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出版社の次のカタチとは?編集長に聞くELLEのコンテンツ作り

坂井佳奈子氏

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出版社の次のカタチとは?編集長に聞くELLEのコンテンツ作り

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エル事業の中核を担っているエディターが幸せに働けるように

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ーエル事業の中核を担っているものは何だと考えますか?

 やはりエディターではないでしょうか。時代と逆行しているように聞こえるかもしれませんが、デジタル化を推し進めるほどエディターの肌感や知見が役立つんです。この先はAIの力を借りることも出てくると思いますが、エディターたちの感性と先を見る力が未来を作るはずだと信じていますから。もちろん数字も大事です。

ー働き方も重要になりそうです。

 はい。特にデジタルの仕事には終わりがないので、疲弊してしまうこともあります。働き方は国を挙げて改革をしていますし、エディターがいかに幸せに働けるかはとても大切です。

ーメディアの仕事は残業が多いものだと思いますが。

 残業が全くないわけではないです。仕事をライフワークのように捉えているスタッフもいますし、仕事がノッていればどっぷりやる。実際にプリントチームが校了の日は夜遅くなることもあります。でも終電を逃してまで仕事をしろということはありませんね。

ー校了前などは徹夜が当たり前なのかと思っていました。

 徹夜はまずありません。そういえばスタッフが「徹夜をしたことがない」と社外の編集者の方に話したら、とても驚かれたと話していましたね。エルの部署だけではなく、会社がそういう雰囲気になりつつあると思います。

ハーストは出版社ではない?ハーストが示すメディアの未来

ーデジタル戦略で新しい取り組みはありますか?

 本国のハーストが開発した「メディアOS」と名付けられた「コンテンツマネジメントシステム(CMS)」を、順次日本でも取り入れています。ROIを考慮すると、ひとつのメディア企業がCMSから開発することは本来あまりないと思います。

ーどのように活用しているのでしょうか。

 エル・オンラインと「コスモポリタン(Cosmopolitan)」、ローンチしたばかりの「CRファッションブック(CR FASHION BOOK)・オンライン」には導入済で、今後は加速度的に当社のデジタルメディアに取り入れていく予定です。メディアOSによって海外の記事が転載しやすくなったり、動画を取り入れるプラットフォームが強化されたり。また色々な国の情報を瞬時に把握できるほか、どのコンテンツが読まれているかという数字も見ることができるので、データをタイムリーに活用することができます。加えて広告を一括で管理することもできるため、これまで媒体と国ごとに全く違うCMSを使っていて中々実現できませんでしたが、ラグジュアリーブランドとグローバルで統一したキャンペーンを行うことができるようになりました。

ー日本独自で取り組んでいる施策はありますか?

 LINE社との取り組みは日本独自の取り組みです。エル・ガールはLINE MOOK。エルはLINE NEWSを配信していましたが、公式アカウントは今年8月末にスタートしました。

ーデジタル系の人材も増やしているのでしょうか。

 デジタル化に伴うビジネスの多様化が進んでいることから、必然的にデジタル系の人材は増えてきています。

ーデジタルスキルの習得にも力を入れている?

 そうですね。社内では毎月勉強会を開いていて、デジタルを中心としたテーマで外部から講師を招き、全社的に最新技術に関する知識の向上に取り組んでいます。

ー従来の出版社とは全く異なるイメージですね。

 収益源の多様化が加速しており、今や出版社というよりはマルチメディアカンパニーといったほうが現状を言い表しているのではないでしょうか。

ー今後の展望は?

 当社では、定期購読やイベント、EC利用者の質の高い顧客データを保有しており、これを活用したビジネス展開にも積極的に取り組んでいます。今後データを活用した施策はますます増えていくものと思います。

 例えば当社のメディアが集まって毎年開催している「ハースト ビューティ フェスティバル」では、参加者にバーコード付きのリストバンドを配布しました。これにより、立ち寄ったブースの履歴を記録・分析することで、最終的には各参加者の関心度の高いメディアの記事を提供する取り組みなどもしています。イベントにデータの要素を加えることによって100人いれば100通りの体験ができますし、エルだけではなく他の媒体に触れる機会も提供できます。一方通行ではなくフィードバックをいただくこと、読者とより密接に繋がっていくことが、デジタルが発展すればするほどとても重要になってくると考えています。

ーこれからのエルの目標は?

 エディターの個性が輝くメディアという強みを絶やしてはいけません。そして「好奇心を開放させる」「働く女性を応援する」「女性と寄り添うメディア」といったDNAがベースにあるので、常に寄り添える世界一愛されるメディアを目標にしています。そのためには、スタッフたちがいかに心地よく働けるかという原点に戻ることも大切です。

坂井佳奈子
エル コンテンツ部/デジタル コンテンツ部 編集長

1998年にアシェットフィリパッキジャパン(現ハースト婦人画報社)入社。エル・ジャポン編集部にてコントリビューティング・エディター、シニア・エディター、ファッション・ ディレクターを経て、2014年1月にエル・ガール編集長に就任した。2015年4月にエル・ジャポン編集部、エル・ガール編集部、エル・オンライン編集部を、エル コンテンツ部としてひとつに統合する組織改正が行われ、エル コンテンツ部 編集長に就任。

(聞き手:チェ ユナ)

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