期待の若手デザイナーを取り上げる「若手デザイナーベスト9」。2016年以来実に9年ぶりの復活です。月日が流れ、若手デザイナーたちの顔ぶれもすっかり様変わり。前回紹介したラインナップの中には、日本を代表するにまで成長したブランドもありました。今回は、活躍が期待される30歳以下、9人の若手デザイナーを「打線を組んでみた」形式でご紹介。この中から近い将来、日本の4番やエースとなるブランドが出てくるかも? それでは、早速いってみましょう!
1番・センター:「ダイリク(DAIRIKU)」
ADVERTISING
次世代引っ張るリードオフマン
「ダイリク」は、デザイナー岡本大陸が、バンタンデザイン研究所在学中にスタート。2016年に若手デザイナーを対象としたブランドコンテスト「アジアファッションコンテスト」でグランプリを獲得し、2017年にはニューヨークファッションウィークで、初となるランウェイショーを開催。「TOKYO FASHION AWARD 2022」を受賞したことで、2022年3月には東京ファッションウィークで初のショーを実施しました。2025年春夏シーズンでは、俳優の山﨑賢人と栁俊太郎を主演に迎え、初の自主映像作品「AISLE」を公開。アメカジをベースにしつつ、岡本自身のルーツである映画の要素を組み合わせた独創的なクリエイションで次世代をけん引しています。ランウェイショーの最後にデザイナーの岡本が会場を走って駆け抜ける「お決まり」があることから、疾走感のあるリードオフマンとしてトップバッターに選出しました。
Instagram:@dairiku
2番・セカンド:「アンス・ドッツローヴナー(Ans Dotsloevner)」
「ミュウミュウ」のスタイリスト、ロッタ・ヴォルコヴァも注目する新星
デザイナー 百瀬華乃が2021年に立ち上げた「アンス・ドッツローヴナー」。「自分に正直に、子供のような純粋な心で自分にも服にも嘘をつかずに作ること。素直な気持ちと、ときめきの心を大切にすること」をコンセプトに、百瀬自身の幼い頃の記憶や憧れ、心の動きを反映させたコレクションを展開しています。「ザ・フォーアイド(THE FOUR-EYED)」や「ヴィジットフォー(VISITFOR)」といった有名セレクトショップが取り扱っているほか、「ミュウミュウ(MIU MIU)」を手掛ける世界的スタイリスト ロッタ・ヴォルコヴァ(Lotta Volkova)が推していることからも、ブランドへの注目度や期待値が窺い知れるでしょう。ブランドの代名詞でもある薔薇をモチーフにしたビスチェには、一目見ると忘れられないアーティスティックな魅力があります。デザイナーの百瀬はモデルとして活動していた経歴も持つため、器用な役割をこなす2番バッターとして上位打線に組み込みました。2023年のWBCで2番打者として世界一に貢献したソフトバンク 近藤健介選手のような大活躍に期待です。
Instagram:@ansdotsloevner
3番・ショート:「ジューキフ(Juukiff)」
サステナビリティを重んじるセントマ出身のデザイナーデュオ
2024年春夏シーズンに本格デビューしたばかりのニットアンダーウェアブランド「ジューキフ」を手掛けるのは、韓国出身のハ・ジュミと日本出身のカワイルカによるデザイナーデュオ。2人はともにファッションの名門・セントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins)のファッションデザイン学科ニットウェア専攻の卒業生です。「ESSENTIALISM(本質主義)」を掲げる同ブランドはサステナビリティへの意識が非常に高いことも特徴で、約7割のアイテムにテンセルやコットンなど単一材料を使用しているほか、多くのアイテムにホールガーメント技法を採用することで高いリサイクル効率を実現。繊細でフェティッシュなデザインだけでなく、「クローゼットの中身を減らすことにつながればそれもまたサステナブルである」という考えから、1着で様々な着方を楽しむことができるアイテムを多く展開しているのも魅力です。その安定したクリエイションから打線の中核を担う3番打者が適任だと考えました。
Instagram:@juukiff
4番・ファースト:青木夏海
海外名門大学で修行、成長続ける未完の大器
デザイナー 青木夏海は1996年生まれの28歳。東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業後、海を渡りセントラル・セント・マーチンズの「Graduate Diploma in Fashion」コースを修了。その後、ニューヨークのパーソンズ美術大学でファッションを学び、卒業制作として、ウールやシルクといったオーガニック素材を用いて今日の“防護服”から着想を得たコレクションを発表しました。卒業後は、ニューヨークの若手デザイナーとコラボレーションした作品を発表するなど活動の幅を拡大。東京藝大時代に学んだテキスタイルへの理解を活かしたモノ作りが特徴で、見る人の想像力を掻き立てるダークでエモーショナルなクリエイションは必見です。目下自身のブランドを持つなどの動きはありませんが、将来的な天井の高さを鑑みて4番に抜擢。海外の数々の名門で学び、成長を続ける姿は、花巻東高校からスタンフォード大学に進学し、直接メジャーリーグデビューを目指す怪物スラッガー 佐々木麟太郎選手と重なります。
Instagram:@kabikooo
5番・サード:「カカン(KAKAN)」
ニットウェアの限界を超えるか 「ヨウジ」「マメ」などで経験を積んだニューカマー
