モデルのemmaとスタイリストの中村璃乃が、アパレルブランド「イーアール(ER)」を立ち上げた。新ブランドで提案するのは、「何かと繋がるきっかけになる服」。文化服装学院の同窓生で、10年来の親友同士だという2人にブランド立ち上げの経緯やモノ作りのこだわりについて聞いた。
emma
2012年、雑誌の表紙を飾りプロモデルとしてデビュー。sweet、Ginaなどの⼈気ファッション誌のほか、SPACE SHOWER MUSIC AWARDSでは2年連続MCを務めるなど、テレビやイベントにも活躍の幅を広げている。
中村璃乃
⽂化服装学院卒業後、2015年よりスタイリスト⼭脇道⼦に師事。2019年に独⽴し、ViVi、sweet、arなど⼥性ファッション誌を中⼼に活躍している。
出会いから10年。ブランド立ち上げのきっかけは?
ーお二人は文化服装学院の同窓生と伺いました。
emma:そうなんです。私たちが通っていたファッション流通科では、2年生になる時に5つのコースから1つを選んで進級するのですが、そこで同じモデルコースを選んだことが出会いのきっかけでした。本当は1年生の最後の発表会で偶然同じ組になって集合写真を撮っていたのですが、当時はお互いそのことは忘れて初対面の気持ちでいましたね(笑)。
中村:私は当時、服に携わる仕事に就きたいとは思っていましたが具体的に何をするかが決まっていなくて、仲が良かった友人がいたという理由でモデルコースに進みました。そこでemmaとルームメイトになりましたが、可愛い子がいると噂になっていましたね。
emma:新学期には自分の好きなものや将来の夢をプレゼンテーションする機会があったんですが、その時に璃乃(中村)が「韓国が大好きです」と言っていて。当時は少女時代がブームで私も大好きだったので、「友達になりたい!」と思って自分から話しかけました。
中村:いきなり「韓国料理食べに行かない?」と言われたんです。今思えば、なんとなくお互いに通じ合うものがあったような気がします。
emma:卒業後も仕事の関係で会わない期間はあったけど、ずっと何かしらの形では繋がっていたね。そして出会って10年の節目で一緒にブランドを立ち上げ。なんだか感慨深いです。
ーブランド立ち上げに至った経緯を教えてください。
emma:1年半ほど前に、私が当時7年間専属モデルをしていた「ViVi」を卒業したとき、将来について考える時間ができて「モデルとしてやっていくのもいいけど、自分のルーツであるファッションが好きという気持ちも大事にしたい」と思うようになりました。その時自分のブランドをやりたいと考えて、当時毎日のように会っていた璃乃を誘ったら「やりたい!」と言って企画書を作ってきてくれたんです。そこから具体的にプロジェクトが始動して、今回の立ち上げに至りました。
ー中村さんに声をかけた理由は?
emma:友人は他にもいますが、ここまで好きな物が同じ人は璃乃しかいないんです。ブランドの立ち上げには金銭的な問題も付いて回ると聞いていましたが、彼女とならそういった部分も全部話せるという信頼感もあって。前もって「お金で関係が崩れることは絶対にないようにしよう」という話はしました。
中村:声をかけてもらった段階から不安もなく、emmaとだったらやりたいと思いました。
emma:自分で璃乃に声をかけておきながら「スタイリストだけでも忙しいのに大丈夫かな?」とは思いましたけど、快諾してくれて嬉しかったですね(笑)。
ーお二人の役割分担は?
emma:特に決まっていないです。でもクリエイティブな面は絶対に2人で意見を出し合って決めています。2人がクリエイティブディレクターです。
中村:お互い別の仕事もあるので業務分担できる段階ではないんです(笑)。2人のスケジュールと相談して、時間ある方がやる、という感じですね。
emma:ルックのモデルに関しては、最初は私が全て担当します。自分のブランドですし、モデルのお仕事も10年間やらせていただいているので。璃乃はスタイリストとして携わることができるので、そこはブランドの強みかもしれないです。
ブランドが何かと繋がる「きっかけ」になってほしい
ーブランドコンセプト「誰かの何かのきっかけに。⼈と⼈を繋ぐ“ER”」に込めた想いとは?
