Image by: ©︎Adrien Dirand
マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手掛ける「ディオール(DIOR)」が1月23日、2023年春夏オートクチュールを発表した。インスピレーション源となったのは、1920年代に活躍した歌手でダンサーのジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker)だ。
多くの壁を打ち破った女性たちの姿
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会場はパリのロダン美術館。巨大なポートレートで構成された舞台装飾は、アーティストのミカリーン・トーマス(Mickalene Thomas)によるもの。「セレブリティ、女性らしさ、パワー」をテーマに描かれたのは、歴史上に名を残す女性たちだ。ベイカーのほかに、有色人種としてはじめて「ヴォーグ」誌の表紙を飾ったモデルのドニエル・ルナ(Donyale Luna)や、アフリカ系女性として初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたドロシー・ダンドリッジ(Dorothy Dandridge)の姿も見られる。
「彼女たちは、テレビ、映画、ファッション、社会活動において、多くの壁を打ち破ってきた。私がこの作品を作り、今のようなアーティストになれたのは、彼女たちの決意と犠牲の上に成り立っている」とトーマスは語る。
1920年代のファッションアイコン
ベイカーと言えば、キャバレーの世界を広く世に知らしめたグラマラスなアイコン。戦後のヨーロッパで絶賛され、ニューヨークのストランドシアターやカーネギーホールで行われた公演では、ディオールをはじめとするフランスのファッションをまとってパフォーマンスを行なっていたという。シルバーとゴールドのフラッパードレスなどは、当時のベイカーの衣装を彷彿とさせる。また、小さくカールさせたモデルたちの前髪も、ベイカーのアイコニックな髪型を取り入れたスタイルだ。
ファーストルックで登場したボディースーツは、パリで唯一であり、最古のオーダーメイドのランジェリーを扱うアトリエ「カドール(CADOLLE)」とのコラボレーションにより制作されたもの。1950年代のアーカイヴピースからインスピレーションを得たスモッキングの技術が取り入れられている。
「ロールモデル」のためのシックな装い
今回のコレクションでフィーチャーされたのは、彼女のきらびやかな衣装だけではない。フランスのレジスタンス運動のメンバーであり、人権活動家、ヒューマニスト、慈善家でもあった彼女の経歴を「先駆者やロールモデルとして模範となるような物語」として描いた。その真摯なアプローチは、一貫してフェミニストというイデオロギーを推進してきたキウリならではだ。
登場したルックの多くは、1950年代のクラシックを現代的に再解釈したもの。色調は上品なパウダーカラーとブラックがメインとなり、ムッシュ ディオールの愛したマスキュリンなファブリックをスーツやコートに取り入れた。グレーのパンツスーツは、戦争中にベイカーが着用した軍服から着想を得たものだという。
女性の力強さを静かに表現
バスローブに見立てた一連のコートは、ベイカーが楽屋でランジェリーの上に羽織っていたベルベットのローブからインスパイアされたデザイン。シワ加工を施したシルクやベルベットのドレスは、いずれも身体を優しく包み込むような仕立てとなっていた。
足元を飾ったのは、ストラップシューズ。厚みのあるソールとスモーキーなアイメイクが相まって、時代を切り拓いた女性の力強さを演出していた。
BLACKPINKのジスや新木優子の姿も
会場には、グローバル アンバサダーのBLACKPINKのジス(JISOO)、アニャ・テイラー=ジョイ(Anya Taylor-Joy)、カーラ・ブルーニ(Carla Bruni)、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)、キルスティン・ダンスト(Kirsten Dunst)、エリザベス・デビッキ(Elizabeth Debicki)らが来場。ジャパン アンバサダーの新木優子もクチュールの衣装でショーに出席した。
BLACKPINKのジス
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