「カカン」デザイナーの工藤花観は、セントラル・セント・マーチンズでジュエリーデザインなどを学んだ後、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」「シャネル(CHANEL)」のビューティラインなどで経験を積み、イタリアのイスティトゥート・マランゴーニを卒業。ヨーク ギャラリー(YOKE GALLERY)での卒業制作展を経て、2024年秋冬コレクションで本格デビューしました。ほっこりしたものとして捉えられがちなニットを「誰もが格好良く着こなせるアイテム」として解釈し、エネルギッシュかつアーティスティックに表現するクリエイションが特徴。毛を買って糸を紡ぐところからスタートしているというカカンのモノ作りからは、ニットウェアの可能性を拡大してくれそうなパワーすら感じます。スタートしたばかりではあるものの、雑誌で満島ひかりのスタイリング着用されるなど既に注目は高まっている様子。期待値の高さからクリーンナップに抜擢しました。
Instagram:@kakan.ars
6番・キャッチャー:「ダイスケ タナベ(DAISUKE TANABE)」
上質素材と京都の伝統技法を融合、日本ファッション界の「扇の要」となるか
6番キャッチャーは「ダイスケ タナベ」。デザイナーの田邉大祐は大阪出身。京都大学在学中にパターン養成学校に通いながら服作りの基礎を学び、卒業後は西陣織の老舗企業 細尾に入社。生地作りに携わった後、2023年に独立し「ダイスケ タナベ」を立ち上げました。レザーやデニム、ニットウェアを強みとしたコレクションを展開しており、イタリア インカス社のタンニンレザーやトスカーナのムートンといった上質な素材に、京都の染めや伝統技法を絡めたアイテムを製作。幼少期は映画監督を志していたという田邊らしい、影響を受けた映画や小説、写真などのカルチャーをベースにしたストーリー性のあるコレクションも特徴です。今オフにFAで巨人への移籍を表明した甲斐拓也選手のように日本ファッション業界の「扇の要」となれるか。
Instagram:@daisuketanabe_official
7番・ライト:「ムッシャン(mukcyen)」
「万人受け」の対極へ、独自の世界観で支持を集める注目株
文化服装学院を卒業後、 世界的デザイナーズブランドの企画部で4年間経験を積んだデザイナー 木村由佳が「エムエーエスユー(M A S U)」などを擁するSOHKIのもとで2023年夏に立ち上げた「ムッシャン(mukcyen)」。ブランド名は日本生まれ中国育ちというバックグラウンドを持つデザイナーの苗字「木村」の中国語読みである「mù cūn」を元にした造語で、「抽象的で無意味な言葉に、自らが築く歴史と文化を附与することで無類の意を与えていく」という想いが込められているそう。ボディコンシャスなウィメンズウェアを中心に発表しており、コレクションからは「トレンド」や「万人受け」とは一線を画した独自の世界観を味わうことができます。デザイナー木村は個人のインスタグラム(@gemmalzr)でもその美的センスで多くの支持を獲得しており、フォロワーは20万人にも届く勢いです。
Instagram:@mukcyen
8番・レフト:「ビブリオテーク(BIBLIOTHERK)」
坂部三樹郎「me」出身、特異な来歴の26歳デザイナー
アルゼンチン生まれ東京育ちの26歳、畑龍之介が手掛ける「ビブリオテーク」。畑は、文化学園大学ファッション社会学科卒業後、デザイナー 坂部三樹郎が学長を務めるファッションスクール「me」を経て、2022年秋冬シーズンにビブリオテークを立ち上げました。ブランド名は、ドイツ語で図書館を意味する「BIBLIOTHEK」に由来。高校時代オランダとドイツで暮らしていた畑は、多くの時間を図書館で過ごし、そこでファッションと出会ったといいます。畑が高校時代に親しんだドイツの伝統的なファッションアイテムやワーク・ミリタリーウェアのディテールをクリエイションに取り入れ、当時感じた穏やかな時間の流れや精神性を表現したコレクションを発表しています。
Instagram:@bibliotherk
9番・ピッチャー:「ユース オブ ザ ウォーター(YOUTH OF THE WATER)」
ギャルソン出身、古着をアップデートしたメンズウェアを提案
「ユース オブ ザ ウォーター(YOUTH OF THE WATER)」は、コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)社の「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」でパタンナーを5年務めた上田碧が2024年秋冬シーズンにスタート。ブランド名は、中国の文筆家 陸羽の著書「茶経」に記された「華」という言葉を、東京藝術大学の創始者である岡倉天心が、自著「The Book of Tea(邦題:『茶の本』)」の中で「YOUTH OF THE WATER」と表現したことに由来しています。「古着は長く繋がる服の歴史にとって重要な遺産であり、誰もがその相続人である」といった信念のもと、古着のディテールを独自の視点で咀嚼しアップデートしたメンズウェアを提案。ファッションデザインを通じて、「プロダクト」「メーカー」「ユーザー」の3者の「対等でより良い関係性」を生み出すことを掲げており、その真っ直ぐな想いからピッチャーに選出しました。来季メジャーリーグへの挑戦を表明した佐々木朗希投手のように世界に羽ばたくことを期待します。
Instagram:@youthofthewater
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
【2025年上半期占い】12星座別「日曜日22時占い」特別編
Graphpaper -Men's- 2025 Spring Summer
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection