日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
全国的な行動規制のない夏休みが3年ぶりに到来した2022年8月度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、東京や大阪などで前年同時期に緊急事態宣言が発出されていたことによる反動増に加え、秋冬の新作立ち上がりや帰省シーズンも重なり、各社で2桁増と大幅な伸び率を記録した。
※売上増減率は各社いずれも速報値を参照
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
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三越伊勢丹HD
先月に引き続き高額品への購買意欲が高く、国内百貨店計売上前年比は33.6%増で着地した。特に、伊勢丹新宿本店は増税前の駆け込み需要や宝飾品などのリモデルオープンがあった2019年比実績でも2桁上回り、5ヶ月連続で統合後過去最高売上を記録。時計や宝飾、ハンドバッグに加え、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを中心に秋冬衣料や雑貨も好調に動き始めた。独自イベントも好調に推移し、売り上げを押し上げたという。
免税売上は6月の入国制限の緩和を受け前年実績を上回り、緩やかな回帰傾向を見せている。
■伊勢丹新宿店で注目されたアイテム:トッズのアイコンバッグ
8月は秋冬ファッションの立ち上がりということもあり、バッグから季節感を取り入れる方も多いかと思います。昨年の秋冬から本年の春夏も継続して「トッズ(TOD'S)」を代表するアイコンバッグ「T タイムレス ショッピング バッグ」と「APA T ペンダント バッグ」が人気を集めています。(伊勢丹新宿店 本館 ハンドバッグ バイヤー 髙山康平)
T タイムレス ショッピング バッグ
Image by: TOD'S
高島屋
高島屋の2022年8月度は全店が前年実績を上回り、国内百貨店子会社を含む全店実績は23.4%増となった。前年の緊急事態宣言に伴う売上減少の反動に加え、高額品が好調だったことが要因。紳士服や婦人服、呉服を含む衣料品のほか、雑貨や宝飾品、スポーツ、リビング、食料品などが前年実績を超えた。
■高島屋新宿店で注目されたアイテム:リヤドロ 動物シリーズが人気
コロナ禍で在宅時間をより充実したものとするために、ソファやダイニングテーブル、絨毯などを買い替える方が増えています。インテリアを楽しむものとして、スペインのラグジュアリーポーセリンアートブランド「リヤドロ」も人気で、8月度は昨年同月と比べて約5%増、3月から8月末までの期間で見ると昨年同期間比で約60%増です。「リヤドロ」と聞くと真っ先に思い浮かぶ、色とりどりの花や愛らしい少女を題材にしたものの他に、コードレスタイプのランプや動物シリーズが特に売れています。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
ラグジュアリーブランドや宝飾品などの好調持続により、大丸松坂屋百貨店合計で前年同月比で29.9%伸長。 店舗別では大丸神戸店が2019年実績を上回った。
松坂屋名古屋店では秋物衣料の滑り出しも好調。行動制限の無いお盆シーズンはスーツケースを持って店内を回遊される来店客も目立った。また、8月に開催した外商向けの総合催事では会場全体の売上が前年比40%以上となったという。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
■松坂屋名古屋店で注目されたアイテム:「赤福」など、帰省土産に和菓子が人気
お盆の帰省土産を購入されるお客様が多く、食品は全体で12.7%増、そのうち菓子全体では20.5%増となりました。特に和菓子の売上が好調で、帰省土産としての利用に加え、旅行で名古屋に来た観光客が地元ならではのお土産として「養老軒の大福」(前年同月比166%増)や「赤福」(同73%)、「桂新堂」(同50%増)をはじめとする東海エリアを代表するブランドが動きました。名古屋をはじめとした東海エリアは和菓子の老舗も多く、他にもういろなども人気でした。(松坂屋広報担当 松井みさき)
そごう・西武
そごう・西武では全店で22.5%増となり、3ヶ月連続で2桁成長を記録。西武池袋本店ではコロナ前の2019年同月比と同水準まで回復した。
