コム デ ギャルソン オム プリュス 2023年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Mika Inoue)
パリで開催された2023年春夏メンズファッションウィーク、注目トピックのひとつがコム デ ギャルソン傘下のブランドの復帰だった。2020年3月のウィメンズコレクションを最後にパリの公式スケジュールから外れ、パンデミック後は東京で小規模なフロアショーを行っていたため、本格的なランウェイショー自体も2年3ヵ月ぶり。会場は、以前に増して熱気に包まれていた。
「コム デ ギャルソン オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)」2023年春夏コレクションのショーは6月24日、パリ2区カプシーヌ通り沿いの建物内で開催された。招待状は、以前と同じくシンプルな白い封筒にブランド名と場所が書かれた紙一枚。会場には「くの字」に曲がった黒いランウェイが設けられていた。
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不気味なマスクとミステリアスなジャケット
ファーストルックから異様な雰囲気を感じたのは、映画「サイコ」のテーマ曲と、モデルの顔の一部を覆うマスクのせいだろう。目を見開いていたり、笑っていたり、狐やうさぎといった動物など、100年以上前のアンティークマスクも含まれているという。
スカートのように裾が広がったテーラードジャケットや、膨らんだパンツ。そしてマルチカラーのダイヤチェックやドット、ストライプ柄が目に留まると、道化師の装いを想像させた。何人かのモデルは、すれ違う時に細いランウェイを降りたり登ったり。その度に裾がフープのごとく弾む。コミカルなようでいて、どこかダークな不気味さが漂っている。
コム デ ギャルソン オム プリュスの定番であるジャケットが全てのルックで着用されており、前半はブラックがベースだがよく見るとチェックやカモ柄が織りで表現されている。中盤はホワイトの縮絨やチェックのパッチワークなどポップな表情。裾が3重になっていたり袖が2本ずつ付いていたり、立体的なフォルムやカットワークと相まって、トリックのような複雑さを極めていく。
印象的だったのが、再びブラックで構成されたラストパート。スパングルを散りばめたフォーマルなジャケットとフェミニンなフレアパンツが、ミステリアスなムードを放った。
別世界に導く道化師の存在
コレクションのタイトルは「ANOTHER KIND OF PUNK」。デザイナーの川久保玲は、コレクションノートに「中世における宮廷道化師は癒しを与える存在だけに限らず主君に別世界や斬新な考え方をアドバイスする役を持つ存在でもあった事に興味を持ちました」と記している。時代の狭間にある今、コロナ後の新たな世界とそれを導く存在は、誰もが心の底で求めているものなのかもしれない。最後に会場を包んだ大きな拍手が、現代の道化師たちを歓迎しているようだった。
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