管してください。
修理受け付けをしていると、「大切に着たいがあまり、年に1回程度しか洗っていなかった」という人も多いですが、こまめに洗濯していただくことで、製品の機能を発揮し、出来る修理が増えて製品寿命を延ばすことにも繋がります。今回の手順通りに積極的に洗っていただきたいと思っています。
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