今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。13人目は、初登場となる「美術手帖」ウェブ版編集長の橋爪勇介さん。1948年創刊の美術誌のポータルサイトで、展覧会情報やアーティストのインタビューなどクリエイティブ・マインドを刺激するコンテンツを発信しています。実はアートと同じくらいファッションも愛しているという橋爪さんが2024年に買ってよかったモノ6点は?
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FASHIONSNAP(以下、F):橋爪さんは、学生時代に京都・四条のセレクトショップ「シップス(SHIPS)」で働いていたそうですね。
橋爪勇介(以下、橋爪):アートよりファッションの方が先に好きだったんです。セレクトショップでよく買い物をしていたら、同じ大学を卒業したセールススタッフに誘われてバイトすることになって。「クロケット&ジョーンズ(Crockett & Jones)」の革靴や「フェリージ(Felisi)」のカバンを持ちスーツで通勤するという、今思えばなまいきすぎる生活をしていました(笑)。当時「クラシコ・イタリア」が大ブームだったので、落合正勝さん(服飾評論家)の本で勉強したり。もし何かが違っていたら、今頃FASHIONSNAPに入っていたかもしれないですね(笑)。
F:その世界線じゃなかったことが残念です(笑)。橋爪さんは普段、表に出られる時はモノトーンの印象が強いですね。それはアートを見るにあたっての配慮とか?
橋爪:いえ、全然そうじゃなくて。僕、できれば上下のトーンをそろえたいんですよ。理想を言えば、パンツやジャケットも同じ生地でそろえたい。でもそこまで全部そろっているのはあまりないので、似たような色で合わせています。「オーラリー(AURALEE)」だったら大体合うので。
F:では、そのオーラリーからお話を伺いましょう。
AURALEE シューズ&ベルト
橋爪:これは単穴に通すだけでキュッと止まるスライドベルトです。ベルトってバックル部分が目立ちすぎるとそこに目線が行くし、でも地味すぎても存在感がない。これはシンプルな長方形に薄くヘアラインで模様が入っていて、オブジェ的な美しさがあると思います。サイズが小さく思ったほど目立たないし、ベルト部分も太すぎず細すぎずちょうどいい。いい買い物をしたなと思います。
F:オーラリーといえばニットのイメージがありますが、ベルトに注目されるのが通ですね。
橋爪:今、着ているモヘヤも実はオーラリーです(笑)。普段、オーラリーしか着ないんですよ。 最近は人気が出すぎて困っています。デニムは競争率が高すぎて買えませんでしたね。
F:いつ頃からハマったんですか?
橋爪:2018年頃だったかな。青山の直営店がオープンしたばかりで、当時はこんなに人気が出るとは思っておらず。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)がカイカイキキギャラリーで個展をした際に、オーラリーのセットアップを着て取材に行ったら「それどこの服? いいね」と言われて「オーラリーっていうんだよ、知ってる?」「ああ、聞いたことあるね」と言っていたのを今でも覚えていて。当時はまだ「好きな人は知っている」ぐらいのブランドだったかと思います。
F:ヴァージルの着眼点もさすがですね。今日は靴もオーラリーだとか。
橋爪:靴は買う予定じゃなかったんですけど、たまたまお店でパンツを試着した時に「黒い靴を貸してもらえません?」と聞いて履いてみたらめちゃくちゃ良くて。普通のレザーシューズに見えますけど、かかとを潰して履けるようになっているんです。柔らかいレザーで軽いんですよ。
F:メンズにはなかなかないデザインですね。
橋爪:ソールが薄く、しかもヒールがないから完全にフラット。ここまでペタンコなのはあまりないから、フォルムとしてすごく好きですね。オーラリーのパンツはクシュッと靴の甲に裾をクッションさせるデザインが多いので、靴はスッと落としていくような緩急の付け方ができるんです。オーラリーの服に一番合うように設計されている靴かな、と個人的には思います。
F:実際に履いて歩いてみるとどんな感じなのでしょう。
橋爪:クッション性はないので、最初はめっちゃしんどかったです(笑)。もう慣れたので全然大丈夫なんですけど。最近はトレンドとしてボリューミーな靴が多かったじゃないですか。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のぽてっとしたデザインの「ピロースニーカー」もたまに履いているんですけど、真逆のタイプです。
