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2025年の展望を、2024年の振り返りとともにインタビューする「トップに聞く」。化粧品業界 世界NO.1 ロレアル グループ(L’Oréal)の日本法人 日本ロレアルは、「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」を始め、「3CE」、「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」の日本導入のほか、「ランコム(LANCOME)」のスター美容液の刷新など、2024年は話題に事欠かない1年だった。「輝かしい成果を収めた」2024年の勢いそのままに、「日本発のイノベーションを海外に向けても発信したい」と語るジャン-ピエール・シャリトン社長に、ビジネスの進捗と今後の展望を聞いた。

■ジャン-ピエール・シャリトン(日本ロレアル代表取締役社長)1966年3月13日生まれ、フランス・パリ出身。1989年にフランスのEM リヨン経営大学を卒業。1991年に仏・ロレアル本社に入社し、スキンケアブランド「Biotherm」でキャリアをスタート。タイ、韓国、イギリス・アイルランドのロレアル リュクス事業本部長を経て、2008年にロレアル リュクス事業本部「ジョルジオ アルマーニ ビューティ」のグローバルプレジデントに就任。2013年にロレアル アジア太平洋地域(APAC)のロレアル リュクス事業本部ゼネラルマネージャーに就任、2021年11月から現職。
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目次
⎯⎯2024年を振り返って、どのような1年でしたか?
Japan shines。輝かしい成果を収めた1年だったと言えます。アメリカ、中国に次いで大きなマーケットである日本は、化粧品市場全体で年間で6%(ロレアル調べ)の成長を果たし、ダイナミックに消費が動いています。その中で日本ロレアルは市場の1.5倍の速度で伸長しました。
⎯⎯右肩上がりの成長の理由をどのように分析していますか?
2024年はオフラインでの消費がカムバックしました。その要因として、インバウンド需要が復活し、市場の成長の半分を牽引したと言っても良いでしょう。もう1つは日本の消費者がオフラインで、サービスを享受することに前向きだったことです。店頭に足を運び、肌測定やタッチアップといったサービスを受けたり、香りを楽しんだり、何よりも美容部員(BA)との会話を楽しんでいたのではないでしょうか。オンラインの成長だけでなく、オフラインでの消費が戻ってきたことが成長の背景にあります。
日本処方のスキンケアを求める訪日客
⎯⎯消費者がオフラインで楽しむことの1つとして、フレグランスのニーズの高まりも挙げられます。需要増が目覚ましいですね。
日本ロレアルもとても堅調です。フレグランスカテゴリーで前年比2桁成長を遂げています。「プラダ ビューティ」をはじめ、『メゾンマルジェラ「レプリカ」フレグランス』、「イヴ・サンローラン・ボーテ(Yves Saint Laurent Beauté)」(以下、YSL)の「リブレ」などとても好調に推移です。それと同時にメイクやスキンケア、ヘアケアも順調で、特にインバウンド客の日本のスキンケアへの注目度が増しているのではないでしょうか。
⎯⎯インバウンド客にはどういったブランドが人気なのでしょうか?
「シュウ ウエムラ(shu uemura)」と、今年20周年を迎える「タカミ(TAKAMI)」といった、日本発祥のブランドが人気を集めています。シュウ ウエムラは日本の自動車メーカー、マツダの車の塗装から着想を得た3Dの立体感を出すカラーを展開するアイパレットやブランドを代表する「アルティム8∞ スブリム ビューティ クレンジング オイルn」、タカミは美容皮膚からの発祥で「タカミスキンピール」が注目を集めるなど、日本の高い技術力が搭載されたアイテムが人気です。
それ以外でも、われわれはヒーロープロダクトの日本限定処方を提供しています。例えば「ランコム」の美容液「ジェニフィック アルティメ セラム」は、日本のために開発された「瞬間浸透*テクスチャー」を採用しています。「ラ ロッシュポゼ(LA ROCHE POSAY)」の「シカプラスト リペアクリーム B5+」も日本処方で登場したアイテムですが、日本で流通する日本の消費者のために設計された処方を求めるインバウンド客が目立ちました。
*美容液1スポイトの平均値における、カルボキシメチル-β-グルカンNa(整肌成分)の分子数の概算値

