9月18日、ダニエル・リー(Daniel Lee)が率いる新生「バーバリー(Burberry)」の2度目となる2024年春夏ランウェイショーが行われた。今シーズンは本拠地ロンドンでのプロモーションに力を入れており、その戦略はショー当日よりずっと前から始まっていた。新生バーバリーを象徴する「ナイトブルー」が、街中に展開されていたのだ。
人気カフェをジャック
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そのひとつが、ロンドン北部のタフネル・パークにある英国カフェ「ノーマンズ カフェ(Norman's Cafe)」のテイクオーバーだ。イングリッシュ・ブレックファストなど伝統的な英国料理をモダンにアップデートし人気を博している同店。いつもは赤い店内が、9月11日から始まったキャンペーンのためにブルーのバーバリーチェックに包まれた。
そして、このコラボレーションは店の外にも飛び出し、ノーマンズによるフードトラックがストランドとデューク・オブ・ヨーク広場にも顔を出した。
駅名が「バーバリー ストリート」に
ロンドン・ファッションウィークが始まった9月15日には、中心部の駅「ボンド・ストリート」が、「バーバリー ストリート」に改名された。駅名を示すサインがすべて変わるほど、ブランドが公共交通機関をジャックするのは極めて異例。観光客で賑わう駅の変貌は混乱を招いたが、もちろん予想されたことだ。近年失われつつあった「ロンドン=ファッションの街」というイメージを、業界だけでなくツーリストにまでアピールする、市政と連携した大胆な仕掛けである。
つまり、新生バーバリーはロンドン・ファッションウィーク、ひいてはロンドン市のリブートを託されたわけで、それほどファッション産業が社会全体に与える影響力が大きくなったことを示唆するようだ。
ショー会場は公園 客席はベンチ
ハイバリーパークの一角に出現した、巨大なグリーンチェックのタープ。そこがバーバリーのショー会場だった。緑で覆われた床にはゲストが座るために公園のベンチが設置され、その上に置かれた水筒やブランケットはのどかなピクニックを連想させる。
会場には、デーモン・アルバーン(Damon Albarn)やスケプタ(Skepta)、ウィズキッド(Wizkid)、バーナ・ボーイ(Burna Boy)、カノ(Kano)、シャイガール(Shygirl)、ニア・アーカイヴス(Nia Archives)など、ロンドンのミュージシャンや俳優を中心とした、豪華セレブリティが集結。バーバリーのアンバサダーであるソン・フンミン(孫 興民)やタイの俳優ブライトことワチラウィット・チワアリー(Vachirawit Chiva-aree)もフォトコールに応じた。
トレンチコートの新鮮なシルエット
犬の鳴き声が響き、ブランドを象徴するトレンチコートのルックでショーは幕を開けた。バッグ以外は黒一色のコーディネートは、前回のファーストコレクションで見せたオーバーサイズやカラフルさとは異なる方向性を強く打ち出した。簡素化されたトレンチコートのディテールでは直線的なラインが強調され、ヒップラインまで下がったベルトが新鮮なプロポーションを生み出している。ダニエル・リーらしい構築的ソリッドさが実現され、ブランドから課された"トレンチコート"という命題に独自の解答を見い出したようだ。
トレンチコートのバリエーションは7ルック目まで続き、その後も様々なアイテムにディテールがアレンジされた。
プリントの多用は、ショーのハイライトの一つだろう。クリップやチェーン、ブルーの苺、チェリーといったスカーフ柄は、コート、シャツ、ドレスなどさまざまなアイテムに採用され、コレクションに躍動感を加えていた。レース素材などによる控えめな露出は、禁欲的でクリーンな印象のなかに官能性と深みを与える。
新生バーバリーのシンボルである大きな斜めのチェック柄は今回も登場したが、控えな表現にとどまった。最後のルックでは、巨大な「馬上の騎士」バックルのベルトを身につけた上半身裸のモデルが闊歩し、全55体によるフィナーレを迎えた。
新たな方向性を見せたバーバリー
DJのベンジー B(Benji B)がディレクションに関わるショー音楽では、前回のブリアル(Burial)に続き、今回はロンドン出身のディーン・ブラント(Dean Blunt)がフィーチャーされた。あらゆる角度から"ブリティッシュネス(英国らしさ)"を掘り下げ、その再構築、再提案を試みるバーバリー。前シーズンのチェック柄や動物の被り物といったスペクタクルを避け、新しい形と引き出しを見せた今シーズンは、ブランドの今後の方向性を決める重要なコレクションとなった。
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