F:シンプルさが新鮮ですね。
橋爪:自分の体型にも合っていると思います。僕、身長はそんなに高くないので、ここまで靴が小さくてシュッとしているとラインがきれいに見える気がするんですよ。「ちょっとこぎれいな革靴を履きたいかも」というのが最近の気分なので、ほぼ毎日こればかり履いています。
F:靴といえば、美術館では靴音が鳴っちゃダメと聞きますが、どんな靴がおすすめですか。
橋爪:メンズシューズはそもそもあまり靴音が鳴らないので、僕は何も気にしていません。美術館の中で作品をゆっくり見るなら、ピンヒールとかじゃない限り、そこまで気にしなくていいんじゃないかな。むしろ「おしゃれして美術館に行こう」というマインドの方が大事だと思っているので、僕もそういう気分で行っています。自分の気分が上がる服を着て、より楽しんでほしいですね。
AURALEE × TEKLA パジャマ&温泉タオル
F:こちらはオーラリーと「テクラ(TEKLA)」のコラボレーションアイテム。意外にも「温泉」がテーマだそうですね。
橋爪:デザイナーの岩井良太さんがサウナ好きということもあると思うんですけど、まさかテクラとコラボレーションするとは思っていませんでした。テクラの品質の良さは知っていたので楽しみで、パジャマの上下セットと温泉タオルの3点セットを買いました。
F:実際に使ってみていかがでしたか。
橋爪:パジャマはごく一般的なコットンポプリンの薄いタイプ。これを機に、ちゃんとした襟付き、ボタン付きのパジャマを買ってみようかと思ったんです。セットアップで襟もきれいな形をしているので、もうちょっと暖かくなったらタウンユースで着ちゃおうかなと思っています。 オーバーサイズに作られていて、着心地もいいんですよ。
F:このタオルも温泉に持っていくためのものなんですね。
橋爪:そうそう、実際にやってみました。ループが大きいので、穴に通して首に巻けるんですよね。マフラーっぽくて面白い形だなと思って。
F:橋爪さんは温泉やサウナに行かれますか?
橋爪:取材ついでにその土地の温泉に行ったりしますね。直島には大竹伸朗さんの「I♥湯(実際に入浴できる美術施設)」があるので、来年の芸術祭の時に持っていったらいいかもしれない(笑)。
F:こんなにもオーラリーが好きな理由は?
橋爪:コートもそうだし、セーターも何枚か持っているし、もちろん定番のシャツやTシャツも。やっぱり自分のサイズに合うし、生地が良くて全然へたらないから長く使えます。デザインもタイムレス感があって、数シーズン前のものと今シーズンのものも合わせられるんです。あと一貫してニュアンスカラーだから組み合わせが色々楽しめて、汎用性が高い。シルエットと生地で主張しているブランドだと思うので、ロゴがバーン!とあるわけじゃないのに「あれ、もしかしてオーラリー?」と分かっちゃう。雰囲気で醸し出されるものがあって、そこがいいなと思うんですよ。
F:色が美しいアイテムを選ばれるのもアート業界の方らしいですね。
橋爪:柔らかいニュアンスカラーを使うから「ジル サンダー(JIL SANDER)」も好きなんですよ。個人的に主張が激しいものはあまり好みじゃないけれど、地味にはなりたくない。仕事柄、裏方なので黒や白の服が便利な時もあるんですが、人に覚えてもらう必要もあるのでそこは大事にしています。
Asics × THE MUSEUM VISITOR スニーカー
F:次は「ミュージアムビジター(THE MUSEUM VISITOR)」という韓国のブランドと「アシックス(Asics)」のコラボスニーカーですか。シャレが効いていますね。
橋爪:「ドーバーストリートマーケットギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA、以下 DSMG)」のインスタグラムで知って「ミュージアムビジター!? こんなの僕が買わずに誰が買う!?」という使命感で買っちゃいました(笑)。普段スニーカーは履かないんですが、これは例外です。普通に履きやすいですしね。
F:デザインについては?
橋爪:さりげなくミュージアムビジターのロゴが横に入っているだけ。でもアシックスの「a」を強調してタン部分に使うのは面白いですよね。このタンに機能性は何もないんですが、ロゴが再解釈される感じで。色は3色展開で、クリーム × ミネラルブラウンの組み合わせを選びました。
F:ミュージアムビジターは「着られるアート」をコンセプトにしているブランドだそうですが、他のアイテムもそういう感じなんですか?
