感性を学習する人工知能「SENSY」から見えるファッションの未来とは?

「SENSY」の代表取締役CEO、渡辺祐樹氏
Image by: FASHIONSNAP
2018.08.12 Sun. - 21:00 JST

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感性を学習する人工知能「SENSY」から見えるファッションの未来とは?

「SENSY」の代表取締役CEO、渡辺祐樹氏
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2018.08.12 Sun. - 21:00 JST
近年テクノロジーとの関係が密接になってきたファッション業界で、AI(人工知能)の可能性はどこまで広がりを見せるのだろうか。感性を学習するAIを開発する「センシー(SENSY)」の渡辺祐樹代表取締役CEOに、AIとファッションの関係性について聞いた。
SENSYとは
パーソナル人工知能の「SENSY」は、ユーザーの行動やチャットといったコミュニケーション、画像などの情報からそれぞれの人の感性(センス)を理解するのが特徴。同社では「SENSY」の技術を生かし、クローゼットの服を管理しコーディネートを提案するアプリケーションの「SENSY CLOSET」をはじめ、メーカーや小売などの企業向けにビジネスの効率化や最適化をサポートするサービスを開発している。
感性を学習するAIとは?
ー感性を学習するAIの「SENSY」はどういった技術なのでしょう?
感性を科学的に解析する感性工学という学問があるのですが、そこにディープラーニング(深層学習)を応用しているのが「SENSY」のコアとなる技術です。
感性といっても様々なものがありますが、私たちは特に人の購買欲求における理由の解析を行なっています。またライフスタイルにおける人々の感性の分析も行なっていて、ビジネスや人々の生活を変えるようなアプリケーションを開発しています。
ーどのようにして人の感性をAIに学習させ、活用しているのでしょうか?
まずAIに学習させるためには多様なデータを使う必要があります。服を1着買うだけでもたくさんの情報があると思います。例えば、服の種類やブランド、どの店舗で買ったかなどの地理的情報、買った日の天気、世の中のトレンドなど膨大な情報があります。その情報の中から、AIを使ってなぜその人が、その場所でその商品を買ったのかという関係性を導いています。
ー「SENSY」を使ったサービスとして、持っている服やコーディネートをスマホで管理するアプリ「SENSY CLOSET」を開発されていますね。このアプリでのAIの役割とは?
まず「SENSY CLOSET」では、自分の持っているアイテムを撮影してもらい、写真をアプリにアップロードしてもらいます。アップされた服の写真に画像解析をかけて、色や柄、着回しのパターンや着こなしといった組み合わせなどを抽出して、その人のファッションセンスや好みを紐解くのにAIを活用しています。そうすることで、持っている服と世の中で売られている服の2つを掛け合わせて、新しいコーディネートを提案することができます。AIを使うことのメリットは、新しい着こなしや商品の発見にあると考えていて、コーディネートに困っている人や服を選ぶのに時間をかけたくないという人をサポートできます。

アパレル産業におけるAIの役割
ー企業向けの「SENSY MD」や「SENSY Marketing Brain」も展開していますね。
「SENSY MD」は需要予測サービスです。顧客や商品、購買データなどの情報をAIに取り込み、売り上げなどを予測し、無駄がなく最適な仕入れを提案しています。
「SENSY Marketing Brain」では、マーケティングや広告の費用対効果を上げることを目的としています。例えば従来のダイレクトメールは同じ内容のものを大量に印刷して同じタイミングで送るということをしていました。この方法だと、普段スーツを着ない人に、スーツの情報を送るといった無駄が出てきます。そこでAIを使って顧客のデータを解析することで、それぞれの人に合ったタイミングや内容のダイレクトメールを送ることが可能になり、ダイレクトメール1通当たりの効果を高め、売り上げの増加に繋げようというものです。
ーアパレル業界でAIを活用する企業は増えてきている?
今年から増えてきていると感じています。「SESNY」では現在、アパレル企業のトップ50社のうち25%ほどの企業とお付き合いをさせてもらっています。他社で成果が出るなら、チャレンジしてみようという企業が急速に増えてきたのではないかと分析しています。
アパレルは感覚的なコンテンツなので、商品の企画や生産などが経験や感覚で動いていることもあると思います。そこで、感性をデジタル化したAIを活用することで、マーケティングや商品企画が変わり、ブランド戦略から接客までをカバーできると考えています。
ー接客にAIを活用するとは?
ウェブ上の接客だと推薦機能やチャットボットなどがありますが、基本的には店舗に行く動機付けや、店舗を訪れたお客様が適切な商品を手にできることを想定しています。例えば、普段は行かない店に自分が探しているものが置いてあったという経験がある人も多いのではないでしょうか。そういった店舗とのマッチングが上手くできれば、人と服の出会いを生み出すことができ、ファッションがより楽しくなっていくと考えています。

デザイン分野への進出
ービジネス面以外に、デザインの分野でAIは近い将来どのように活用されるのでしょうか?
現在AIが、「0」から「1」を生むデザイナーのようなクリエイティブなものを作るのは難しいです。しかし、商品企画やプロデュースは近い将来、実現可能だと思います。既にAIがマーケットのニーズを踏まえてデザインのテイストや素材、色、柄の組み合わせを企画書にして、その企画書をもとにデザイナーやプロデューサーが商品を作るという実験をしている企業もあり、ここ数年で実用化されそうです。
ーアパレルの業種ではAIに仕事を奪われることを危惧する声もあります。
AIによって仕事が無くなるのではなく、働き方が変化すると考えています。MDだとAIによって、従来の業務をこれまでできなかったレベルに引き上げて、効率化を図ることが可能になります。例えば、これまでは各商品について、どういった人が買いに来るのかを細かく予測するのが困難でした。そういった予測をAIがすることで、必要のない仕事というのが出てくると同時に、AIが理解できないことを補完するための新しい仕事が出てくると思います。
AIは継続的に学習をしていくので、予測の精度を上げるためにどういったデータが必要かを考えたり、AIが出してきた数字を鵜呑みにするのではなく、解釈して最終的に調整するのには人間の力が必要です。データの取り方や使い方が変わるので、今後いかにAIを使いこなすかという方向にシフトし、人間はより頭を使う業務が求められる時代になっていくと予想しています。
ー今後のファッションとAIの関係はどう変化していくのでしょうか?
業界を超えた連携が重要になってくるのではないでしょうか。ファッションだけを見るのではなく、住んでいる家やインテリア、コスメ、よく行くレストランなどからライフスタイルを分析して、それぞれの人に合った服を提案するといったことが可能になるはずです。例えばライフスタイルのデータに旅行の情報が入ってくると、その人のライフスタイルと旅先に合わせたファッションの提案が可能になるなど。AIを使ってライフスタイルを分析することで新しく服を買うというニーズも生まれ、業界の活性化にも繋がっていくと思います。
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