日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2023年3月度は、前年のまん延防止措置適用による反動増に加えて、春の新生活のオケージョン需要、またマスクの着用が個人の判断に委ねられるなど、外出ニーズの高まりを背景に各社で衣料品や化粧品が動いた。
目次
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三越伊勢丹HD
好調が続く三越伊勢丹ホールディングスの3月度は、前年同月比16.5%で着地した。2022年4月〜2023年3月の累計では前年同期比19.8%増となった。
売上を牽引するのは三越日本橋本店、伊勢丹新宿本店の両本店。伊勢丹新宿本店は2022年4月以降、12ヶ月連続で2018年度を上回る実績で推移しており、累計では1991年度の過去最高実績を上回る見通し。
※伊勢丹新宿店は今月度以降のコメントについては差し控えるとしている
高島屋
高島屋では高額品が堅調に推移したほか、春物衣料雑貨にも動きがあり、前年同月比9.1%増となった。また、免税売上が押し上げ要因となり、店頭売上高においては前年実績を上回ったが、2019年度(2020年3月)実績にはまだ及んでいない状況。
■高島屋新宿店で注目された売り場:化粧品売場 リップとチークは5割増
3月13日から日常生活におけるマスクの着用が個人の判断に委ねられるようになり、マスクを外す時間が徐々に増える中、口紅と頬紅は前年同月と比べて約5割増とよく売れており、化粧品売場全体では前年と比べて約3割増の売上となっています。また、紫外線を意識してファンデーションなどのベースメイクを新しく買いそろえる方も増えています。
新宿店では昨年9月から順次、化粧品ブランドのリニューアルとニューオープンを行い、いずれのブランドもご好評いただいています。また、スキンケアのアドバイスやギフト選びのお手伝いをする「コスメティックカウンター」を2月末に移設・拡大し、コスメティックアドバイザーも増員。今後は、頭皮チェックやメイクアドバイスにまで広げて、トータルでご案内できるようにして参ります。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
前年同月比16.9%増となった大丸松坂屋百貨店では、ラグジュアリーブランドや美術宝飾品が引き続き好調。加えて、春の新生活に伴うオケージョン需要などでジャケットやブラウスが活発に動いたほか、ホワイトデーやお花見といったイベント需要で食料品も売れた。入店客数が急回復している東京店と、ラグジュアリーブランドが売上に貢献している心斎橋店では3割超の伸び率を示した。
■松坂屋名古屋店で注目されたカテゴリー:婦人靴・ハンドバッグ ロンシャンやエコーなど
松坂屋名古屋店では婦人靴・婦人ハンドバッグの売り上げが好調で、前年同月比15%増となりました。新型コロナウイルスに対する規制が一気に緩和ムードになり、トラベル需要が高まっています。
シューズではトレンドも相まってスニーカーが同20%以上売上が伸長。百貨店顧客のニーズにあった「お洒落で履きやすい」を実現したブランド「エコー(ecco)」が人気です。エコーでは、レザーを使用した高級感あふれるデザインと、柔軟性と軽さに優れたラバーソールを使用した商品を多く展開しています。
バッグではキャッシュレスが主流となっていることもあり、旅行でもスマホとカードケースだけが入る小さいショルダーバッグを持ちたいというニーズが拡大。「ロンシャン(LONGCHAMP)」の「ルパニエプリアージュ®」シリーズのショルダーバッグはトレンドを先取りしたいお客様に大人気。夏のトラベルに向けて3月から動き出しています。またリアルな入卒園式や結婚式が復活していることもあり、セレモニー需要も増加しました。(松坂屋名古屋店 担当者)
ロンシャンの「ルパニエプリアージュ®」
Image by: 松坂屋名古屋店
エコーの売り場
Image by: 松坂屋名古屋店
そごう・西武
そごう・西武では、前月比9.7%増と大幅伸長を維持。プレステージブランドや呉服高級雑貨などの高額商材領域で好調が続いたほか、外出ニーズの復活により衣料品計で同10%増となった。花見ピークを背景に、弁当・酒類も売れた。
■西武池袋本店で注目されたカテゴリー:“最強開運日”に財布が売れる
