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2006年のブランドデビューから17年。2020年には「第38回 毎日ファッション大賞」を受賞するなど存在感を強めている「ビューティフルピープル(beautiful people)」が、3月に「ジーユー(GU)」との初のコラボレーションコレクションを発売する。「高度なクラフトマンシップ」「上質なテキスタイル」を掲げて活動するビューティフルピープルが、低価格帯とも言えるジーユーとのコラボに至った真意とは。ビューティフルピープルのデザイナーを務める熊切秀典に話を聞いた。
■GU×beautiful people
「ジーユー」が、「ビューティフルピープル」との初のコラボレーションコレクションを3月3日に発売。全国のジーユーの店舗および公式オンラインストアで取り扱う。>> 全アイテムはこちら
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“相反するブランド“とのコラボに至った真意
ー今回のコラボはジーユー側からオファーがあったのでしょうか。
いえ、今回は我々からお話をさせていただきました。コロナ禍だったこともあり、自分自身の視野が狭くなってしまっている感覚があって。普段とは違った環境にチャレンジしたかったのと、コロナで外出できない方々に明るい話題を提供できればという2つの考えでオファーを決断しました。1年半ほど前にコラボさせていただくことは決まっていたのですが、コロナの影響もあったりしてこのタイミングでの発売になりました。
ー上質なモノづくりを追求するビューティフルピープルと、手に取りやすい価格帯で幅広い層に商品を届けるジーユー。一見相反するブランドのようにも思えますが、どういったところに可能性を感じてコラボに至ったのでしょうか。
これまで「相反するものを乗り越える」というのがブランドの課題だと感じていました。価格などである種対極にいるブランド同士がタッグを組むことで、相乗効果を発揮できるのではないかと考えました。
ー今回のコレクションでは、どのような箇所にご自身の考えを反映させたのでしょうか。
コラボさせていただくにあたって、世間一般に浸透しているジーユーさんのパブリックイメージを逆手にとったことをやりたいなと考えました。ジーユーさんの服では価格の都合もあり、使用できる素材や仕様に制限があるのですが、それなら敢えてその制約を活かした軽量感のあるコレクションにしようと。ネガティブに捉えられがちなことをポジティブに置き換えて服作りに取り組みましたね。
ービューティフルピープルで上質なモノづくりを追求する熊切さんにとって「上質と相反する要素」とは?
色々な言葉があると思いますが、「気を遣わない」という表現がしっくりくると考えています。洗濯や手入れの方法など、上質なものはやはり気を遣う部分が多い。その反対のものはカジュアルな気持ちで、良い意味で雑に着られるというのが魅力だと思いますね。そういったところまで意識して今回のコラボコレクションは製作できたかなと。ただ、それが本当の答えなのかはまだ分かっていないので、今後もデザイナーとして活動する中で探していけたらと思っています。
ー今回ジーユーをコラボ先に選んだ理由は?
「相反するものを乗り越える」という意味では、ジーユーが最も価格帯が低いイメージがあると考えたのが一つの理由です。でも、一番は僕が「自由」という言葉が好きだからですね。人間、やっぱりいつでも自由でありたいじゃないですか。ジーユーというブランド名、僕はすごく好きですね。
テーマは「青春」、唯一無二の“思い出”を着想源に
ーデザインプロセスはインラインのビューティフルピープルと同じでしたか?
そうですね。服自体の作り方は普段のビューティフルピープルと全く一緒で、生産国と工場だけがジーユーさんの仕様になっています。パターンの起こし方やデザインの仕方などは変わっていないので、インラインで今回のコレクションを作っていた可能性もありましたね。
ー今回のコラボコレクションのテーマは?
テーマは「青春」です。青春時代の甘い思い出や苦い経験、そういったものを全部ひっくるめて「若さ」を表現しました。
ー着想源は熊切さんご自身の青春時代ですか?
もちろんそれもありますが、ブランドメンバーの学生時代の写真を参考にしたりとか、「個人の思い出」などから着想を得てデザインしました。世の中には良くも悪くも「モノマネ」が溢れてしまっているじゃないですか。そうならないために、ありきたりなインスピレーションではなく唯一無二のものを取り入れるしかないなと。「みんなの記憶の中にありながらどこにもないモノを作りたい」という考えもあって、「青春」をテーマに選びました。
コラボコレクションに込めた「考える」ことの重要性
ーコレクションに熊切さんが込めたメッセージとは?
