「いないいない、ばあ!」を意味し、2008年に誕生した「フェンディ(FENDI)」のアイコンバッグ ピーカブー(Peekaboo)。シンプルでタイムレスなデザインの中に、フェンディが培ってきたモノづくりの精神が宿る一生モノのバッグだ。そのピーカブーから派生される「時間」「憧れ」「革新」「クラフトマンシップ」をキーワードに、“憧れの大人”夏木マリと“無限の可能性を秘めた若者”水上恒司の対談が実現。俳優としての哲学や人生観について聞いた。
FENDI「ピーカブー」とは
「ピーカブー」は、2009年春夏ウィメンズコレクションでデビュー。現アクセサリーおよびメンズウェアのアーティスティック ディレクターであるシルヴィア・フェンディが孫をあやしている時にインスピレーションを得て誕生したフェンディのアイコンバッグ。すべて職人の手作業で制作されており、完成するまでには長い時間と正確な作業を必要とする。ライフスタイルに合わせたサイズ展開や、デザインのバリエーションをメンズ、ウィメンズともにラインナップしている。
夏木マリ×水上恒司のクロストーク
舞台は、今年2月にフェンディの世界観を体現する旗艦店としてオープンした 「パラッツォ フェンディ 表参道」。久しぶりの再会を果たした2人。会っていない時間を埋めるかのように自然と会話に花が咲き、最新コレクションに囲まれた空間で対談が始まった。
時間:5年ぶりに再会した、夏木マリと水上恒司
ー中学聖日記(2018)で共演したお二人ですが、今回が久々の再会だったとか。
夏木マリ(以下、夏木):もう5年も前ね。私はずっと「今どうしているかな」「どんな仕事をしているのかな」と、1人のファンとして追っかけていたの。会っていないけど、ずっと水上くんのことを考えていたからか、あまり久々に会ったという感じはしないわね。
水上恒司(以下、水上): 僕は夏木さんに会うと「若い僕らがもっと頑張らなきゃ、負けてられない」と強く思うんですよね。
夏木:今、とっても頑張っているじゃない!
水上:僕は、自分自身がこの5年間でとても変わったと思っているんです。だから、人生の先輩である夏木さんから見て、今の僕がどういう風に映っているのかはとっても気になります。
夏木:名前まで変わったからね(笑)!私の水上くんの第一印象は「絶対にスターになるな」だったの。根性もあるし、何よりもスクリーンやファインダー越しに映る顔がとても素敵だった。役になりきった上で、とってもフォトジェニック。今でもその印象は変わっていないです。中学聖日記のクランクアップ日に「大スターになっても、私のことを知らんぷりしないで」って言ったわよね(笑)。
水上:夏木さんの率直な第一印象は「すごい、湯婆婆だ!」です(笑)。当時の僕にとって、「中学聖日記」はほとんどデビュー作のようなものでしたし、目に映る全てのものが初めての経験でした。そんな中で、夏木さんからのアドバイスは今でも俳優としての礎になっています。心から憧れ、いまでも尊敬しています。
ー印象的な夏木さんからの教えはありますか?
水上:「台本は自分のセリフからではなく、相手のセリフから読みなさい。何故なら、相手役のことを知れば、写し鏡のように自分が演じる役が見えてくるから」と。
夏木:そうそう、よく覚えています。自分が演じる役を最後にすることは一見遠回りのようだけど「この役は、相手にこんなことを言われる人なんだな」と考えていけば、自ずと演じる役どころが見えてくるんですよね。日常生活でも同じようなことが言えると思います。やっぱり、人と人は関わり合っていくことで、お互いに影響を与え合うものだと思うから。自分がどんな人間になっていくかは、自分の周りにどういう人がいるかで決まっていくんじゃないかな。
憧れ:夏木マリが“憧れた人” 「少しだけ自分のことが好きになった」
ー「ピーカブー」は、フォーマルシーンはもちろん、デイリーウェアにクラシカルな雰囲気を与えてくれる誰もが憧れる名品です。夏木さんは、憧れの人のファッションや持っているもの、生き方やスタイルにも影響を受けましたか?
夏木:もちろん受けましたよ。憧れの人は「全部引っ括めて好き」なわけだし。喋り方や仕草、格好などのモノマネから入るのもありだと思っています。
ー夏木さんが水上さんの年齢くらいだった時、理想とする「憧れの大人」はいましたか?
夏木:随筆家の白洲正子さんや、ファッション雑誌の編集者だったダイアナ・ヴリーランド(Diana Vreeland)さんに憧れました。
水上:どういうところに憧れたんですか?