⎯⎯カテゴリーごとの成長率はどうでしたか。
全てのカテゴリーで前年を上回り好調でしたが、中でも最も伸長したのはメイクアップで、10%台後半の成長率でした。YSLやプラダ ビューティ、シュウ ウエムラがけん引しました。ナチュラルメイクの主流から、コロナが過ぎよりメイクを楽しむトレンドに移行したのだと思います。次にフレグランスが成長のカテゴリーだと言えるでしょう。メゾン マルジェラ 「レプリカ」フレグランスを筆頭に、YSL、プラダ ビューティといったブランドが牽引し、さらにヘアミストやボディフレグランスなど、総じて香り関連アイテムへの興味関心が増していることを感じます。
YSLはラグジュアリー市場の成長の3倍の成長
⎯⎯特筆してブランドを挙げるとすれば?
YSLでしょうか。その理由はたくさんありますが、1つはトレンドを牽引するアンバサダーを起用していることです。TWICEのSANAさんやNumber_iの平野紫耀さんといった、今、最もパワーのある2人の登場により、より幅広い人にアプローチできたと思います。もう1つの理由として、イノベーション力に優れた商品が豊富なことに紐づくでしょう。ラブシャインリップシリーズや、アイシャドウのクチュール クラッチ、コンシーラーなどメイクアップのヒット商品が数々生まれています。今年に入って発売した、チーク「メイクミー ブラッシュ パウダー」は、すでに好調です。ラグジュアリー市場は10%程度の成長率ですが、YSLはその3倍とも言える伸長を見せています。
また、ランコムでは「ジェニフィック」の美容液を進化させ、「ジェニフィック アルティメ セラム」として9月に発売しました。肌の「回復メカニズム」に着目した成分を配合した、さらなるエイジングケア効果を発揮するセラムです。多くのベストコスメを受賞するなど話題を集め、この発売によりランコムの成長は一気に加速しました。
⎯⎯ジェニフィックは、日本のイノベーションも発揮されています。
そうです。日本限定のフォーミュラにこだわりました。肌への結果を追求するため、「日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター」の知見をフル活用して、より優れた製品になるように開発を進めました。パリで生まれたランコムが、日本のイノベーションと融合した、2024年の目玉ともいえる取り組みでした。
⎯⎯そのほか、成功した日本発のイノベーションはありますか?
昨年2月に発売した「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」の「SPステイ ルミマット リキッド ファンデーション」が人気を牽引し、バラエティ・ドラッグストアカテゴリーのリキッドファンデーション部門で、メイベリンが最も売れたブランド*になりました。カバー力があってマットな仕上がりなのに、つけている感覚が少ないのが特徴です。開発力の高さの賜物です。このファンデーションも日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンターが生み出したもので、アメリカのブランドと日本の技術が融合したアイテムです。
*ロレアル調べ、インテージ社提供2024年2月12~3月17日までのバラエティ・ドラッグストアカテゴリー店舗(オンラインを除く)における累計金額において

多くのブランドを抱えていると、全てが順風満帆というのは望みとは思いますが、しかし必ず成長軌道への道筋を常に準備しています。これがポートフォリオ戦略の醍醐味ではないでしょうか。
⎯⎯2024年の話題のひとつとして、プラダ ビューティの本格ローンチが挙がります。
注目を集める中でスタートしましたが、大きな成功を収めています。ファッションブランド「プラダ」のフィロソフィーを踏襲したコレクションを揃え、そのファッションの好調も後押しとなり、順調な滑り出しを切れたと思います。淡いグリーンの「リップ バーム オプティマイジング ケア」は、瞬く間にベストセラーの仲間入りをし、次に淡いブルーの「リップ バーム ブラッシング ケア」も含め、男性からの人気も獲得。ジェンダーを超えた広がりを見せています。東京・原宿に開いたブティックはミラノのチームが日本のために設計し、とても美しいショップに仕上がりました。
⎯⎯いまや、ジェンダーは関係ない時代になっています。百貨店の化粧品フロアで男性の姿を見ることも増えましたし、違和感がなくなりました。
メゾン マルジェラ「レプリカ」フレグランスがいい例でしょう。売上の50%が男性です。
積極的な新ブランドの投下は日本市場への期待と自信の現れ
⎯⎯スキンケアではスキンシューティカルズが日本再上陸を果たしました。戦略を教えてください。
昨年10月にローンチし、医療機関とパートナーシップを結び、ダーマコスメとして新たな販路を探っています。医療機関専売品という取り組みは日本ロレアルとして初めてのことです。まずはクリニック経由での販売を進めることで、皮膚科医、美容皮膚科医から信頼させるブランドであることを発信できますし、また極めて効率的にコントロールのもと販売をすることができています。
⎯⎯医療機関専売品は初とのことですが、難しさはありませんでしたか?
我々が単独でやるには難しかったでしょう。今回、クリニックとの強固な関係性があり、レーザー機器とスキンケアで豊富な販売実績のあるキュテラと販売代理店契約を締結し、一緒に取り組んだことで非常に順調に進めることができたのではないでしょうか。
⎯⎯日本ロレアルの運営により、韓国発の3CEも再上陸しました。
3CEは昨年9月にローンチし、ECを主戦場としています。オンラインはQ10、オフラインではプラザをメインに販売しています。韓国発のメイクブランドとして然るべき方向に舵が切れているといえます。

