
富山市は路面電車が走りコンパクトで魅力ある歴史地区や文化施設が点在する

今年1月、アメリカ『ニューヨーク・タイムズ』紙が「2025年に行くべき52カ所」を発表し、日本からは富山市と大阪市がリスト入りした。万博が開催される大阪は理解できるとして「なぜ富山市」なのか。ワイドショーやSNS上でも話題になった。さかのぼって23年には盛岡市が、昨年には山口市が選出され、その意外性と経済効果波及が注目されている。盛岡の場合、いわぎんリサーチ&コンサルティングによれば約18.2億円の経済効果があった。これは盛岡市における百貨店や総合スーパー、コンビニなど各種商品小売業の年間販売額の約7.9%に相当するという。
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結論からいうとこれらを選んだ一人のジャーナリストの存在が大きい。作家・写真家でもあるクレイグ・モド氏だ。全国の喫茶店めぐりや東海道、熊野古道、出羽三山といった歴史ある土地を訪ね歩いてきた日本通のアメリカ人。盛岡市、山口市、今年の富山市を選んだのもモド氏による(大阪は別のライターが選出)。
復興への一環
モド氏は自身のメルマガでこのように選んだ理由を説明している。「オーバーツーリズム解決となる場所はあるか。自然災害に見舞われ、観光から利益を得られるような観光地はどこか。持続可能な旅をするための新しく興味深い場所、観光の仕方はあるか。今年選ぶべき場所を教えてほしい」――そんな提案が編集側からありました。
浮かんだのは24年元日に地震・津波の被害にあった能登半島だった。復興途中ながら美しい海岸線、ふんばって生きる人たちにモド氏は感銘を受けた。ただ宿泊など観光客を受け入れるインフラが整っていないことも実感する。そこで浮かんできたのが富山市だ。記事の中で、「富山市は日本アルプス、日本海に抱かれ能登半島への玄関口の役割をになっている。能登半島は24年の地震と集中豪雨で壊滅的な被害を受け、現在も復旧中だが、復興の一環として観光客を受け入れている」と記述している。
グルメ業界も注目
富山市は、日本海や富山湾で水揚げされる新鮮な魚介、ミシュランを獲得するガストロノミーから居酒屋、日本酒やワインといった地産地消によるグルメも秀逸だ。
実は筆者も含め富山県は観光関係者や料理業界でも注目され始めていた場所でもある。
日本全国を旅してきたモド氏の審美眼は説得力があり、インバウンドも含め観光客の増加が見込まれるだろう。そして能登半島への思いとエールが込められていることにジャーナリストとしての誠意を感じる。今後、より多くの経済効果があることを期待する。
(トラベルジャーナリスト・寺田直子)
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