夏木:自分らしく楽しんで生きているのが子どもながらに伝わってきて、羨ましかったのよね。私が憧れを抱いていた白洲さんとダイアナさんは、既に亡くなっていたから「彼女たちが生きていたら、どう考え、どのような選択をするかな」という思いもありました。
水上:夏木さんは今の自分を客観的に見た時に、憧れの大人になったなと感じますか?
夏木:なれているかはわからないけど、少しだけ自分のことを好きにはなったかな。
ー勝手ながら夏木さんに「自分に自信がある、かっこいい女性」というイメージを抱いていたので「少しだけ」という言葉に驚きました。
夏木:私は意外と生きていくのが下手くそで、不器用なの。仕事の準備は時間がかかるし、きっとこれは死ぬまで直らないと思う。でも、今は「少しは自分を好きになれたかな」という気持ち。
水上:自分のどんなところが、好きなんですか?
夏木:着る服や、人との付き合い方、仕事の選び方など、ストレスが溜まらない暮らしを送れているところかな。好きなことをして、自分らしく生きているなと感じます。
革新:常に前進し続けるための原動力と哲学
ーフェンディは、まさに夏木さんのように常に前進している女性によって革新を続けているブランドです。常に前進し続けている夏木さんの原動力は?
夏木:見たい、触りたい、食べたいという単純なことだと思う。新しいものが好きだし、旅も行きたい。とにかく、じっとしていられないんですよ。好奇心こそが原動力ですよ。
水上:好奇心を抱き続けられるのは「インプットをしよう!」と思うからなんですか?
夏木:単純に直感で動くことが多くて。論理立てて何かをやることは無いの。話は少し脱線するけど、日常生活においても、みんなもう少し「あれやりたい」「これやりたい」と、我が儘をもっと言って良い気がするんですよね。夏祭りの夜店で「あのお菓子が欲しい!」と駄々をこねる女の子の精神性を見習うとでも言えば良いのかな。
水上:やりたいことを主張するのは、我が儘とは少し違いますよね。というのも、「やりたい」という主張は「それに対して自分はこれくらい頑張ります」という責任能力とセットだと思うから。僕は「今の方が安定しているから」と守りに入る大人ではなくて、「経験はないんだけど、新しいことに挑戦したい」と宣言して、突き進んでいる大人に憧れます。でも、固定観念に捉われず、柔軟な考えを維持することは難しいですよね。それは、新しいことに挑戦するには苦労が伴うとわかっているからだと思うんです。それでも、僕は、悩みながらも挑戦し続ける人になりたい。だから、夏木さんが「実は不器用なんだ」と教えてくれたことはとてもリアルだなと感じたし、それでも突き進んでいる姿は本当にかっこいいなと思いました。
夏木:頼もしくなりましたね。
クラフトマンシップ:表現されたものには必ずそれを作った人のパーソナリティが出る
ー「ピーカブー」は職人たちの熟練の伝統技術により生み出され、フェンディの精神を体現しています。俳優として活躍するお二人が、プロとして大事にしている信念はなんですか?
水上:人格者であり続けること。舞台や映像の中に出てくる僕たちはお芝居をしていますが、「その役をどういう風に捉えているのか」「作品をどういう風にしていきたいか」という意図は、演者の人格を通して浮き彫りになってくるものだと考えています。
夏木:ものを創れば、必ずそれを作った人のパーソナリティが出る。「ピーカブー」はまさに、シルヴィア・フェンディが、孫をあやすためにしていた「いないいない、ばあ!」が着想源と聞きましたから、デザイナーの人となりやバックグラウンド、感性、生活ととても密接で、完成したバッグに彼女の優しさや手仕事を感じるのも自然なことだと思います。私たちの世界でも同じことが言えて、どんなに役に徹していても俳優の人となりはどうしても滲み出てしまうもの。例えば、どんなに良い役を演じていても、不思議と胡散臭く感じることがある。「夏木マリとして数十年も生きてきた人間色」が絶対に出てしまうと気がついた時、「ああ、大変な仕事を始めちゃったな」と思いましたよ(笑)。
水上:ものづくりの最終到達地点は人柄である、というのはよくわかります。
夏木:自分のバックグラウンドは「自分らしさ」でもあるから、演じることで覆い隠すことも難しいわよね。だから、私たち表現者ができる最後の悪あがきは、1人の人間として、人への優しさや感謝を持って毎日を生きていくこと。フェンディのクラフトマンシップや伝統が100年も受け継がれているのは、そういった毎日の積み重ねがあるからこそなんだろうなと思います。
熟練した職人によってハンドメイドで製作
Image by: FENDI
水上:夏木さんは、俳優として何を一番表現したいと考えていますか?