⎯⎯日本市場の攻略法はあるのでしょうか?
日本は世界の中でもビューティに対してエキスパートとも言える消費者を持ち、最難関の市場と言えます。その市場に、百貨店をメイン販路とするイタリア発プラダビューティ、ECおよび、バラエティショップをメインとする韓国発3CE、医療機関専売のアメリカ発スキンシューティカルズと全方位のブランド戦略で日本市場にさらにコミットします。我々の日本市場への期待と自信を感じてもらえるのではないでしょうか。今後も常に新鮮なものを提供していきたいと考えています。
鍵は「謙虚さ」、傘下に収めたブランドから学ぶべきことも
⎯⎯今後の戦略について教えてください。社内改革の進捗はいかがでしょうか?
一昨年にロレアルグループにジョインした「イソップ(Aesop)」のインテグレーションがあります。今まさに統合を進めているところです。特に売り上げの大きい日本市場は元々イソップに在籍するメンバーが多く、お互いに仕事のやり方にもきっと改善が必要でしょうし、異なる文化をもつもの同士が1つになるための鍵は「謙虚」さだと考えています。
⎯⎯タカミと同じ姿勢での取り組みで、日本ロレアルでNo. 1のブランドに成長しました。
タカミからは消費者との向き合い方を学びました。タカミはわれわれにもっと密接で寄り添った形で消費者とつながることを教えてくれました。謙虚に学ぶ姿勢をもち、成功している部分は決して覆さないことです。私たちにも改善する必要があるという視点を持って統合を進めていきます。一方で、われわれとタッグを組んだことで、タカミのグローバル進出も加速していると思います。アメリカでのローンチが決まり、台湾、中国、香港、シンガポールに出店し今後欧米も視野に入れているところです。日本の美容を世界に届ける取り組みをしていきたいですね。
⎯⎯働き方についてもさまざまな改革を進めていますが、進捗は?
以前から時代に合わせた働き方へと進化させてきましたが、2024年は大きな改革「Simplicity2」を推進しました。これはロレアルグループとして、会長および社長(CEO)がリーダーシップをとって立案したものです。その内容は会議時間を60分から45分へと短縮したことや、業務時間外のメールやチャットは控えるなど、細かいながらもより良い働き方、社員の心理的安全性を会社全体に浸透させたと考えています。スタートしたばかりなので、2025年から数年かけて浸透させていきます。
「Simplicity2」具体例:業務時間外(週末や祝日、勤務時間終了以降)のメール、チャットは控える/定例会議の定期的見直し、一増の場合は一減を守り、会議に割く時間を抑える/会議時間を60分から45分に短縮させ、15分は次の会議までの復習・休憩・準備・その他に充てる/月曜日の午前中は社内会議を原則行わず、その週に備える充電時間”ウォームアップ・マンデー・モーニング“と設定し、グローバルで実施。月曜日午前中は、時差がある場合も、別の地域の月曜午前には会議依頼は行わない/水曜日の午前中はラーニング(2万を超えるEラーニングから個人のニーズに合わせて受講)を推奨。
⎯⎯サステナビリティ活動も積極的で、また女性活躍はグループとして推奨する大きなトピックです。
日本では、DE&I推進(プライドパレードへの参加者が250名へ増加)、事実婚や同性パートナーを対象に配偶者と同等の福利厚生を受けられる「パートナーシップ制度」を導入しました。今年で20周年を迎える「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」は、昨年女性科学者支援が評価されて「ジュン アシダ賞」を受賞するなど、一定の評価を得ています。ブランド単位でも女性支援活動に積極的です。

2025年のモットーは「成長」
⎯⎯2025年、イソップに次ぐ、また日本ブランドではタカミに次ぐ、M&Aも視野に入れていますか?
われわれは日本のビューティに情熱をもっており、ロレアル本社も日本のブランドへの投資に期待しています。シュウ ウエムラやタカミに次ぐ、宝石のような存在を見出したい。日本のトップとして、常に新しいブランドの獲得に興味を持っています。
⎯⎯特に面白さを感じるカテゴリーは?
スキンケアです。もちろんメイクやヘアケアも素晴らしいブランドがたくさんありますが、日本のスキンケアはアジアだけでなく世界中で確固たる評判と人気を誇っており、確かな信頼があります。
⎯⎯2025年の目標を教えてください。
モットーは「成長」です。日本は大きなチャンスのある市場で、今後も早いペースで成長することは間違いありません。各ブランドで投資をし、グループとしての成長戦略を描くことが欠かせません。日本の消費者は目が利くからこそ、製品においても、また市場としてもイノベーションが生まれると考えています。
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