IMAGE by: ASTIER de VILLATTE
フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
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白の釉薬をかけた温もりのある陶器で人気の「アスティエ・デ・ヴィラット(ASTIER de VILLATTE)」。「歴史を掘り起こして現代の職人の手で蘇らせること」をコンセプトとしているのは、創業者のひとりであるブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットがボザール美術学校在学中に「前を見ろ、後ろを振り返るな、モダンなものをやれ」と繰り返し言われていたことがきっかけだという。「過去にインスピレーションを得て、さらにモダンにクリエイティブなものを作りたいと思ったんだ」
そんなブランドコンセプトにぴったりのフレグランスコレクションが「トロワ・パルファン・イストリック」。「3つの歴史上の香り」を名調香師ドミニク・ロピオンが限りなく忠実に再現したものである。
まずひとつは「ル・デュー・ブルー」。インスピレーション源は紀元前4000年の古代エジプトでファラオや高僧が使用していた“キフィ(聖なる煙)”。複数のレシピが現存することでも知られる香りで、香料の数もレシピによって10から16、多いものでは50にもなるという。
2つ目の「アルタバン」は紀元前2世紀ごろ、古代イラン王朝のパルティア王のために作られた香りの再現。“王の香り”にふさわしく、インドのレモングラスやリビアのシソ、アラビアのシナモンなど異国から取り寄せた24のハーブを用い、ローマの貴族たちに崇められていたという。
そして「レ・ニュイ」。19世紀のフランスの作家、ジョルジュ・サンドが愛用した香りが原点。ジョルジュの末裔が保存していた香水瓶に残っていた香りのほんの一部を抽出し、クロマトグラフィー解析で再現したものである。
いったいなぜ、このような壮大なプロジェクトが始まったのか? そもそもはロピオンが20年来続けている、歴史上の香りに関するリサーチが原点だ。
「人類学者で哲学者、そして香水史家でもあるアニック・ル・ゲレ博士から依頼があって、こすると香りがする書籍の制作を手伝ったことがあるんだけれど、古代エジプトのキフィから物語が始まるんだ。そのおかげでいくつかの古代の香りのフォーミュラを古書からひもといたことがきっかけだね」
この壮大かつユニークなプロジェクトの裏側やそれぞれの香りの原点について詳しく知りたければ、「トロワ・パルファン・イストリック コフレ」(税込4万1250円)にセットされている活版印刷本をぜひ読んでほしい。英語・仏語併記だが、香水好きには必読の書だ。
本書に掲載されている鼎談の締めに「これはほんの始まり」と書かれているとおり、香りの歴史を探る旅はまだまだ続く。年内には登場するだろうと思われる次の香りは、いったいどのようなオリジンなのか、想像力たくましく待ち望みたい。
(文:ビューティ・ジャーナリスト 木津由美子)
ビューティ・ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
■問い合わせ先
アスティエ・ド・ヴィラット:公式サイト
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