フェンネル代表取締役社長の堀田マキシム氏
Image by: FASHIONSNAP
タクティカルFPS「ヴァロラント(VALORANT)」の国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1」において日本のeスポーツチーム「ゼータ ディヴィジョン(ZETA DIVISION)」が3位に入賞するなど、国内で注目を集めているeスポーツ。日本能率協会総合研究所によれば、国内eスポーツの市場規模は2022年時点で約100億円、2026年には500億円にまで成長するとされている。
23歳のストリーマー 堀田マキシム氏(ストリーマーネーム:仏)が代表取締役社長を務めるeスポーツチーム「フェンネル(FENNEL)」は、国際大会の開催や総額2億円の資金調達を実施するなど、国内に数あるeスポーツチームの中でも、今最も勢いがあるチームと言えるだろう。同チームは、eスポーツチームとしては珍しくアパレル部門に注力している。
一見すると相容れない存在かのように思えるeスポーツとアパレル。日本を代表するeスポーツチーム フェンネルが、アパレル部門に注力する理由とファッションを通して実現したい未来とは?堀田マキシム氏に話を聞いた。
23歳の社長が手掛けるeスポーツチーム「フェンネル」とは?
ADVERTISING
フェンネルは、代表取締役会長の遠藤将也氏と代表取締役社長の堀田マキシム氏が2019年10月に設立。「eスポーツに熱狂を」をスローガンに掲げ、チーム運営事業と大会運営事業に加えてアパレル事業を展開している。2021年7月に同社が開催した、バトルロイヤルゲーム「エーペックスレジェンズ(Apex Legends)」のカジュアル大会「FFL SELeCTCUP supported by GALLERIA」では、最高同時接続数が11万人を突破。2022年2月にはエーペックスレジェンズの国際大会「FFLGGC」を主催し、日本代表の3チームをニューヨークに招待するなど、国内を代表するeスポーツチームとして業界を牽引している。
また同じく2022年2月には、アパレル事業としてファッションブランド「FNNL」を立ち上げた。「ディーゼル(DIESEL)」が手掛ける新プロジェクト「ディーゼル スタジオ(DIESEL STUDIO)」とコラボレーションするなど積極的にファッション分野への進出を試みている。
グッチや村上隆も注目、eスポーツとファッションの関係性
ー「ファッション」と「eスポーツ」、あまり馴染みのない組み合わせのように感じます。
日本ではそうですね。しかし海外ではアパレル事業に力を入れているeスポーツチームは多いです。代表的なのは村上隆さんとのコラボアイテムを発売して話題になったカリフォルニアの「フェイズ・クラン(FaZe Clan)」や、「グッチ(GUCCI)」とコラボしたロサンゼルスの「ワンハンドレッドシーヴス(100 Thieves)」などです。
実は、収益的な視点から見てもアパレル事業はeスポーツチームにとって重要です。eスポーツの大会は基本的にYouTubeなどのプラットフォームを通じて無料配信されます。スポーツの大会や試合と違ってチケット代も放映権も発生しないので、大会運営だけで利益を出していくことが難しいんです。
ーアパレル事業はチームを存続させるために必要なことなんですね。
かといって、売り上げだけを求めてグッズ的なプロダクトを作っていくかと言えばそうではありません。僕は、チームのアパレルはイメージブランディングにおいても大切な役割を担うと考えていて。利益だけを追求してカッコ良くないものを売り出したくはないんですよね。それに加えて「ダサい、根暗、ヲタク」といった世間からのeスポーツやプロゲーマーへのイメージを変えたいという気持ちもあります。
ーここ数年、プロゲーマーがストリーマとして活動することが一般的になり、「ダサい、根暗、ヲタク」といった印象は変わってきているように感じます。
プロゲーマーの配信活動が盛んになってきたことは、業界として良いことだと思っています。個人の収入面はもちろん、配信によってファンを獲得することで業界全体の成長に繋がりますから。そして、今まで表舞台に立ってこなかったプロゲーマーが素顔を公開する機会が増えたことで、人目を気にするようになり、徐々にファッションに興味を持ち出しているというのが現状ですね。
あくまで"ファッションブランド"として勝負する「FNNL」
ー「FNNL」立ち上げの経緯を教えて下さい。
チームのアパレル事業自体は2021年の1月に開始しました。当時は「FENNEL」という名前でアイテムを発表していて、有りボディにロゴをプリントするような、いわゆるグッズ的なものを販売してきましたが、2022年2月にFNNLを立ち上げてからは、ボディもオリジナルのパターンを採用したりと本格的なものづくりができるようになりました。
ーFNNLのルックはコレクションブランドのようなクリエティブですが、意図は?