橋爪:いや、そこまでド直球なアートという感じではなかったです。ブランドネームとプロダクトの関係性においてはこの靴が一番しっくりきた気がしますね。誰も分からないだろうけど、これを履いて美術館に行ってパンツの裾からのぞかせるとかわいいかもしれないですね。
F:ちなみにDSMGではショッピングすることが多いですか?
橋爪:定点観測的に行っていますが、何かが欲しいから行くわけじゃなくて、”ファッション文化の現在地”を見に行くという感じ。ブランドのラインナップがけっこう変わるし、ディスプレイもきれいなので、アートと近しい部分を感じます。来ている人や店員さんの服も面白くて気分も上がるし、つい行っちゃいますね。
F:アート目線で面白いお店は他にありますか?
橋爪:最近では「ジル サンダー 銀座」にびっくりしましたね。多くのラグジュアリーブランドが何らかの形でアートにコミットしている中、「ジルってアートをやりそうでやらないな」とずっと思っていたんですよ。そうしたらここに来て、エキシビジョンスペースを一番目立つところに作って、レイチェル・ホワイトリード(Rachel Whiteread、ターナー賞も受賞した現代彫刻家)の作品を設置していました。床のトラバーチンと全体が調和しているし、プロダクトの置き方も美術館の雰囲気に近く、ますますジル サンダーが好きになりましたね。
木村達哉「手掘り穴窯 土降り碗」
F:ではアート作品についてもお伺いしましょう。
橋爪:木村達哉さんの「手掘り穴窯 土降り碗」です。手に持つとずっしりと重いんですよ。「土降り」とあるように、碗の中には手掘り穴窯(地面をトンネル状にくり抜いた窯)の土が焼く時の温度に耐えられずに溶け落ちて残っています。これはいま主流の電気窯やガス窯だとありえないものです。京都のMtK Contemporary Artというギャラリーで、桑田卓郎さんがキュレーションした展覧会をやっていて、その中にあったこの作品に目が止まりました。無骨なフォルムと重厚感、碗なのに碗として使えない用途のなさに「なんだこれ?」と思って。
F:まるで火山から発掘されたような。
橋爪:そうですね。窯と土を同時に感じられる非常に珍しい作品であり、それがたまらなくいいなと思いましたね。
F:木村さんはもともとこういう作品を作る作家さんなのでしょうか?
橋爪:いえ、普通の碗も作っていらっしゃるので、これはイレギュラーな作品だと思います。1万年続く、人々の営みとしての焼き物に目線を向けて「自分ならどういうことができるのか」「土に触れるとはどういうことなのか」ということを考えている作家さん。1998年生まれで、どういう人かも全然知らなかったんですけど一目惚れして買った器です。器という名のオブジェのような作品。
F:アート作品の購入はちょっと勇気がいりますね。
橋爪:実はこれ、1万円ぐらいなんですよ。セラミック作品ってお椀やコップのようなものもあるので、価格帯がすごく広いんです。現代アートだとマルチプル的なのもあるけど、やはり一点ものが多いじゃないですか。それにペインティング作品とかだと触るわけにはいかないですが、セラミック作品なら感触を楽しめます。作品を通して自然のものとの接点ができるのは魅力ですね。
F:確かにぜいたくな体験かもしれません。
橋爪:あと作品って、我々よりもはるかに長い時間をこれから生きることになるじゃないですか。このセラミック作品も、よほど酷い環境に置かない限り、おそらく何百年単位で生き残っていくんです。作品を買うというのは、これから先の長い未来に思いをはせることでもあるんですよね。
F:作品に悠久の時が刻まれるわけですね。
橋爪:もし「アートが欲しいけど、まだ買ったことがない」という人がいたら、最初はポスターでもいいと思いますよ。何かを家に置くと、間違いなく景色が変わるので。あと自分の中で「違う扉が開く」というか、違う目線が絶対に生まれるのでおすすめしたいですね。
F:お気に入りのアートと暮らせば、ずっと鑑賞できますしね。
橋爪:そうそう、作品と一緒にいられる時間がめちゃくちゃ長いので、向き合い方がまた違ってくるんですよ。買うことは作家の応援にもなり、より良い制作環境や作品が生まれることにつながっていきます。特に若い作家を応援すると、後々にその作家が成長し、美術館で展覧会をするようになると「ここまできたか!」という風に感じますね。
F:実際にそういう関係の作家さんはいらっしゃいましたか?
