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急成長を迎える「オンデーズ」、リブランディングでファストファッションからの脱却目指す

急成長を迎える「オンデーズ」、リブランディングでファストファッションからの脱却目指す

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2024年から2032年にかけて、世界のアイウェア市場は年平均6.6%の成長が見込まれている。ファッションアイテムとしての需要の高まりや、ライフスタイルの変化に伴う視力ケア意識の向上を追い風に、世界13カ国・地域で570店舗以上を展開し、急成長しているのがOWNDAYS(オンデーズ)だ。独自の販売戦略に加え、管理職を社員の投票で決める総選挙など、ユニークな企業文化も業界の注目を集めている。顧客や社員のエンゲージメントを高めながら成長を続ける同社のマーケティング戦略に迫った。

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鳥居長英さん/株式会社オンデーズ マーケティング部部長
新卒でIT企業に入社し、新規事業やデジタル広告の営業を担当。その後外資系クリエイティブエージェンシーを経て、大手アパレル企業やエンタテイメント企業でマーケティングおよびPRやCRMに従事。2024年に株式会社オンデーズに入社すると同時にマーケティング部を立ち上げ、同社の国内マーケティングを統括する。

重村真実さん/株式会社オンデーズ マーケティング部 広報PR課 マネージャー
2017年に海外店舗のマネジメントを担当するワールド社員として株式会社オンデーズに入社。社内立候補制度で広報PRに異動。リリースやメディアリレーションの構築等、一連の広報業務からマーケティング施策・イベント運営などを担当する。

ファストファッションからの脱却を目指し、独自の戦略を構築

― 鳥居様が入社されると同時にマーケティング部を立ち上げたと伺っています。まず行ったのはどんなことですか。

鳥居長英さん(以下、鳥居):まずは実際の店舗で販促ツールや接客を肌で確認しました。また、定性・定量調査を行って、市場の特性や顧客からのブランドイメージを把握しました。

― 調査からはどのようなものが見えてきたのでしょうか。

鳥居:市場の特性として、世代によって選び方が異なるという点があります。眼鏡は「半医半商」といって医療器具としての側面も持っているため、高年齢層にとっては、眼鏡といえば町の眼鏡屋さんで白衣を着たスタッフが視力測定して購入するものというイメージがあるようです。そこには「価格が高いものが良いもの」というある種のバイアスがかかっています。

一方で、若年世代にとって眼鏡はファッションアイテムとしてとらえられる側面が強く、気分やムードによって眼鏡を選択するといった利用傾向があります。

― そのような市場に対し、御社はどのような施策をとっているのですか。

鳥居:現在私たちが目指しているのは、ブランドポジションの確立で、具体的にはファストファッションからの脱却です。

眼鏡業界は、複数のブランドを仕入れて販売する総合眼鏡店と、開発から販売まで自社で行うSPA(Speciality store retail of Private label Apparel)型のモデルに分類されます。当社が展開しているのはSPA型のビジネスで、同様の業態でいうと国内のシェアは3番手になります。現在の顧客単価は平均1~2万円ほどですが、同じ価格帯の競合他社と戦ってシェアを伸ばすというよりは、ニーズや好みに合わせたプロダクトを開発して顧客に寄り添った商品を、幅広い価格レンジで打ち出していきたいと思っています。

―「レンズ追加料金ゼロ」のシンプルな価格設定を採用する背景をお聞かせください。

重村真実さん(以下、重村):眼鏡業界では、フレーム代金に加えて、薄型レンズの追加料金をいただき、利益を上げるのが一般的によく用いられる経営手法でした。しかし当社では、視力矯正が必要なお客様が店頭で眼鏡を手に取られて、いざ購入となったときに値札と価格が違うのは公平ではないのではと考え、2012年から追加料金0円という方針を取っています。明瞭な価格設定は当社のメッセージとして貫いているものです。

近年では遠近両用レンズも追加料金0円としています。こちらについても顧客調査を行ったところ、40代の70%が「自分は老眼かもしれない」という認識を持っている一方で、遠近両用レンズを使用しているのは18%に留まっているということがわかりました。店頭でも「価格が高く挑戦しづらい」という声を多くいただいていたため、思い切って0円として手に取りやすくしました。

常に顧客視点に立った販売戦略を展開している

スピーディに変化に対応し、社員や顧客の挑戦を応援する

― 御社には、店長やエリアマネージャーなどの管理職を社員による投票で選ぶ「総選挙」のように、ユニークな制度があります。そうした企業文化がブランドの発信力やマーケティング施策に影響する部分はありますか。

