ラグジュアリー事業はなぜ収益性が高い?
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両社のラグジュアリー事業の営業利益率を見ると、LVMHは33%、ケリングは27%と、非常に収益性が高いですよね。どうしてこれだけ高い収益を生み出すことができるのでしょうか? ブランドビジネスと言ってしまえばそれで片付いてしまうので、今回は両社のバリューチェーンの側面からみていきます。
LVMHもケリングも共に、原料の仕入れ段階から小売に至るまでのバリューチェーンの全ての過程をコントロールしています。従って中間マージンが入りにくく、収益性が高くなりやすいビジネスになっているのが特長です。その結果として、在庫の管理、小売段階での過度な値引きによるブランド価値毀損の防止などを徹底することで、両社のブランドが成り立っているということができます。
LVMHの多角化戦略
ここからは、LVMHの多角化戦略について確認していきます。2020年度上期決算をセグメント別で見ると、ウォッチ&ジュエリー部門が前年比3倍の成長率を示しました。
好調の背景には、今期よりLVMHに連結されている「ティファニー(Tiffany & Co.)」の買収があります。
様々な事業を展開しているLVMHですが、かねてよりウォッチ&ジュエリー部門の売上高が伸び悩んでいました。今回の買収ではウォッチ&ジュエリー部門の底上げと同時に、「カルティエ(Cartier)」など時計・宝飾部門に強みを持つ競合のリシュモンとの差を一気に詰める良い買収だったように思えます。
ティファニーの買収はアジア市場の拡大にも貢献しています。ラグジュアリー業界でアジアは非常に成長率が高く重要拠点となっています。その中でも中国はどの企業もかなり力を入れている市場です。LVMHの2020年度の地域別売上高を見ると、コロナの影響で一時的に減収となっていますが、それでもアジア市場の売上高が全体の中で最も多くなっています。ラグジュアリー事業を中心に展開するケリングの地域別売上高を見ても、アジア市場が最も売上高が大きくなっています。このように大手各社が今最も力を入れている地域が中国をはじめとしたアジア市場なのです。
それでは、今回のティファニーの買収が、アジア市場の拡大にどの程度貢献するのかを見ていきます。
ティファニーの2020年1月期(LVMHによる買収前の決算)の売上高を確認してみると、アメリカに次いでアジアの売上高が多くなっており、1.2億ドルも計上しています。さらに、その売上高の大半を中国が占めています。この背景から、ティファニーの買収によりアジア市場への売上拡大が期待されます。
次に店舗数での貢献です。LVMHの2021年度上期時点のグループの合計店舗数は5409店舗。前年同期から500店舗近く増えており、そのうち330店舗がティファニーの店舗です。ブランドビジネスの場合、顧客とのタッチポイントである店舗は非常に重要な役割を担います。ティファニーの買収は米国市場強化が狙いとされていますが、買収に伴う店舗増は今後のアジア市場を攻める際にも大きく貢献することが予想されます。
今回はLVMHを中心に決算数値からビジネスの解説を行いました。このように決算書を読み解く力をつけることで、日常生活ではなかなか気付くことができないビジネスの仕組みを深く理解することができるようになります。皆さんもぜひ自分の興味のある企業の決算書をご覧になってみてください!
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