橋爪:何年か前に「アートフェア東京」で毛利悠子さんの作品を買ったことがありました。当時はまだそこまで大活躍されていたわけではなかったですが、今年ヴェネツィア・ビエンナーレ(世界でもっとも長い歴史を誇る国際美術展)の日本館の代表作家になって、今アーティゾン美術館で個展をやっています。すごい作家になられてびっくりです。
F:それは感慨深いですね。
橋爪:自分と同年代、あるいはちょっと年下ぐらいの作家を見つけると楽しいですよ。20代の人だったら、まだ大学・大学院に在籍している、あるいは卒業したばかりの作家さんでどういう人がいるか探してみたり。同年代というだけで親近感が湧きますし、機会があれば作家さんとしゃべってもらいたいですね。生のコミュニケーションをとると作品の解像度が上がります。1人で行くと緊張しちゃうなら、友達と買い物ついでに行ってもいいと思います。
Anselm Kiefer 図録
F:次は戦後ドイツを代表するアーティスト、アンゼルム・キーファー(Anselm Kiefer)の図録。今年、東京で個展があったそうですね。
橋爪:今年は“キーファーイヤー”だったんですよ。キーファーも来日していらっしゃったので、お目にかかれて光栄でした。これは「ファーガス・マカフリー(Fergus McCaffrey)東京」というギャラリーで開催された個展の図録ですが、通常ギャラリーでこんな立派なものは作らないんですよ。これは美術館の図録レベル。図版と論考によって構成されていて、色々な人の寄稿もあり「これは手に入れないと」という感じでした。
F:キーファーはナチスといったドイツの歴史などをベースに、大規模な作品を手掛けるアーティストというイメージがあります。
橋爪:僕も「ギャラリーという空間でどういう作品を出すんだろう?」と思っていたら、ガラスケースに入ったオブジェ作品がインストールされた見事な個展でした。人類の負の歴史をここまで叙情的に作品に落とし込み、人々に美しいと思わせてしまう彼の力量はすごいなと改めて思いました。
F:今年のベスト10に入りますか?
橋爪:間違いなく自分のベスト10には入ります。キーファーの展覧会を日本で見る機会はけっして多くありませんし、来年は京都の二条城でキーファーの大きな展覧会が予定されているので、それに向けて気分が盛り上がりました。二条城は世界遺産だし、来年開催される日本の展覧会ではトップクラスの注目度じゃないですか。
F:ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督によるキーファーのドキュメンタリー映画「アンゼルム」も今年公開されましたね。ヴェンダース監督は彼をどういう人物として捉えていますか?
橋爪:インタビューで尋ねたら「彼は完全な意味での芸術家です」と。絵も描くし、彫刻も作るし、ドローイングもなんでもやる。かつ人類の負の記憶も含め、宗教や宇宙といったあらゆるものを作品に落とし込んでいる。そういう意味で彼は完璧だと言っていて、そうだろうなと思いました。
F:ところで展覧会で図録やグッズを買うことは多いですか?
橋爪:いや、我々は参考資料として図録をもらうのが業界のルーティンなので、家に山のようにあって嬉しい悲鳴です(笑)。ミュージアムグッズは面白いものだったら買っちゃうかな。今年、初めて太宰府天満宮に行ったんですよ。アートが大好きな若い宮司さんがいて、現代アートに力を入れているんです。境内に色々な作品が常設されていて、ローレンス・ウェイナー(Lawrence Weiner)という、文字を使うアーティストの作品が地面に大きく書いてあったりして、面白い場所でした。オリジナルグッズのトートバッグがあったのでお土産に買っちゃいました。
Louis Poulsen「パンテラ 160 ポータブル」
F:次はデンマークの照明ブランド「ルイスポールセン(Louis Poulsen)」のランプ。半球形シェードが優雅で、北欧デザインの代名詞となっていますね。
橋爪:「パンテラ 160ポータブル」です。ヴァーナー・パントン(Verner Panton)によって70年代にデザインされたもので、いまだに新しさを感じさせるところがまさにマスターピース。しかもポータブルなので、家の好きなところに持ち運べます。パソコンを使う時は近くに置いて作業したり、本を読む時に本棚の方に持っていったり。
F:充電式だとそういうところが便利ですね。