重村:「総選挙」や社内イベントを始めたのは海外進出を含めて急速に事業成長している時期で、経営陣が自らが事業戦略を共有し、スタッフの一体感を高めることが必要でした。あくまで社内向けに始めた取り組みでしたが、それがメディアや他の企業さんの目に留まり、OWNDAYSというブランドを知ってもらうきっかけにもなりました。

お客様から「OWNDAYSってユニークな取り組みをしてるよね」とお声がけいただいたり、入社を希望する学生の数が増えたりしているので、自らキャリアを切り拓く風土が「挑戦を応援するブランド」という価値観として伝わっているのではないかと考えています。

― 他社で経験を積んできた鳥居様は、御社の企業文化をどう感じますか。

鳥居:会長と社長がつくってきた企業文化は、社員の自主性を促すものだと感じています。会社やお客様のためになるものなら何でも意見を出せるように、経営陣が行動を指し示しながら全社員にそれを見せており、体現しています。

だからなのか、「お客様の購買体験が良くなるために変えるのが当たり前」という風土があります。私が外部から入社してマーケティングの部署を立ち上げたとき、スムーズに受け入れて話を聞いてもらうことができたのも、顧客のために改善し、そのための変化に柔軟である文化があったからだと思います。

本部だけでなく店舗からも声を吸い上げています。接客する上での課題や必要なツール、広告宣伝の反響などが次々に反映されていったのは、もともと持っている変化に順応するスピード感が土台にあったからこそでしょう。

ユニークな企業文化の裏側には経営陣の率先したアクションの積み重ねがある

商材の特性を活かしたグローバル戦略とローカライゼーション

― データドリブンなマーケティングも進んでいる印象があります。御社の戦略の中で特にテクノロジーを活用している点を教えてください。

鳥居:眼鏡店では必ず視力測定を行うので、購入の時点で顧客のカルテがあります。また自社独自で開発をした眼鏡のできあがりをLINEで通知する仕組みがあるので、顧客情報の取得がスムーズです。カルテや会員データから取得した購買履歴・行動履歴と外部調査のデータをかけ合わせることで、商品開発やプライシング、出店戦略、広告宣伝などOWNDAYSとお客様の関係性を良化する活動に活用できます。

ただ、DXは手段でしかなく、DX自体が目的化することは避けたいと思っています。オペレーションの効率化や、過疎地での販売を見据えた省人化・無人化など、必要な部分には取り組んでいますが、温かみのある接客を維持するためにはどう改善できるかを意識しています。

― 海外への出店も積極的に進めていると思いますが、競争の激しいグローバル市場でどのようにブランドを確立していったのでしょうか。

鳥居:メガネチェーン(メガネ販売)はリピート率が高い商材なので、より早く商圏に根付いたプレイヤーが強みを持ちます。当社が海外で成功した理由のひとつに、強いチェーンが根付いていない国に積極的に入っていったことがあります。

もうひとつは、各国の商習慣にスムーズに適応していったことです。例えばシンガポールでは、国家資格の取得者が店内にいないとお店を開いてはいけないという法規制があります。そこで当社では、現地スタッフに教育カリキュラムを提供して資格取得をサポートするなど、スピーディに対応しています。

海外展開においても地域の特性にあわせてローカライズを行っていると語る

― 日本流の教育で接客レベルを引き上げ、人材を育成することが、海外展開の成功につながっているんですね。

重村:そうですね。現地で採用したスタッフが他国のゼネラルマネージャーにステップアップするなど、当社の仕事がきっかけで活躍の場を広げているケースもあります。そうしたキャリア開発を日本主体ではなく、現地に権限を委譲して進めている点もユニークだと思います。

― 今後、挑戦したいと考えている新たなマーケティング戦略や、これからの市場環境を踏まえたブランドビジョンについてお聞かせください。

鳥居:リブランディングを進める中で打ち出した「OWN ‘your’ DAYS」というリブランディングのコンセプトをお客様に伝えるため、2024年11月より「いい顔になろう。」というコピーを展開しています。“かけることによってより自分らしくなれる、そんな商品がOWNDAYSには揃っています”という想いが込められています。このポジショニングを確立することで、ファストファッションからの脱却につながるのではないかと思っています。

重村:昨年のリブランディングでメッセージの定義づけができたので、今後はそのメッセージを発信することが大事だと思っています。社内イベントなどを通して企業文化を伝えることはしてきたのですが、今度はプロダクト&サービスとしてOWNDAYSを好きになっていただくフェーズなので、商品やサービスの魅力をどう伝えていくかが課題だと感じています。

文:大貫翔子
写真:船場拓真

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