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ファッションとメイクの密接な関係。それが如実にわかるファッションショーのバックステージをレポート。2025年春夏コレクションを発表したファッションブランドのショーの裏側で、メイクアップ、ヘアメイクを手掛けたアーティストたちに、見どころやアプローチについて聞いてみた。第5回は「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」。「M·A·C(メイクアップ アート コスメティックス)」シニアアーティストの池田ハリス留美子氏にインタビュー。
■池田ハリス留美子
1998年にキャリアをスタートし、化粧品メーカーでの経験を経て2002年にM·A·Cに入社。表参道ヒルズ店で店長を務めた後、2007年に渡米しメイクアップアーティストKABUKIに師事。2009年からはNYのM·A·C PRO SHOW ROOMで活動。2014年に日本のM·A·Cシニアアーティストに就任。NY、パリ、ミラノなど世界のファッションシーンで活動し、個々の魅力を引き出すメイクを追求している。
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⎯⎯ 今回のメイクアップのテーマやイメージは何でしょうか?
デザイナーの吉田さん(吉田圭佑)がつくるケイスケヨシダの人物像はそのままに、“ストイックな洗練”を意識して表現しました。厳格でクラッシー(上品)な雰囲気をまとっているけれど、ゴシックなムードや怖さはなく、モデルさんが元々持つ表情を生かしたメイクアップを施しました。
⎯⎯ “厳格で洗練された雰囲気”を表現するために重視したことはありますか?
重視したのは肌で、メイクアップをデザインする時に最初に決めたのも肌です。肌はメイクアップのキャンバスとなる要の部分であるため、ベースメイクは元よりスキンケアからテーマを落とし込みました。素肌に少し軽やかな淡さを与えた“ペールスキン”を意識し、質感を整えることで厳格さを表現しました。
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前回に続き、ランウェイを歩くモデルさんの年齢や性別に幅があるので、スキンケアは水分量をポイントにふっくら感とハリを与えながら、ベースメイクが密着するように油分を抑えました。ファンデーションやコンシーラー、パウダーは、色選びから置き方、付け方、ぼかし方や伸ばし方を1人ひとりカスタマイズしながら塗布することで、個人の素肌をいかしたベストなペールスキンを作りました。
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また、今回は大半のモデルさんがアイウェアを身につけるため、アイメイクはほとんど何もしていません。アイウェアの上に覗くまゆは1mmのアイブロウペンシルで毛を書き足す程度に仕上げています。
⎯⎯ 赤いリップが特徴的なルックがいくつか登場しました。使用したカラーやポイントを教えてください。
決めたのはスタイリストのLéopold Duchemin氏なのですが、基本的にモデルが着用するアイテムに合わせて決定されています。リップスティックはM·A·Cの「マキシマル スリーク サテン リップスティック」(2024年10月4日発売)と「マキシマル シルキー マット リップスティック」を使っていて、赤は2色使用しています。鮮やかな「ロシアン レッド」は4人、ダークな「デュボネ」は2人につけました。リップの上からグロスを重ねることで、さらにドラマティックな雰囲気を演出しています。
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そのほかのモデルさんたちは唇をコンシーラーでフラットにした後、ヌーディな白みピンクベージュの「クリーム カップ」というカラーをぼかしながら、ごく自然に見えるようにのせました。
⎯⎯ 2024年秋冬コレクションでも池田さんがメイクアップを務めていましたが、前回のメイクテーマは“素材活かし”でした。今回も“素材を活かす”という点を踏襲してメイクを構築していたように思います。
ここ数年の東京のショーでは、リアルな姿やリアルな気持ちを映し出すものが非常に多いと感じています。その中で私は“内面の表情をいかにメイクに映し出すか”ということに重きを置き、基本的なテーマにしているため、前回と同じように根本は“自然な雰囲気”で、肌の質感を重視していることは変わっていないと思います。
変えた点で言えば、今シーズンのケイスケヨシダは、品がよく動きがあるシルキーな質感のアイテムが中心的で、春夏ならではのワクワク感があるように感じたため、その春夏らしい軽やかさをメイクアップにも取り入れました。前回はシアーマットな肌に仕上げましたが、今回はサテン リップスティックからクリアカラーの「イン ザ クリア」をハイライト代わりに用いて、頬骨あたりにみずみずしいツヤ感を出しました。会場は上から強めのライトが当たるので、座って下の位置からモデルを眺める観客の視点では、ハイライトがより綺麗に映ります。
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⎯⎯ ショー数時間前からショー後まで、大きく崩れることのないベースメイクの作り方は日常でも活用できると思います。ショーのベース作りのテクニックをデイリーに取り入れるためのアドバイスがあれば教えてください。
ファンデーションをつけすぎないことやコンシーラーのテクスチャーを部位ごとに分けるということはもちろんなのですが、私はそれよりもスキンケア選びが大事だと感じています。表面にベタつきやぬるつきがある状態だと乗せていくメイクが崩れてしまうので、うるおいながらもスムースな肌に整えて、ファンデーションが密着するような肌を作ることがポイント。
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バックステージの現場で欠かさないM·A·Cのスキンケアアイテムは、メイクの仕上がりを美しくする美容液「ハイパー リアル セラマイザー」と、フィックスミスト「フィックス+ オリジナル」。ベースメイクが肌に密着するようにスキンケアを仕上げて、最後にフィックスミストをかければ崩れにくいベースメイクが作れると思います。
⎯⎯ ショーでメイクをするときに、池田さんが大事にしていることを教えてください。
笑顔を大事にしています。「誰が主役なのか」と考えると、携わる人たちは皆さんそれぞれ主役なのですが、表現という点ではランウェイを歩くモデルさんたちが主役になると思います。バックステージは忙しく、時間も限りがあるため大変ではありますが、主役の方々に心地よく表現していただくには、私たちがポジティブな雰囲気を作ることが大事です。明るいマインドで、楽しみながら良いものを作りたいです。
⎯⎯ 最後に、池田さんにとって“ファッションショー”とは何ですか?
命です。私にとってなくてはならないもので、関係する人たちがコラボレーションする“ライブ感”が好きです。ファッションショーは、作る人から見る人までが「ファッションとは何か」ということを一番感じられるものなので、現場にはリアルなファッション、メイクアップ、ヘアスタイリング…そしてリアルな発言があります。それを目の当たりにして、見て感じてどのように自分の中にファッションを落とし込むかということがショー1つで現れるので、そのライブ感含めファッションショーは“命”です。
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(企画・編集:藤原野乃華)
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