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ゾゾの澤田宏太郎社長が語る次の成長戦略 若年層などの開拓で成果、買う以外のエンタメ性も

ゾゾの澤田宏太郎社長が語る次の成長戦略 若年層などの開拓で成果、買う以外のエンタメ性も

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通販新聞

 ZOZO(ゾゾ)は商品取扱高8000億円、アクティブ会員数1500万人を次の目標に据え、より幅広い層の取り込みや、〝売ること〟より手前の「作る」「伝える」領域の強化、テクノロジーの収益化などに取り組んでいる。AI活用については業務効率化を推進するチームを発足して成果も出始めている。社長就任から5年が経ち、変化の早いEC業界において盤石な経営基盤を築きつつある同社の澤田宏太郎社長兼CEOに、次の成長戦略などを聞いた。

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――社長就任から5年が経った。期間の大半がコロナ禍での舵取りで重視したことは。

「『ゾゾタウン』についてはメリハリをきかせた。コロナ禍では、実店舗が閉まっていて仕方なくECを使う人も多かったが、『ゾゾタウン』は1回使ってもらえれば、『けっこう便利』と感じてもらえて、その後何回も使ってもらえることが分かった。長い時間をかけて改善し続けてきたサイトのUI・UXの優位性などが活きたと思う」

「そこで、新規顧客を獲得することにリソースを集中させるなど、シンプルな戦略をとった。具体的にはテレビCMを積極的に放映したりした。一方でリピーターを増やすためには、奇をてらったことをするというよりも、細かいことの積み上げを重視してきた」

――コロナ禍を経てブランドの意識も変わった。

「コロナ禍を過ごした結果として、ECとリアルの垣根はより低くなった。当社が想定していた時期が2~3年早まった印象だ。ECチャネルの成長率が高い中でも、『やはりリアルは大事』というせめぎ合いがあったのがコロナ直前で、コロナ禍では『売れるチャネルが正義』ということになり、今はブランドさんの意識も変化し、どちらかのチャネルに偏重している感じはない」

――前期のゾゾタウンの商品取扱高は約4600億円で、コロナ直後の20年3月期から1390億円程度伸ばした。伊勢丹新宿本店が1000億円伸ばして約3700億円だったので、ゾゾタウンの売る力は相当大きい。

「『ゾゾタウン』にはインバウンドの恩恵はないので、国内需要だけでその水準まで取扱高を伸ばしたという自負はある」

――今後、全体の商品取扱高として、前期の5370億円から8000億円規模を目標に掲げている。

「着々と手は打っている。今のところ、顧客数拡大の観点では、特定のセグメントに狙いを定めている。この数年は10代後半の女性とママ層をターゲットにした施策を強化していて、どちらの層もファッションアイテムを購入するときに思い浮かべる売り場として『ゾゾタウン』の比率が上がってきている。

――元々、ゾゾタウンの認知度は高い。

「知っていても自分事になっていないので、ウェブCMなどを展開して『ゾゾタウン』の売り場としての想起率を高めている。そもそも、ファッションアイテムを買うときにECチャネルが選択肢に入っていない人はまだ多い。なぜかと言うと、ECを使わない人にとって、リアル店舗での買い物はとくに不便を感じていないからだと思う。わざわざネットで服を買う理由がない。そういう人たちに対して選択肢の一つに『ゾゾタウン』を入れてもらう施策として、ウェブCMを展開した」

「例えば、ママ層に向けたウェブCMには安達祐実さんがママ役で登場し、日常でよくあるシーンを描きながら、『ゾゾタウン』はキッズアイテムも豊富にあることを紹介した内容で、『ゾゾタウン』の特設ページ以外ではユーチューブやインスタグラム、TVerで配信した」

―─購買頻度の向上については。

「購買頻度を高めるためには、売り方などはもちろんあるが、ファネルのもう少し上のところで勝負したい。服が生活の中で関係するあらゆるところで、ゾゾを想起してもらうことが大事だ。その一環として、スタートから10年が経っていたファッションコーディネートアプリ『WEAR(ウェア)』を24年5月に『WEAR by ZOZO』としてリニューアルした」

