
経済産業省は皮革産業のビジョン「国内皮革産業のあるべき姿と行動目標・ロードマップ」を初めて策定し、4月21日に公表した。経産省と日本皮革産業連合会が昨年11月に設置した「国内皮革産業の維持・発展に向けた検討委員会」での議論を踏まえたもの。40年ごろの産業の将来像と、サプライチェーンの再構築やサステイナビリティーへの対応、日本製品の「ジャパンブランド」化などの行動目標と政策を示した。TPP(環太平洋経済連携協定)11と日本・EU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)で32年度までに段階的に関税が撤廃され、国内皮革産業の環境がより厳しくなることが予想される中で、「官民で連携して産業を革新し、持続的発展と国際競争力強化につなげる」(髙木重孝製造産業局生活製品課長)。
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(有井学)
将来像は「各事業者が請負ではなく、自律的に発展軌道に乗った生活価値創造産業」を目指し、「国内外のトレンドに応答できる複数のクラスターの確立と創発的なビジネスエコシステムの形成」「産業・労働環境・倫理環境配慮一体の持続性構築」「日本製品の国内外でのプレゼンス確立」が不可欠とした。
将来像実現に向けた行動目標は関税撤廃の時期に合わせ、32年ごろまでとした。「新たなクラスター形成を通じた強靭(きょうじん)な商流とサプライチェーンの再構築」のため、事業者と産業界、行政が連携したネットワークを作り、テストマーケティングやパイロット事業などを行う。クラスターはデザイナーやクリエイター、百貨店などで構成し、「25年度中にプロジェクトを立ち上げたい」という。
サステイナビリティー対応では、海外展開を目指す事業者でのLWG(レザー・ワーキング・グループ、皮革・革製品の国際環境基準監査団体)の認証などグローバルスタンダード取得率100%などを目標とし、取得を支援する。
ジャパンブランド化では輸出額とインバウンド需要の増加による海外需要の獲得などを目標とし、クラスター形成と一体での国際展示会出展や産地でのオープンファクトリーへの支援、官民連携での日本製品のブランディングと情報発信などを行う。
さらに、これらの行動目標を実現する「共通基盤」として、なめし革・革製品事業者の「経営・取引慣行などの合理化」を掲げた。「サプライチェーン全体で適正な価格形成や雇用・所得環境を改善できる環境を整備」し、32年度までの事業者の平均営業利益率3%を目指す。事業者に補助金などを出す際に経営指標情報の算出・提出などの合理化措置を求め、サステイナビリティー対応を含む措置の義務化も検討する。
行動目標で示した支援策は当初予算で毎年計上している皮革産業振興対策事業や皮革製品の産業競争力強化基金も活用する。「今後の補助金事業はビジョンに沿って採択する」考え。「サプライチェーン全体で課題解決に取り組まなければ、日本の皮革産業は持続できない」とし、皮革業界だけでなく、小売業やブランド企業など「広くビジョンを伝えたい」という。
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