emma:私は高校生の頃に「ジッパー(Zipper)」や「フルーツ(FRUiTS)」などの雑誌を読んでファッションに情熱を燃やし、それが今回のブランド立ち上げに繋がっています。同じように、イーアールが多くの人にとって何かと繋がる「きっかけ」になってほしいという想いを込め、コンセプトを設定しました。6月末に開催するポップアップでも、新しい人と出会ったり、そこでの経験が将来の仕事に繋がったりしたら嬉しいですね。
ー「ER」というブランド名の由来を教えてください。
中村:私とemmaの名前の頭文字をくっつけたのがブランド名の由来なんですが、他にも意味があるんです。
emma:例えば「lover」や「アムラー」、「YouTuber」もそうですが、何かの単語の後に「er」がつくと別の意味を持つ言葉になるじゃないですか。服を着ることで、別の自分に生まれ変わることができる。誰かにとってそんな服になってほしいという想いを込めて「ER」と名付けました。ロゴにしても可愛いですしね。
ー年齢や性別に捉われないとのことですが、メインターゲットは?
emma:ターゲットは縛りたくなくて。日本だとまだ「女性用」「男性用」と分けられていますけど、パリに行くとそういった縛りはほとんどない。最初は予算的な問題もありワンサイズ展開なので必然的に女性用みたいになってはいますが、本当は豊富なサイズ展開で、男性でも着たい人はワンピースを着てほしい。もちろん今後も「女性用」と謳うつもりは一切ありません。可愛いと思った人に着てほしい、それだけです。
自分たちが本当に着たい服を
Image by: FASHIONSNAP
ーデビューコレクションは5型ですが、展開アイテムに共通するポイントは?
中村:ベーシックなアイテムを基本に、ロゴをあしらったり、素材を工夫したりすることでオリジナリティを出しました。
emma:共通しているのは「自分たちが本当に着たい服」という点ですね。例えば私が着ているのはパイル地のワンピースの色違いなんですが、既製品で探してみると素材やサイズ感で「惜しい!」と感じるものが多くて。「だったら自分たちで作ってしまおう」ということで製作しました。
Image by: FASHIONSNAP
ーイチオシのアイテムは?
emma:タンクトップですね。タンクトップって1年を通して着られるのでクローゼットに必要不可欠じゃないですか。ただ、既製品はベーシックなものが多くて。夏はタンクトップ一枚で着たいんですが、素肌感が気になったり、ファッション的にどうなんだろうと悩むことも多かったんです。「意外とロゴ付きのタンクトップはないよね」というところから製作に至りました。
中村:ロゴを入れることでインナー感が抜けてこなれた印象になったので、仕上がりにはとても満足しています。
Image by: FASHIONSNAP
emma:あと、私たち2人が大好きなスウェット。ファンの皆さまの間でも、私はスウェットを着ている印象が強いらしいので最初からマストで作ろうと決めていました。
中村:起毛にこだわっていたら発売がずれてしまったんですよね(笑)。デビューコレクションでは5型を展開しますが、シーズンは意識せず「自分たちが本当に着たい服」を製作しました。どれも末長く着用できると思います。
Image by: FASHIONSNAP
「第2の人生」ブランド立ち上げへの覚悟
ー自社ECで展開していくとのことですが、卸売は考えなかった?
中村:実店舗に関しては、最初からあまり考えていなかったです。
emma:お話をいただけたら光栄ですが、現状予定はないですね。とはいえ、お客さまの顔を見て商品を届けるのは大事なことだと思っているので、デビューのタイミングでご挨拶も兼ねてポップアップを開催します。お客さまと直接お話できる貴重な機会になるので、すごく楽しみですね。
ーポップアップの入場チケットは既に完売したとか。
emma:販売開始から4分で完売しました。発売1時間前くらいから心臓バクバクだったので安心しましたね(笑)。コロナの感染拡大もあり2年くらいイベントをしていないので、久しぶりに対面で実施できて嬉しいです。ポップアップでは2人で接客を担当しますが、学生時代にアルバイトでショップ店員をしていた経験を活かして頑張ります。
中村:一般の方にスタイリングするのは初めてなので緊張しますが、楽しみです。どんな反応してくれるんだろう。
ーブランドの目標を教えてください。
emma:短期的な目標で言うと、デビューコレクションの完売と、ポップアップの成功。1人でも多くの人にブランドを知ってもらいたいです。将来的には東京以外のエリアでもポップアップを開催して、全国のお客さまに直接商品を届けたいと考えています。アイテムの製作から販売まで、一つ一つ丁寧に取り組めるブランドに成長していきたいですね。
中村:長く続けていきたいよね。
emma:皆さんに愛されて、長く続いていくブランドにしたいね。私たちもずっと東京にいるかは分からないですけど、どこにいてもブランドはできる。もちろん今後もモデルは続けますが、第2の人生という覚悟でブランドに取り組んでいます。
(聞き手:村田太一)
■ER POP UP STORE
開催日:2022年6月25日(土)〜26日(日)
営業時間:11:00〜20:00(最終入場は19:30)
場所:東京都渋⾕区神宮前3−1−28 BELL TOWN5階
公式サイト
Image by: ER
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