――SNSが競合する。

「確かに、そのポジションはSNSが全盛で、インフルエンサーなどをSNSでチェックして、その人が着用している商品や似たような商品を探したり、その場で買ったりといった消費行動が起きている。一方、インフルエンサーのSNS発信がすべての人に刺さるわけではないので、ひとつのメディアとして『ウェア』の価値があると思っている。以前の『ウェア』はSNSの要素を持っていたが、そこを弱めてメディアに仕立て上げているところだ。まだ道半ばだが、月間のアクセス数は対前年比で伸びていて、もっと加速させたい」

――アクセス数以外の成果は。

「『ウェア』のリニューアルに合わせて『ファッションジャンル診断』や『ウェアお試しメイク』機能などを搭載していて、とくに新規ユーザーの獲得に診断コンテンツが寄与している。『ウェア』も若年層に使ってもらいたいので、いったん若年層に的を絞って広告を打ち、成果が出ている」

「また、『ウェア』から『ゾゾタウン』を訪れて買い物をしてくれるユーザーも増えている。『ゾゾタウン』全体の取扱高からすると、そこまで大きなインパクトはないが、ファネルの上流を押さえる戦略が機能し始めていると感じる」

――表参道で展開する超パーソナルスタイリングサービス「niaulab(似合うラボ)by ZOZO」では、〝似合う〟の提案にAIも活用している。

「『似合うラボ』でのAI活用と、最終的に『ウェア』や『ゾゾタウン』に実装するためのAI活用があって、前者は、ラボ内でAIを活用する割合が少しずつ高まってきている」

「後者はもっと膨大なデータと研究・分析が必要で、あと1~2年必要かもしれない。現時点ではまずは『ウェア』に実装するイメージだ。『ゾゾタウン』はシステムが入り組んでいるので、販売に直結しない機能を実装するとコンバージョンにも影響してしまう。『ゾゾタウン』はあまりごちゃごちゃさせないというか、メディア的な要素を入れるのは良くないので、『ウェア』内で『似合う』のソリューションを提供できるようにし、そこからさらにそぎ落としたものを『ゾゾタウン』に実装していくことになると思う」

――似合うラボに限らず、AI活用や自動化の取り組みに幅広く取り組んでいるが、AI技術開発の基本的な考え方は。

「AI活用や自動化の取り組みは商売に使う技術と、業務効率化に使うものとに分かれるが、後者についてはチームを作っている。AIで何ができるかを分かっているメンバーが全部署を回って業務内容などをヒアリングし、AIで業務効率を改善できそうな数十のテーマを持っているが、けっこう応用の利くものも多い」

――商売に直結するAI活用については。

「ビジネスに活かすAI活用も旧来からの機会学習と生成AIの二つがある。旧来からのAI活用については進んでいて、『ゾゾタウン』上でのパーソナライズ化された検索結果の表示順などのアルゴリズムにも活かされている」

「生成AIについては、とくに『似合う』の文脈を作る上での使い方が日々進化しているので、グローバルスタンダードを追いながらも、当社のオリジナリティを組み込んだ形でのスタイリストAIを目指していく。スタイリストAIはどこかのタイミングで必ず出てくると思うので、一番近くにいる当社が最初に実現したい」

――予測系のAI活用についてはどうか。

「『ゾゾタウン』での全体の売り上げ予測などは造作もないレベルでできるが、それが単品となると、だいぶ難しくなる。唯一分かるのは、初速からのフォローがどれくらいになるかで、単品の初速を予想することは難易度が高い」

――今後の拡大方針で掲げる生産支援については。

「生産支援の部分は足が長い話で、1~2年ですごい結果がついてくるというものではないが、着実に取り組んでいく。ゾゾとしてゾゾスーツやプライベートブランドを展開してみて、服をデザインするという領域はやはりブランドさんや商社さんが得意で、当社ならではの強みはあまりなかった」