3月21日は2023年に1度しかない 「一粒万倍日」「天赦日」「寅の日」の3つの吉日が重なるラッキーデーでした。縁起をかつぐラッキーデーのお客様の関心は年々高くなっており、今年のラッキーデー前後(3月20日~26日)の財布売上は前年比1.5倍、昨年3つの開運日となった3月26日前後の期間と比べても伸長しました。ラッキーデーに合わせて購入するお客さまの年代も幅広く、30代以下の方もラッキーデーに合わせて多くご来店されました。人気の形はキャッシュレス化やバッグサイズの小型化を反映してミニ財布、デザインもシンプルなタイプが売れ筋でした。(リーシング本部 リーシング一部 ファッション担当 高橋礼)
松屋
松屋銀座では、化粧品が前年同月比約38%増、ラグジュアリーブランドが同約70%増、時計が同18%増と、引き続き銀座店の強みとなるカテゴリーが富裕層を中心とした国内客を軸に好調に推移し、トータルでは同29.8%増で着地した。主に台湾や韓国、香港、タイなどの東南アジアに加えて欧米からの観光客が増え、銀座店の免税売上は同約3割増の勢いを示し、コロナ前となる2019年対比でも約24%増となった。免税売上が銀座店全体に占めるシェアは約20%(コロナ前は約25%の水準)。
■松屋銀座で注目されたカテゴリー:婦人パンプス サンダルも動き始める
松屋銀座では、婦人パンプスの需要が大きく伸びています。コロナ禍の中では在宅勤務や運動不足解消でカジュアルシューズが伸びていましたが、オフィス通勤が再開したことに加え卒業式や入学式などの需要もあり、3月はパンプスの売上が前年比30%増と好調でした。
定番の黒をはじめとして、プライベートでも使えるベージュやヒールの低いものの動きもよく、また桜の開花が早まるなど暖かい日が続いたことでサンダルも少しずつ動き始めています。(松屋銀座 婦人靴担当者)
阪急阪神百貨店
阪急阪神百貨店では、阪急うめだ本店、阪神梅田本店の両本店を中心に売上を牽引し、前年同月比20.8%増となった。 中でも阪神梅田本店では人気の大型催事が奏功し、同1.8倍と高伸。全体の国内売上高は前月に引き続きコロナ前を上回り、免税売上では2019年3月比で82%まで回復している。
阪急うめだ本店は3ヶ月連続で過去最高売上を更新。外出ニーズの高まりで婦人・紳士ファッションや化粧品などが好調で、化粧品やラグジュアリーカテゴリーは同2割増の水準だった。また、お祝いニーズで宝飾品や革小物、ストールも動いた。100万円以上の高額品の売上高は前年比2割伸長した。
■阪急うめだ本店で注目された売場:3月にオープンした1階イベントスペース ギフト需要で好調
阪急うめだ本店1階イベントスペースに、毎日の暮らしを彩る新しい発見や驚き・感動が生まれるコミュニティハブ「コトコトステージ12」が3月22日にオープン。4月25日までは「FLOWERSHOWER」をテーマに、フード、雑貨、アクセサリー、アートなど春を感じる20ブランドを紹介しています。ギフト需要の時期でもあり、若い方にも手に取りやすく、かつクオリティーの高い華のある商材をバイヤーの独自の目線でセレクトし展開。 生花にも勝る美しさと人気のアーティフィシャルフラワーのブランド「ピオニーズ」は、まるでお花畑にいるような素敵な空間で、写真や動画撮影をされている方も多く、ギフト需要はもちろん自家需要としても購入されています。また、食べるのが勿体ないくらい可愛らしい「ボンファリーヌ」と花束になっている「フロコリール・ラルブル」のアイシングクッキーが返礼ギフトとして好評。兵庫県西宮市出身の油彩画家 古賀陽子氏にイベントテーマに合わせて描いたアートは、1階ということもあり、初めて絵画に興味を持ってくださった方々や、一目で気に入ってくださる方も。
今後も、店舗のテーマに合わせ「こんな素敵なアイテムを送りたい!」と誰もが笑顔になれるような、商品だけではなくトークショーやワークショップイベントなどの体験も織り交ぜ提案していきます。(阪急うめだ本店 担当者)
Image by: 阪急うめだ本店
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2023年2月度:スーツケースや高額旅行プランの売れ行き好調 インバウンド復活の兆しも
・2023年1月度:コロナ禍の反動でバレンタイン商戦過熱
・2022年12月度&23年初売り:インバウンド売上回復基調、クリスマス商戦で宝飾品が売れる
・2022年11月度:免税売上が大幅増、婦人向けのお出かけ着が回復
・2022年10月度:秋冬商戦スタート、コロナを経て買い替え需要も
・2022年9月度:ファッション・芸術・食欲の秋 ブーツ商戦にも熱
・2022年8月度:各社で売上2桁増、衣料品回復の兆し
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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