気になる化粧品成分に迫る好評の連載、第4回のテーマは「セラミド」です。敏感肌に必要なイメージがあるけれど、実は肌質や年齢に関係なく、重要な成分とか。そんなセラミドについて、花王の稲葉さやか研究員に教えてもらいました。
慶応義塾大学理工学部大学院卒業後、花王入社。スキンケア研究所において、「キュレル」のさまざまなスキンケアの処方開発を担当する。自身も揺らぎやすい肌に悩みながら、敏感肌やエイジングケア領域の研究に携わることで、「セラミド」の重要性を熟知するプロフェッショナル。
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敏感肌との関係は? 「セラミド」の働きをおさらい
FASHIONSNAP
「セラミド」って、敏感肌向きの成分というイメージがあります。
そもそもセラミドは、「肌荒れ」の研究から発見された成分なんです。1970年代に「洗剤による手荒れ」が社会問題化して、その原因がセラミドの不足にあることを、実は花王が突き止めたんですよ。
稲葉氏
FASHIONSNAP
そうだったんですね。やはり肌荒れとセラミドって関係しているのですか?
肌の最上層で、外部の刺激から肌を守っているのが「角層」です。角層では、角層細胞の隙間を「細胞間脂質」が満たしているんですね。レンガ塀にたとえると、レンガが角層細胞、レンガ同士の間を埋めるセメントが細胞間脂質にあたります。この細胞間脂質の半分以上を占める重要な脂質が「セラミド」なんです。
稲葉氏
【角層の細胞間脂質のイメージ】
細胞間脂質は、セラミドをはじめとする油の層と、水の層が交互に規則正しく重なる「ラメラ構造」を形成しているのが特長です。
稲葉氏
【細胞間脂質のラメラ構造のイメージ】
FASHIONSNAP
まるで、ミルフィーユみたいですね!
そうですね。油と水を抱えみながら、角層細胞の間を隙間なく埋めることで、強固な「バリア機能」を維持しています。反対にセラミドの量が減少して、ラメラ構造が乱れると、バリア機能の低下につながるんですね。
稲葉氏
FASHIONSNAP
レンガ塀に隙間ができちゃうイメージですね。外からの刺激にピリピリしそう!
その通りです。セラミドは「バリア機能」の要といえる成分なんですね。敏感肌の方は、セラミドの量が不足していたり、ラメラ構造が乱れているケースが少なくありません。
稲葉氏
人体に存在するセラミドは350種以上!
FASHIONSNAP
セラミドの量って、人によって違うんですか?
乾燥性敏感肌の方は健常肌の方に比べて、セラミドの総量が少ないことが分かっています。角層内に存在するセラミドは、実は350種類以上もあるんです。
稲葉氏
【代表的なセラミドの種類】
FASHIONSNAP
そんなに沢山あるんですね!
最近の研究では、セラミド種のバランスも重要なことが分かってきました。敏感肌では、特定の種類のセラミド量が少ない傾向にあります。
稲葉氏
【セラミドプロファイルの比較】
FASHIONSNAP
じゃあ、敏感肌には「少ないセラミド」を補えばいいということですか?
それも一理あるのですが、化粧品に配合されるセラミドは「入っていればいい」とも言い切れないんです。
稲葉氏
化粧品に配合されるセラミドにも種類がある
FASHIONSNAP
化粧品に配合される、美容成分のセラミドにも種類があるんですか?
現在化粧品に配合されているセラミドは、大きく分けて3種類あります。「天然セラミド」「ヒト型セラミド(合成セラミド)」「疑似セラミド(セラミド機能成分)」です。
稲葉氏
【化粧品に配合されているセラミドの種類と特徴】
化粧品に配合するためには、まず安定性に優れていることが重要です。花王が開発した擬似セラミド(セラミド機能成分)は、角層に浸透して、保湿バリア機能を補うことを確認しています。
稲葉氏
FASHIONSNAP
どんなセラミドが配合されているかは、外箱を見たら分かりますか?
外箱やボトルに「セラミド機能成分配合」「ヒト型セラミド配合」などと記されていることが、1つの目安になるでしょう。また、セラミドを配合した「化粧品」の場合、全成分表示には「セラミドEOP」「セラミドNS」など「セラミド○○」という形で記されます。一方で「医薬部外品」は、パッと見では分からないかもしれません。
稲葉氏
FASHIONSNAP
えっ、どうしてですか?
医薬部外品の全成分表示には、ルール上「セラミド」という言葉が使われないんです。難しい化学名で表示されるんですね。
稲葉氏
【医薬部外品におけるセラミドの全成分表示名称】
FASHIONSNAP
難しい! 見ただけじゃ絶対分かりません‼︎
理系の方でも、専門外だと分からないかもしれません(笑)。ですので、医薬部外品の場合は、先ほどお話しした「外箱に表示してある○○セラミド配合などの表記」が目安になるのと、公式で製品の特長を確認するのも1つの方法です。成分名をネットで検索する手もあります。
稲葉氏
どんなセラミドコスメを選ぶのが正解?
FASHIONSNAP
セラミド配合コスメの「選び方のコツ」を教えて下さい。
セラミドは、配合されていることに加え、「角層できちんとラメラ構造を再現する」ことも大切です。これは各製品の公式サイトなどで、成分の特徴やセラミドへのこだわりを確認して頂くといいと思います。
また、セラミドそのものではないけれど、「セラミドの産生を促す成分」もあります。花王の場合「ユーカリエキス」がそうですね。
稲葉氏
FASHIONSNAP
肌自らがセラミドを作り出す力を助けてくれそう。コスメを選ぶ時ってSNSの評価をチェックしがちだけど、公式で情報を得るのも大切なんですね。
そうですね。「セラミドに関する研究で学会発表をしているか」「皮膚科医と共同研究をしているか」などの情報も、製品の信用につながると思います。
稲葉氏
FASHIONSNAP
セラミドコスメは、やはり敏感肌や乾燥肌の人向きですか?
バリア機能の要となる成分ですから、乾燥肌の方や敏感肌の方に合っています。一方で、オイリー肌の人に必要ないかというと、そんなことはありません。過剰な皮脂により、バリア機能が乱れることもあるからです。オイリー肌の場合は、みずみずしい感触の化粧水などで、セラミドを補給してあげるといいでしょう。敏感肌の方は、乳液やクリームで、セラミドを補給しながら肌を保護するのがおすすめです。
稲葉氏
FASHIONSNAP
肌質に関係なく、セラミドケアって必要なんですね
アトピーに悩むお子さんなど、最近は年齢に関係なくバリア機能低下に悩む方が増えています。スキンケアはもちろん、ボディケアやヘアケアも含めて、生活の中にぜひ「セラミドケア」を取り入れて頂けたら嬉しいです。
稲葉氏
(編集:福崎明子)
日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、WEBなどで美容記事を執筆している。担当分野はスキンケア、メイク、ヘアケア、フレグランス、美容医療など幅広く、丹念な取材をもとにしたわかりやすい記事に定評がある。温泉や銭湯をこよなく愛する入浴Lover。
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