茨城県に大規模工場を建設し、ローカル生産を推進
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ーそのほか、素材の調達やCO2の削減などに関してはいかがでしょうか?
そうですね、さまざまな原料や素材を世界中から調達していますが、その過程で携わる人々や地球環境に対する影響を考慮しています。そのためには、サプライヤーとの密接な連携が必須と考えています。また、エネルギーの排出量を抑えるための活動も行っています。マンハッタンから電車で1時間ほどの場所にあるメルヴィルの工場兼R&Dセンターにはソーラーパネルを設置し、カーボンニュートラル化を目指しています。
ー海外ブランドの場合、輸送することでCO2の排出が懸念されると思いますが。
実はアジア初となる生産拠点および、技術イノベーションセンターを、茨城県下妻市に建設中で、2023年の全面稼働を予定しています。最先端機器を備えた次世代の工場になりますが、一貫したサプライチェーンを可能とする最新の高度な技術が導入されます。同時に、品質・安全性・サステナビリティの高い基準の近代的かつイノベーティブな次世代ワークプレイスになります。新工場は、環境への負荷を最小限に抑えながら、アジア パシフィック地域の生産ニーズを満たし、迅速かつスピーディに製品を供給することになるでしょう。
今年の2月に、下妻工場初の完成品サンプルを製造しました。自社として初めてとなる日本製の製品は、エスティ ローダーのアドバンス ナイト リペアや、グループの「クリニーク(CLINIQUE)、「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」「M・A・C」の代表的な製品となります。
ーエスティ ローダーといえば「乳がんキャンペーン」を長く続け、多くの女性に乳がんの早期発見のための検診など、啓発活動に力を入れています。
サステナビリティゴールの一つとして、多様性や平等を謳うグローバルシチズンシップを掲げています。その中でも、「乳がんキャンペーン」は、故エヴリン H. ローダーにより1992年に設立され、ライフワークとして手掛けてきた活動です。このキャンペーンでは、従業員、消費者、パートナーが一丸となり、世界中で60以上の組織を支援しています。乳がんキャンペーンとエスティ ローダー カンパニーズ慈善事業財団は、命を救うための世界的な研究、教育、医療サービスに対し、1億800万ドル(約140億7900万円)以上の資金を提供してきました。
日本でも、乳がんに対する一般認識がそこまで高くなかったころから、認知度向上を目的に清水寺や東京タワーなどをピンクにライトアップし、乳がん早期発見のための検診を促すなど、知識啓発や募金活動のためのキャンペーンを毎年欠かさず全社を上げて行ってきました。毎年継続的に行ってきたことに意味があると思っています。それにより、資金提供にも大きなインパクトを残せていますが、医療研究には多大な資金が必要になります。そこを支えることに企業として取り組む意味と責任を感じています。
ピンクの口紅でリボンを描いた画像の、指定ハッシュタグをつけたインスタグラムのフィード投稿で、1投稿につき25ドル、最大15万ドルをエスティ ローダー グループが米国乳がん研究基金(BCRF)に寄付する「リップリボン」キャンペーンを実施
Image by: エスティ ローダー
「女性がいないテーブルでdecision making(意思決定)はしない」
ー乳がんキャンペーンもそうですが、女性のエンパワメントにも力を入れていますね。
そうですね。女性が輝ける社会を目指したミセス ローダーの考えをずっと受け継いできていると思います。グローバル スポークス パーソンにモデルのカーリー クロス(Karlie Kloss)を起用していますが、彼女は若い女性にコーディングを教えるNPO団体「Kode with Klossy」を立ち上げています。また活動家で作家であり、大統領就任式で詩を朗読した米国史上最も若い詩人のアマンダ ゴーマン(Amanda Gorman)をグローバル チェンジ メーカー兼キュレーターに任命し、識字率向上プロジェクトに、3年間で300万ドルを寄付しました。エスティ ローダーは彼女らのそういった活動をサポートしているわけですが、ただ寄附をするだけでなく深くコミットしサポートしています。
このように女性を応援することは、ずっと受け継いできたもので、エスティ ローダーではもはや当たり前のカルチャーになっています。ミセス ローダーの息子で、現在名誉会長のレナード A. ローダー(Leonard A. Lauder)の著書「THE COMPANY I KEEP〜MY LIFE IN BEAUTY〜」に、「女性がいないテーブルでdecision making(意思決定)はしない」という言葉があります。女性を輝かせる化粧品を扱う会社として、女性を平等に扱うのは当たり前なのです。
現在名誉会長のレナード A. ローダー(Leonard A. Lauder)の著書「THE COMPANY I KEEP〜MY LIFE IN BEAUTY〜」
ー女性を本気で応援する会社として、社内の女性の活用率も高いのでしょうか?
グローバルだと全社員の84%が、リーダー層も半数以上が女性です。日本では社員の70%が女性ですね。今でもすごいことですが、75年前のアメリカはまだまだ女性の社会進出が今ほどではありませんでした。その中でも事業を立ち上げ、成功させたミセス ローダーは元祖“ガール ボス”ともいえますし、多くの女性の憧れだったと思います。
ーこれからサステナビリティを推進しようとすると、ビジネスとの両立が難しいと言われています。このことについてどう考えますか?
広義のサステナビリティは、企業のパーパスそのもの、つまり存在意義だと思っています。われわれも、最近流行っているからサステナビリティに取り組んでいる訳ではありません。創業当時から行っていることですし、また今もっと積極的に推し進めなければ地球環境の保全は間に合わないと思います。やるしかない中で、どのような方法で早くインパクトを出せるか、一つずつ推進しながらも日々考えています。
ー最後に、小幡ブランド ジェネラル マネージャーご自身のサステナブルアクションについて教えてください。
すごく大きなことを行っているというわけではないのですが、暑くても寒くても自転車で通勤しています。環境に配慮していることもありますが、健康にいいですよね。元々、サッカーやアルティメットフリスビーなどといったスポーツを学生のころからやっていますし、体を動かすのは好きですね。走っている時に仕事のひらめきがあったりします。
(文 エディター・ライター北坂映梨、聞き手 福崎明子)
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