ルックに関しては、やはりeスポーツチームが出すアパレルはグッズだと思われやすいので、本格的な撮影を行い拘るということを追求しました。それは、ファッションブランドとして勝負していくという意思表示でもあります。
FFNLのルック
Image by: FNNL
ーアパレル事業の旗振り役は堀田さんなんですか?
セレクトショップやショールームの運営などファッション業界での豊富な経験を持っている人をクリエイティブディレクターとして起用していて、彼の活躍が大きいです。また、デザイナーにも某ドメスティックブランドのデザイナーを務めていた人を起用していて、正直どこのeスポーツチームを見てもここまで盤石な布陣はないだろう、と自負しています。
ー先日、ディーゼルが手掛ける新プロジェクト「ディーゼル スタジオ」とのコラボも発表されました。
ファッション業界のみならず、知名度の高いディーゼルとのコラボはFNNLにとって大きな一歩です。ディーゼル スタジオでのイベントの他に、コラボアイテムとしてチームのユニフォームを製作しました。
ディーゼルとFFNLがコラボしたユニフォーム
Image by: FASHIONSNAP
ーFFNLは各都市でのポップアップ開催にも積極的に取り組んでいます。
eスポーツというオンライン上でのコミュニティをオフラインに落とし込むのに、ポップアップストアは最適なんですよね。実際会場では、ゲーム仲間としてオンライン上でしか話したことがなかったという人たちが、ポップアップを機に実際に会って盛り上がっているのをよく見かけます。
「オンラインとオフラインを繋ぐこと」アパレルの役割
ーeスポーツ業界の今後について思うことは?
日本のeスポーツ市場は目まぐるしい速度で成長を続けていますが、まだまだ海外に比べると遅れをとっているのが現状です。ただその遅れを取り戻すには、徐々に成長していくやり方ではダメだなと思っていて。フェンネルは積極的に国際大会を主催していますが、先ほどお伝えした通り、大会運営事業で利益を出すことは難しく、みんなあまりやりたがらないというのが現状。でも日本のeスポーツ業界の発展のためには必要なことなわけです。今の10代〜20代の人たちは、小さい頃からインターネットに触れていて、ゲーム人気もすごくある。しかしその大半がライトユーザーなので、その層をいかにゲームを競技として楽しむeスポーツに引き込めるか、というのが最重要課題。そのためには様々なアクションを起こす必要があると考えています。
ーフェンネルが掲げる「eスポーツに熱狂を」を実現するには?
eスポーツをオンラインのみに留めるのではなく、オンラインとオフラインを融合したコンテンツに成長させていくことが最も必要なことだと思います。もちろんオンライン上で世界中の人と繋がり競い合えるというのはeスポーツの最大の魅力です。しかしオフラインだからこその魅力もたくさんある。以前留学をしていた際に、街を上げて地元のオーストラリアンフットボールチームを応援するのを間近で見た時に、「熱狂」というものを強く感じました。1年ぶりにオフラインで開催されたエーペックスレジェンズの公式大会「Apex Legends Global Series」のオフライン大会もすごく盛り上がっていましたしね。
ファッションはオンラインとオフラインを繋ぐ架け橋としての役割を果たすと僕は考えています。FNNLが先頭に立って、日本のeスポーツ業界全体をかっこいいものなんだと認知させていくことができれば、eスポーツにおけるオンラインとオフラインの融合に繋がっていくと思います。
堀田マキシム
1998年生まれ。立教大学在学中アメリカ留学期間に「仏」というゲーム名でストリーミング活動を開始。2019年10月、株式会社Fennel創設。代表取締役社長に就任。FENNELにおけるチームのマネジメントを中心に、自身のストリーミング活動やeスポーツ大会の実況解説など幅広く活動している。
(聞き手:志摩将人)
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境