プレステージブランドや高級雑貨が引き続き好調で、いずれも2019年実績を上回った。帰省や旅行など外出機会増加により、盛夏物だけではなく軽めの秋物といったアイテムも動き、衣料品トータルでも前比約25%増、2019年比では約9割まで復調した。
免税売上は前年同月比20%減だったが、免税購買客数では90%増と回復基調にある。
■西武池袋本店で注目されたアイテム:イージーオーダーを含むオーダースーツ
行動制限のない夏ということで、昨年までとは違いリアルでの出勤も増加し男性のビジネス関連アイテムが好調でした。特にオーダーを含むスーツ需要が好調で前年比約55%増と大きく伸長しました。3年ぶりにスーツを購入するというお客様も多くいらっしゃり、コロナ前と体形が変わったということでイージーオーダー含むオーダースーツでの購入をこの機会にご利用される方が今年は多く見られました。
またシャツは前年比約30%増、ネクタイは前年比約13%増とビジネス関連のアイテムは総じて好調。8月後半からは気温の低下もあり秋物をお求めになるお客様が増えました。(リーシング本部商品計画部 MD担当 車田裕樹)
松屋
銀座店では売上が前年に対して約1.5倍近い伸び率となった。主な要因となったのが、8月上旬のリニューアルで売場面積が2割拡大した化粧品売り場の好発進とラグジュアリーブランドや時計需要の継続。化粧品カテゴリーは前年比約54%増、ラグジュアリーブランドは同約53%増、時計では2倍の売上増となった。ラグジュアリーブランドは富裕層を中心に強いニーズがあり、9月以降もこの勢いが続くものと見込んでいる。
■松屋銀座で注目された売り場:リニューアルした化粧品売場 若者の来店や一部で行列も
松屋銀座では化粧品売場を改装・拡大し、8月5日から順に新ブランド7ショップ、リニューアルブランド6ショップをオープン。20~30代の若い世代のお客様が増え、特にオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーやディプティックなどのフレグランスゾーンでは連日行列ができるほどの人気です。カラーメイクゾーンも、若いカップルや男性客が買い物を楽しむ姿が増え、さらに毎月開催するメイクアップレッスンも好評で、リアル店舗ならではの体験価値向上が進んでいます。(松屋銀座 化粧品バイヤー 三原薫子)
拡張オープンした化粧品売場
Image by: 松屋銀座
阪急阪神百貨店
店舗所在都府県への緊急事態宣言の発出や、阪急・阪神両本店における新型コロナウイルス感染対策強化のための臨時休業があった前年からの反動もあり、売上高は4割増と大幅に伸長した。しかし7月以降の感染急拡大に伴い、来店客数は低水準で推移。お盆シーズンにはファミリー層や遠方からの来店もあったが、大阪で7月下旬から高齢者への外出自粛要請が出ていたこともあり、3世代での来店は少なかった。インバウンドを除く国内売上高の2019年対比は8%減と、先月に引き続き下回ったが、阪神梅田本店は同2%増と2019年実績を上回った。阪急うめだ本店では秋の新作として、「ヴァレクストラ(Valextra)」のイジィデや「デルヴォー(DELVAUX)」のブリヨン、「ディオール(DIOR)」のレディディオールなどの定番バッグが動いた。
■阪急うめだ本店で注目されたアイテム:PEANUTS関連グッズ 催事が好評
阪急百貨店が「PEANUTS」とコラボレーションした人気企画を8月10日から23日まで実施。「PEANUTS」とその作者であるシュルツ氏へ感謝や好きという気持ち、尊敬をこめて、とびっきりの時間を楽しんでほしいという想いから生まれた、阪急オリジナルデザインのアイテムが70ブランドからウェア、服飾雑貨、ライフスタイル雑貨まで多彩に紹介しました。
なかでも「ゴヤール」スペシャルマーカージュイベントが好評。スヌーピーの毎年変わるイラストを楽しみに来店され、以前購入されたお客様がそのバッグ(特に人気は「サンルイ」)を持ってご来場されることも。ゴヤールを持っていない方でもスヌーピーが好きなことから購入されることもあり、様々なお客様からの支持を得ています。
そのほか、服飾雑貨では「カシラ」のキャップやバケットハット、「ハンウェイ」の長傘などの雑貨を集積展開。様々なスペシャルアイテムはもちろんディスプレイやフォトスポットなどもありお買い物を楽しんでいただけました。(阪急うめだ本店 担当者)
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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