CFCL クリエイティブディレクター高橋悠介
Image by: Koji Hirano(FASHIONSNAP)
高橋悠介が手掛ける「シーエフシーエル(CFCL)」の成長が目覚ましい。立ち上げから約3年半にしてパリ・ファッションウィーク(通称パリコレ)の公式ショースケジュール入りを果たし、初日の2月26日にランウェイショーを開催した。同月、自社生産拠点「CFCLニッティングラボ(CFCL Knitting Lab.)」の開設、国内百貨店での大型ポップアップ、またオペラ「魔笛」の衣裳デザインなど、多様な活動で認知や顧客層を拡大。売上も昨年2023年8月期の小売価格ベースで20億円超、今年度は30億円超を見込み、着実に実績を積み上げている。
ニットに特化することの強み
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2020年秋にデビューしたCFCLのコンセプトは、ブランド名が持つ意味「Clothing For Contemporary Life(=現代生活のための衣服)」。最も特徴的なのは、ニットに特化したブランドという点だろう。様々な性別や体型を受け入れるニットの特性を「器=ware」と捉え、インクルーシブなデザインが現代のニーズに沿う。
また、3Dコンピューター・ニッティングの技術や、ペットボトル由来の再生ポリエステルを使用することで、廃棄を減らし環境に配慮したサステナブルな服作りを実現。2022年7月には、国際認証制度「B Corp(Benefit Corporation)」において、日本のアパレルブランドでは初めて認証を得た。
パリコレで初の公式ショー
海外展開の拡大を視野に入れた時、最初の目標となったのがパリ・ファッションウィークの公式ショースケジュールに入ること。公式参加する約100ブランドのうち、ショー枠は約70ブランドで、残り約30ブランドはプレゼンテーション枠。通常はプレゼンテーション枠からスタートし、数シーズンを経て仏オートクチュール・プレタポルテ連合協会(Fédération de la Haute Couture et de la Mode)の承認を得ることで、初めて公式ショーとしてスケジュールに載ることができる。
CFCLがパリ・ファッションウィークに初参加し、プレゼンテーションを開催したのは2022年3月。以来4シーズンにわたり、プレゼンテーション枠で新作コレクションを発表してきた。そして昨年、協会の承認を得て、ショー枠にステップアップ。今回のVOL.8コレクションで、初めて正式にランウェイショーの開催に至った。
「やはりパリがファッション界において世界最大のプラットフォーム。ここで発表する必要があるという強い気持ちで、協会にもアプローチしてきました。なによりブランドの強みやオリジナリティ、継続性が必要。前職(イッセイ ミヤケ メンのデザイナー)ではパリの経験があったので、ようやくここまで来れたという気持ちですが、大事なのはここから。全力で挑んでいきたいと思います」(高橋)
ショー会場はパリ16区の近代美術館「パレ・ド・トーキョー」。シンプルな直線ランウェイを設け、「Knit-ware」に加えた今シーズンのテーマは「Cadence(韻律)」。抑揚のある現代生活のための衣服として、控えめなエレガンスをはらむミニマルで実用的なデザインと、ハイクオリティでエキサイティングなデザインといった、2つの軸でコレクションを構成した。
ディテールを削ぎ落としたジャケットやコクーンシルエットのコートにはじまり、ホールガーメントの特性を活かした立体的なドレスやセットアップを提案。今回新たにシルクやカシミヤといったプレシャスな天然素材を取り入れた。終盤で目を引いたのは、コンピュータープログラミングと手仕事を掛け合わせた「ENCHANT」シリーズ。円形スパンコールが刺繍されたドレスやジャケットが、日常着としてのニットをラグジュアリーなドレスウェアに引き上げた。
近年、ブランドではトータルルックを完成させる帽子やバッグといったアクセサリーを拡充している。今シーズンは、新たにストレッチニット製のブーツや、「フォーナインズ(999.9)」とのコラボレーションによるアイウェア(※4月頭発売)が登場。ショーのフィナーレは拍手に包まれ、CFCLがファッションウィーク初日のハイライトのひとつとなった。
「CFCLニッティングラボ」開設
CFCLのさらなる成長に向けて、課題に掲げるのは生産面だ。その起点となりうる施設が、2月に東京都内で始動した。「CFCLニッティングラボ」という名の通り、実験的なサンプル制作や研究を行う場としている。2月某日に施設を取材した。
ニットのプログラミングとホールガーメント機を操るのは、ニットを扱って47年という熟練の職人。実際にサンプル制作を行なっている様子を見ると、機器の設定や糸の微調整など、人の手と技術が不可欠ということがわかる。ドレス1着の編み立ては約2時間(※デザインによっては10時間程度かかるものも)を要し、その後の糸の後処理やセット(編み地を安定させる工程)といった作業も手作業で行われていた。
こういったサンプル制作による取引工場の負担を軽減し、生産キャパシティの強化を図ることもラボの役割。生産を止めることなく、新たなアイデアや異なる糸を使った研究と開発によって、クリエイションの可能性を広げていく。
「スピード感を持って成長し続けるために、将来的に自社で工場を持つことも視野に入れる必要がある。例えば少量のオーダーにも対応することができれば、新しいファッションの形が示せるのではないかと考えています」(高橋)
売上は過去2年で8倍に
直営店については、2022年秋から出店を開始し、東京・神宮前「GYRE」3階の「CFCL OMOTESANDO」を皮切りに、「東京ミッドタウン八重洲」1階の「CFCL YAESU」、「東京ミッドタウン」ガレリア2階の期間限定店舗「CFCL ROPPONGI」、そして大阪の「阪急メンズ大阪」5階の「CFCL HANKYU MEN'S OSAKA」の4店舗と公式オンラインストアの体制。今後の計画として、来年4店舗の直営店出店を予定しており、採用も強化していく。
卸の取引先としては国内が約50社、海外が約50社。昨年度の直営店を含めた20億円超(小売価格ベース)の売上高は、過去2年でおよそ8倍となった。海外の売上の割合は卸取引の50%超となり、特に欧州とアジアが伸びているという。
パリでCFCLのショーが行われた翌々日、東京では伊勢丹新宿店本館1階「ザ・ステージ」で初の大型ポップアップを開催。3月13日からは同店のメンズ館6階に会場を移し、ユニセックスアイテムを展開している。
今後は日本国内だけではなく海外でも大型ポップアップを開催していきたい考で、今年4月には韓国で大型ポップアップが予定されている。パリ・ファッションウィークの公式スケジュール入りを機に、国内外の展開を加速させ、グローバルブランドとしての確立を目指していく。
「CFCLを立ち上げてから、ファッションが与える影響、動かしていく力を目の当たりにしてきました。世界を意識すると、ものに対する付加価値や、より一層クリエイションに力を入れる必要性を感じています。熱意のある人たちと手を組んで、新しいことにチャレンジし続けていきたい」(高橋)
■CFCL:公式サイト
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