橋爪:今年のバージョンでタイプCになったのかな。僕は明るいのが嫌いで天井照明はつけないので、基本的に間接照明で夜を過ごしているんです。なので明るさ調節できるものが良くて。これはセンサータッチ式になっていて、1回押すと弱、中、強と切り替わります。もう1つ真っ白のパンテラを持っているんですけど、それはボタンがついていて、ポチポチと変える仕様です。これはボタンがなくなった分、デザインがスッキリしましたよね。
F:オリジナルは高いですけど、このサイズだったらお値段も手頃ですよね。
橋爪:そうなんですよ、たぶん3万円台じゃなかったかな。もしかしたらギフトにもいいかもしれないですよね。オブジェとしてもやっぱりきれいで、シルエットが美しい。こういうニュアンスカラーなら、家に置いてもすごくなじむんですよね。
F:橋爪さんはインテリアにもこだわっていますか。
橋爪:いえ、やはり予算上、全部には注ぎ込めないというか(笑)。優先順位を決めるとするとファッションとアートの方が上なので、インテリアは「余裕があれば」くらいかな。
F:ファッションはアートと並列に置いているんですか。
橋爪:僕の中で同レベルです。ファッションがないとマジで生きていけないですし、職業的にもアートエディターをやっている以上はちゃんとした服装をしていたいじゃないですか。ある程度、自分のキャラクターをちゃんと服装で伝えたい。ファッションって自分の考えを表すための1つのアイテムだと思っているので、自分の中でめちゃくちゃ大事ですね。
今年の買い物を振り返って
F:今年のお買い物を振り返ってみていかがでしたか?
橋爪:今年はあまりにも忙しすぎて買い物に時間を割けなかったかもしれないです(苦笑)。今日持ってきた物もほとんど衝動買いじゃないかな。さすがにもうこの年になってくると自分の中でテイストが出来上がっているから、そこから外れたものは買う対象にはならないというか。「ファッションとして面白くて好き」というのと「自分のリアルクローズとして着る」という線引きがあるかもしれないですね。ランウェイの動画や「ファッション通信」も見たりしますけど、「あれが着たいから見る」ということではない気がします。
F:ちなみにランウェイで好きなブランドは。
橋爪:「プラダ(PRADA)」と「ミュウミュウ(MIU MIU)」。レム・コールハース(Rem Koolhaas)率いる建築設計事務所「OMA」がセットを手掛けたりと、ランウェイの作りこみ方がすごいので。あと巨大オブジェをランウェイに設置したりする「ロエベ(LOEWE)」も好きです。
F:さすがにアートとファッションを愛する方らしいチョイスですね。お仕事に関して、2024年はどのような1年でしたか?
橋爪:今年はあらゆる場所でアートイベントが開催され、展覧会にも多くの人が訪れました。うちは毎年、美術館の入場者数の調査をやっていて大晦日に記事を出すのですが、その数字がどうなるか楽しみではあります。コロナ禍からの回復傾向は昨年も見られたので、さらに伸びてるといいな。インバウンドの訪問先の一つとしても美術館は重要な場所だと思うので、今の傾向はこれからも続いていくんじゃないかと期待はしていますね。
F:紙面の美術手帖は読み応えがありますし、ウェブ版は時代に合っていますね。SNS発信も、美術館に行く動機につながっているのを感じます。
橋爪:そうですね。うちはどちらかだけじゃなく、両方あることが強みだと思っています。紙は紙で長い歴史がある媒体ですし、時間に左右されないストック型の特集は、紙じゃないとなかなか残せなかったりするので。一方で、ウェブは速報性や拡散力の強さがあるので、両輪のバランスで美術手帖ならではの影響力を持てればと思っていますね。
F:来年は二条城の取材をはじめ、また日本各地を回られますよね。
橋爪:来年は特に“芸術祭イヤー”なので日本各地を回ります。大きいものでも「瀬戸内国際芸術祭2025」「あいち2025」「岡山芸術交流」の3つはマストチェックだと思います。あと美術手帖はサブスクリプションもやっているので、有料会員限定のトークイベントや鑑賞会、映画の試写会など様々なことをやってきました。来年もオフラインの場を設けてユーザーの方々との接点を持っていきたいですね。
■橋爪勇介
1983年生まれ。立命館大学国際関係学部卒業。「新美術新聞」(美術年鑑社)に記者として従事し、2016年に美術出版社に入社。2017年にウェブ版「美術手帖」の立ち上げに携わり、副編集長を経て、2019年に編集長に就任。@yusuke_hashizume
photography: Harumi Obama
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