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グローバルキャリア成功のカギ 成長するインドから日本人が学ぶべきこと

グローバルキャリア成功のカギ 成長するインドから日本人が学ぶべきこと

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ラグジュアリーブランドの海外支社で働く――。そんな憧れを実際に叶えた、日本人男性・野﨑健太郎さん(ペンネーム)が綴るコラムです。日本人がグローバルで働く上で知っておきたいこと、海外のマーケット動向、キャリアアップしていくためのヒントとは……?これまでたくさんの挑戦と成功を重ねてきた野﨑さんだからこその視点や気づき、エピソードなどを交えながらお届けします!(Vol.1、Vol.2、Vol.3もぜひご覧ください)

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今回は、私自身がインドについて学んだことを共有させていただければと思います。最近、「グローバルサウス」という言葉を経済ニュースでよく耳にするようになりました。次の成長を担うとして注目されるインド、ベトナム(ITや製造業)、インドネシア、南アフリカ、ブラジル(豊富な資源や人口)といった国々を指します。

なかでも、圧倒的な存在感を放っているのがインドです。約14億人の人口を擁し、グローバルサウスの盟主として成長が期待されています。私が日本で暮らしていた時、インドを意識する機会は、せいぜいカレーなどの食文化くらいでしたが、東南アジアではその存在感の大きさを実感する場面がよくあります。例えば、私の住んでいるマンションの住人の8割くらいはインド系の住人ですし、シンガポールの街のいたるところにヒンドゥ教の寺院が点在し、リトルインディアというインド人街もあります。シンガポールのインド系人口の比率は約10%を占め、その数は約52万人。お隣マレーシアには約220万人ものインド人が暮らしています。日本に暮らすインド人は約4.8万人なので、その数の違いは歴然です。

シンガポールに住み始めてインドへの理解が深まるにつれ、インドがいかに多様で広大であるか、周辺諸国へ大きな影響を与えているかを痛感しました。例えば、インドネシアのバリ島でヒンドゥ教が普及しているのは古代のインド商人の影響によるものですし、マハトマ・ガンジーが若き日を過ごした南アフリカのダーバンという街にも巨大なインド人コミュニティが存在します。

今後、日本国内でもインドの存在感は増していくと思われます。かつての中国人買物客がそうだったように、ラグジュアリーブランドの売上を左右するような存在になる可能性もありますし、さらに多くのインド人旅行者が日本を訪れることでしょう。

ラグジュアリーブランド市場における「日本と真逆」の価値観

まず、ラグジュアリーブランドにおけるインドのお客様の趣向についてお話したいと思います。ひと言で表現するなら「日本と真逆」です。日本人が「引き算の美学」を好むのに対し、インド人は基本的に「足し算の美学」を好みます。派手さを好む傾向は中国やタイにも見られますが、インドのそれは別格なのです。

2023年11月、ムンバイに「Mumbai Jio World Centre」というラグジュアリーショッピングモールがオープンしました。私はそのオープニングイベントに参加する機会があり、インドの富裕層やセレブのファッションを間近で見ることができました。とにかく、“派手・大胆・ゴージャス”です。身につけている宝石類も極端に大きくて、イヤリングは耳がちぎれてしまいそうな大きさです。ネックレスも、大げさではなく、窒息しそうなほど大きいゴールドのチェーンを巻きつけています。

また、日本ではラグジュアリーブランドのパーティーなどで和服を着る方は少数派でブランドに合わせた服装をする方が大多数なのに対し、インドでは民族衣装やそれに近いものをまとう方がとても多く、ブランドに合わせることはあまりしない印象です。

あくまでも、自分たちを中心に据えて物事を考えているようで、私もビジネスでは「こういうデザインをつくってくれ」というかなり無茶なリクエストを多数いただきました。日本では相手を尊重する姿勢を示す人が多いですが、インド人はいい意味で自己中心的な考え方。こうした点も日本とは「逆」といえるでしょう。

インドの“濃くて粘り強い”コミュニケーションスタイル

華美に盛る文化、いい意味での自己中心的な文化は、コミュニケーションスタイルにも表れているように感じます。インド人のコミュニケーションは、端的に言うと”濃くて、多くて、粘り強い”です。仕事上でもよく話しますし、大勢が宛先にいるメールや社内SNSなどでも積極的にコメントをしています。中国や韓国のチームと仕事していると、「積極的だな」と思うことがよくありますが、インド人はさらに強くて、しつこいくらいの積極性があるのです。

また、彼らはクリアに伝えるための努力も惜しまないので、同じような内容について何度も何度も話します。必然的に話す時間が長くなり、組織の中での存在感が増していきます。日本人は「洗練された短い言葉」や行間に想像力を掻き立てるようなコミュニケーションを好むでしょう。インドはまったく真逆なのです。

