水没したランウェイ、頭上からは自然の脅威。裾を濡らしながら前進するモデルが水を蹴る。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が手掛ける「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が行ったショーは、いつか目の当たりにするかもしれない人と地球を舞台にしたスペクタクルだった。
【全ルックを見る】バレンシアガ 20年ウィンターコレクション
20年ウィンターコレクションの会場に選ばれたのは、前回と同じくパリ郊外の巨大なスタジオ。足を踏み入れると暗闇に冷えた空気が滞留しているのがわかり、静寂をより一層シリアスに感じさせる。
一体目のモデルにスポットライトが当たると、広いステージの一面に水が張られ、段違いの下方にある席は水没していることに気づく。天井には床と同じ大きさのスクリーンが設置されており、霧や雲、雷、鳥の大群、そして荒れた海や激しい炎といった臨場感のある映像が移り変わっていく。

ファーストルックはベルベットのマキシドレス。極めてシンプルな作りだが、上質な仕立てが彫刻的なシルエットを際立たせていた。続くロングコートやフード付きのケープなど、前半はほとんどが黒一色で、厳格な祭服や礼服を想像させる。何人かの男性モデルの目は赤や黒に染まっていて、まるで悪魔のような形相。暗澹たる雰囲気を煽る、重々しい音楽が鳴り響いた。
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徐々に棘や安全ピンといったパンクに通じる装飾と、極端なパゴダショルダーやアメフトの装具のようなボリュームが目立ち始める。モトクロスのレーシングスーツも目に止まった。ほとんどがマキシ丈か先の尖ったブーツで肌を隠し、全身をプロテクトしているように見える。荒廃した世界をサバイブする屈強さを誇張するかのようなディテールが、パワフルなプロポーションに昇華する。




































































中盤に差し掛かると、黒一色の中に鮮やかな赤や青といった色が混じる。ミモザやスミレの花柄、ナイトガウンのようなキルティングコートが差し込まれると、観客に一瞬の安息を与えてくれた。ランジェリーを想起させるレースアップシューズやリストレット付きのボンデ―ジウォレットは、フェティッシュなオブジェクトとして機能している。
























ムードを破ったのは4色のサッカーユニフォームだ。架空のチームロゴを配したルーズなシルエットの上下とサッカーシューズ、手にはランチボックス型のクラッチバッグ。他にもUSBコードで髪をまとめるなど、デムナらしいリアリティがスタイリングに現れている。












気が付くと天井がかなり降下し、頭上近くまで迫っていた。スクリーンの映像は街や都市に移り変わり、最後に映し出されたのは地球。水面に映る青い星の上を、ガウンからシューズまでストレッチ素材のオールインワンドレスを着たモデルが歩く様が、序盤の重々しさを払拭する。

バレンシアガが用意した没入型の劇的な演出は、決して異次元ではない。自然の美しさの影に潜む気候変動や環境汚染といった現在進行形のリアル、もしくは我々の生きる先にある世界を投影していたように思える。制約と解放、ミニマリズムとプロテクション。一体一体がミクロの問題提起とするならば、ラストの地球と人の対比はマクロの視点であり、ファッションと人と地球の関係と見つめるべき本質を示唆しているようだ。新型コロナウイルスで揺れる今だからこそ、より深く考えさせられるショーだった。
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