「考える」ことですね。服を着るときだけでなく、何をする上でも考えることは非常に重要な行為だと思っています。例えば社会のルールやマナーという意味のコンプライアンスという言葉がありますが、大切なのは「コンプライアンスだから思考停止で受け入れます」ということではなく「こうなるためには何が必要だからコンプライアンスを遵守します」というように「自分の頭で考える」こと。先ほど話した服の着方の話もそうですし、日常生活や環境問題についてもそうです。何事も自分で考えて毎日を過ごしてほしいという想いを服に込めました。
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ー今回はジーユーで通常展開している男女ごとの規格ではなく、ユニセックスのサイズ展開なんですね。
サイズ選びについても着る人に考えて選んでほしいなと。「自分が普段Mを着ているからMを選びます」ということではなく、例えばトップスはXS、パンツはXLでも良いと思うんです。服選びはいつだって「自由」なので、自分の着たいサイズ感だったり、イメージするスタイルに合わせて選んでほしいですね。もちろん考えるということはすごく労力を必要とする行為ではありますが、そこを越えた先に新しい世界が広がってくると思います。
ージーユーは顧客層が幅広いですが、デザインで注力したポイントを教えてください。
今回のコレクションでは、他人とアイテムが被っても問題ないようにリバーシブルで着られるTシャツだったり、着方で表情が変わるアイテムを多く展開しました。ネガティブだったりコンプレックスに感じることも、ちょっとした工夫やアイデアでポジティブな要素に変えることができる。僕はこういった部分がデザインが持つ可能性だと考えています。
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ージーユーとのコラボは、より幅広い層にビューティフルピープルのクリエイションを届ける機会になりそうです。
そうですね。こういったインタビューなどを通して「こんな考え方で服を作っている人もいるんだ」と知ってもらえるだけでも嬉しいです。また、今回は特に自分たちの服が若い世代にも届くといいなと思って作りました。これまでビューティフルピープルを知らなかったり、予算の都合で買えなかったりした方々にもアイテムを体験してもらう機会になれば嬉しいです。
ー今回のコラボを通して学んだことは?
ビューティフルピープルはマーケティングをほとんどしないブランドなので、これまで市場のことについては分かっていなかった部分が大きかったんです。何がトレンドなのかは街に出れば分かりますが、それが具体的なデータとしてどのように表れているのかは知らなかった。今回ジーユーさんと取り組みさせていただいたことで、初めて本格的なマーケティングを勉強させてもらえたと思っています。そういった意味でも、今回のコラボはブランドの成長に繋がる、有意義な取り組みでしたね。
ーコラボ継続の予定は?
そこは現在「考え中」。今回展開しているソックスに記載したワードと同じです(笑)。
ーブランドのデビューから17年。これまでを振り返って、どのような心境でしょうか。
デビュー当時から日々チャレンジを続けてきたら現在に至っていた感じです。ここまですごく早かったような、そうでもなかったような不思議な感覚ですね。同級生と「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」で働いていた時の先輩(パタンナーの戸田昌良、セールスの若林祐介、企画生産の米タミオ)と一緒にブランドを立ち上げて、メンバーが変わらずにここまできたのでいつまでも自分が若い時のままのような感覚でいるんですよ。
ー確かに熊切さんは若々しい印象です。
服作りにとっては良い方に働いていると思いますね。ただ、いまだにみんなでマクドナルドに行ってナゲットをシェアしたりしているので、そういったところは良くないなと思っています(笑)。
ー3年後にはブランド創業20周年を迎えます。ブランドとしての次のステップは?
具体的に決まっていることはないのですが、これまでとは違った方法で物作りを伝える方法がないか模索しています。コンセプトやバックグラウンドなどを知ってもらった上で服を紹介した方が、よりアイテムの魅力を届けられるのではないかとはずっと思っていて。形式はショーやインスタレーションかもしれないし、そういった決まりきった形ではないかもしれないですが、どうしたらより多くの人に「ただ服を作っているだけではない」という部分を知ってもらえるかを考えてブランドを続けていきたいですね。
(聞き手:村田太一)
■熊切秀典 Hidenori Kumakiri
1974年神奈川県生まれ。文化服装学院アパレル技術科を卒業した後、「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」のパタンナーとして経験を積み、2006年にビューティフルピープルを立ち上げる。ビューティフルピープルでは「Everything is beautiful.」をコンセプトに掲げクオリティにこだわったモノづくりを続けており、そのクリエイションは2020年に「第38回 毎日ファッション大賞」を受賞するなど高い評価を得ている。
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