ここからは私の想像ですが、インドにはヒンデゥ語、タミル語をはじめとする多数の言語が存在するので、もともとコミュニケーションに壁が存在することが前提にあったのかもしれません。そのため、意思が伝わるまでしっかりと何度も話す習慣があるのではないでしょうか。そう考えると、グローバル企業で仕事をする場合や、ITサービスなどで地理的な隔たりがなく仕事をする世界では、インド人のコミュニケーションはとてもパワフルに感じるのかもしれません。反対に、私たち日本人が好むような洗練された短いコミュニケーションは、実務には不利とされてしまうかもしれません。

また、日本人にとっては「不変の定数」「全員の共通認識」と思っている事も、彼らにとっては「交渉可能」「話すネタ」となります。例えば、お店の商品価格は、日本人にとっては単純に「当然支払うべき価格」ですが、インド人からすると「当然交渉可能なもの」「確認が必要なもの」となります。彼らが高いと感じるような価格を提示する際は、その理由の説明を求められる場合もあります。中国や中華系のお客様の場合、一度信頼が得られると、「ハオ、ハオ、あなたを信頼するから、好きなようにやってくれ」と言われることがありますが、インドでは「あなたを信頼する。だけど、毎回確認はさせてね」という風になります。正直に言うと、「面倒だな」と感じる場面も多々あり、インド人とのビジネスの難しさを肌で感じる事も頻繁にあります。ただ、彼らと話していると、まったく悪気が無いことに驚かされます。こちらがミスをしてしまっても、交渉が決裂してもクレームを言ってきたり、怒ったりする人はほとんどいないのです。日本人は完璧でないと感情的になって怒る人も多いですが、インドのお客様や同僚たちは、トラブルがあってもあまり動じずに、温和な雰囲気を保ち続けることができています。こうした点は、彼らの強みのひとつかもしれません。

インドから日本人が学ぶべきこと

現在私が働くシンガポールのオフィスには、2人のインド出身の同僚女性がいます。2人ともインド北部の出身で、学生時代にヨーロッパに留学し、MBAを取得しています。見た目は背が高くてかっこよく、頭脳明晰、ハードワーク、冗談が上手くて、よくしゃべります。彼女たちは日本の事をとてもリスペクトしてくれていて、アジアの中でも特別な扱いをしてくれます。そして、仕事となるといい意味で「自己中心的」な部分を持っていますので、交渉や手早くプロジェクトをリードするのがとても上手です。

日本人の中には「インド人」というだけで、馬鹿にするような無礼な態度を取る無知な人もいますが、実際には学ぶべきところが数多くあります。また先述したように、日本人とは「真逆」な価値観や考えを持っている分、お互いを補完し合うことができ、いいパートナーになり得るかもしれません。特にグローバル企業でのコミュニケーションにおいて、日本人は彼らの能力をまねて、わかりやすく、粘り強く、温和に、何度も確認をしながら進めることが成功のカギになるかもしれません。インドでの仕事、インド人との仕事は決して簡単なものではありませんが、日本人にとっては多くの収穫が得られる機会となり得るでしょう。

最後に、インド発のラグジュアリーブランドSabyasachiについてご紹介したいと思います。ひと言でいうと、かなりカッコいいです。近年ではルブタンやH&Mとのコラボをしていて、マーケットを海外へと拡大しています。店内は、豪華絢爛。ドレスは数百万円のものもあり、高めの価格設定です。接客も丁寧で独自の世界観を発信しています。Instagramもありますので、ぜひ覗いてその世界観を味わってみてください。

■著者プロフィール
野﨑健太郎
大学卒業後はモデルとして活動し、国内外のショーや広告などに出演。28歳のとき、大手量販店で販売のアルバイトを始める。その後、いくつかのラグジュアリーブランドでのストア、オフィス勤務を経て、2021年12月より某ブランドのシンガポール支社に勤務。趣味は高校時代から続けているサーフィン。

■ペンネームへ込めた想い
野﨑健太郎はペンネームで、尊敬する祖父の名前です。祖父は明治生まれで、西郷隆盛を思わせるような大きな体と味海苔をおでこに張り付けたような太い眉の持ち主でした。東京・五反田を拠点に京浜工業地帯で鉄を拾って歩き回り、町工場を営んでいた祖父。信条は「上天丼を食べたいなら、人の倍働け!」でした。残念ながら50代で亡くなり、直接会うことは叶いませんでしたが、この言葉は親戚を通じて私の耳に届き、私の心に深く刻まれています。祖父のハードワーク魂が自分に宿ることをこのペンネームに込めました。

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