夏木:常に今を表現したい。フェンディというブランドが約100年続いているのも「今」を積み重ねた結晶だと思うし、今を積み重ねる過程で生まれたのが「ピーカブー」なんじゃないかな。私たちも、「今」を見ていただく作品になれば良いなと思って演じるじゃない。例えば、過去既に誰かがやった役を自分が演じることになった時って、荷が重いと感じるかもしれないけど「今、その役を頂いたんだから、2023年の夏木マリが考えるこの役でいいじゃん」と割り切らなければならない。そうすれば、たとえ過去に誰かが同じ役を演じていたとしても、私のインテリジェンスがその役には宿るものなんです。今の自分が感じることを、見ていただく皆さんに共有するつもりでいれば、長く愛される作品になりえるんじゃないかな。
水上:まさに「ファッション」というのは、今の積み重ねですよね。ファッションというものが広く世界中に愛され続けているのは、先人たちが「今」を表現し続けてくれたから。いかに「今」に本気でいられるかが良いモノづくりには必要不可欠なんですね。
Behind the Scene
夏木マリが選んだ「ピーカブー」
Image by: FENDI
「秋や冬でも使えるブルーカラーって珍しいんですよ。この色とデザインはとっても可愛いくてお気に入りです。様々な服を着てきて知ったのは『良いものは残る』ということ。結局、長い間使い続けることができるのは『良いもの』なんですよね」
ー夏木マリ
秋冬シーズンに活躍するもこもことした柔らかなシアリングインターレースをあしらった「ピーカブー アイシーユー(ISeeU)」。ストリップ状にカットされたシアリングは、15時間に及ぶ手作業で開けられた630個の穴に慎重に編み込まれることで、パターンともエンブロイダリーともいえるエフェクトを生み出している。ホワイト×トープ、ウォームブランディー×トープ、ダークブラウン×ライトブルーを組み合わせたバイカラー3色を展開する。
水上恒司が選んだ「ピーカブー」
「実際に手にした『ピーカブー』はレザーが柔らかく、大きさの割に重さを感じませんでした。フェンディの服に袖を通すことで『ひとつの作品』としての完成度の高さを感じました」
ー水上恒司
定番モデルである「ピーカブー アイシーユー ミディアム」は、フェンディのクラフトマンシップが宿る逸品だ。PCや書類がしっかりと収納可能で、ビジネスシーンにも適したサイズ感。取り外し可能なストラップを取り付けることで、ショルダーバッグとして、また別売りのバッグアクセサリーを装着することでバックパックとしても使用することができる。
夏木マリ着用アイテム、シャツ (参考商品)、パンツ 23万1000円、ウォッチ 27万1700円、バングル(右手手先から)シルバー 4万8400円、ゴールドピンク 4万8400円、ゴールド 4万8400円、ゴールド 5万7200円、左手 7万4800円、シューズ 18万9200円
水上恒司着用アイテム、バッグアクセサリー 17万3800円、ジャケット 104万7200円、ニット 23万1000円、パンツ 11万5500円、シューズ 15万700円、/すべてFENDI(フェンディ ジャパン) *価格はすべて税込価格
問い合わせ先:FENDI(フェンディ ジャパン)03-6748-6233
公式サイト
Photography & Video Direction: HAYATO IKI
Assistant Camera : AKANE YAMAGUCHI, YUKI UCHINO
Gaffer: KANAME TERUYA, RYO ITAZAWA
Online Editor:
AKANE YAMAGUCHI
Retoucher:
MIZUE WATANABE
Colorist: AI
HIRATA
Sound: AKIO
HARA
Text & Edit: ASUKA FURUKATA(FASHIONSNAP)
Assign: TAKASHI SASAI(FASHIONSNAP)
Produce: KAZUHIRO OYOKAWA(FASHIONSNAP)
YUUI IMAI(FASHIONSNAP)
<MARI NATSUKI>
Styling: RENA SEMBA
Hair: TAKU for CUTTERS(VOW-VOW)
Makeup: SADA ITO(SENSE OF HUMOUR)
Nail: KYOKO(effrontee tokyo)
<KOSHI MIZUKAMI>
Styling: TAKAFUMI KAWASAKI
Hair & Makeup: KOHEY
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