「そこで、当社は作る領域に特化した。アパレルの工場はDX化が遅れていることが多い。当社の知見を提供することで、作り方そのものを変えることができる。『Made by ZOZO(メイドバイゾゾ)』の仕組みでは、受注してから商品の発送までを最短10日で行える。『ゾゾタウン』で売ってから生産し、データで判断することができるので、売れ筋のデザインが分かってから、色バリエーションを増やしたり、生地をシーズンに合わせて増やしたりといったことも可能だ」

――ブランド側の要望にどの程度応えられるのか。

「受注生産とは言え、何でも作るとなるとコストがかかり過ぎるので、ある程度、生産側としての制約を設けていて、作ることができる商品カテゴリーもそこまで多くはないが、パンツなどは得意だ。〝プラモデル化〟と呼んでいるが、パーツを組み合わせて作ることで、ブランドさんの要望に8~9割くらいは応えられるようになってきている。いま、商品を企画してから72時間後までに『ゾゾタウン』での販売を開始する『72時間モデル』にトライアルしているところだ」

――サステナブルの観点からも受注生産型のスキームは好まれそうだ。

「セレクトショップさんをはじめ、さまざまなアパレル企業に注目してもらっていて、『メイドバイゾゾ』の仕組みを活用した専用ブランドを展開している企業もあるし、EC専業ブランドも参画してもらっている」

――古着の「ゾゾユーズド」も伸びているが、商品調達面は「買い替え割」が中心なのか。

「古着の調達は、『ゾゾタウン』で購入したアイテムを下取りに出し、下取り分を値引きした価格で商品を購入できる『買い替え割』の利用者が非常に多く、『ゾゾタウン』で買って『ゾゾタウン』で売るという流れが確立している。『ゾゾタウン』で取り扱いのないアイテムをついでに送ってもらうことはできるが、そこまで力を入れてはいない」

「ユーズドビジネスの肝は、査定を含めた買い取りのオペレーションコストで、採算が合うのは単価が高いラグジュアリーブランドのアイテムだが、その領域はすでにレッドオーシャンで、在庫の取り合いが起きている」

―─「ゾゾユーズド」の主戦場は。

「新品単価がそこまで高くない商品が主戦場なので、オペレーションコストを抑える必要があるが、『ゾゾタウン』で購入してもらった商品を買い取ることで、コストを抑えられるようになった。少し低単価の商品でも採算がとれるのが当社の強みだ。ユーズドの顧客セグメントも新品とあまり変わらない。新品を買うつもりだったけど、あまり使用されていないユーズド品が安く買えるのならそちらにしようというユーザーもいる」

「普段使っているアイテムを『売ってもいいかな』と一番思うのは新品を買う時なので、そのタイミングで『買い替え割』を案内して利用してもらっている」

――古着でも新品の写真を使っている。

「その通りで、ユーズド品も『ゾゾタウン』で販売したときの新品の画像を使っている。個人間でユーズド品を売買するサービスでは商品の状態が分かる写真がないと安心できないと思うが、『ゾゾユーズド』は当社がしっかり査定しているというバックグラウンドがあるので、画像はコストをかけずに新品のものを使い、テキストでユーズド品のコンディションなどを記載することで問題なく購入してもらっている。古着市場はまだまだ伸びると見ていて、今期も『ゾゾタウン』全体の成長率よりも『ゾゾユーズド』の伸びの方が高く、195億円の取扱高を計画している」

――広告事業は2ケタ成長が続いている。

「『ゾゾタウン』では、検索結果のPR枠に商品を表示する検索連動型の『ZOZOAD』をはじめ、商品購入完了時に広告を提示できる『ディスプレイ広告』、チラシやサンプルを同梱できる『同梱広告』、最適なユーザーセグメントにDMを送る『ZOZOTOWN DM広告』など、さまざまな広告メニューを用意している。前期の広告事業の売上高は約97億円、今期は115億円を計画していて、2ケタ成長を維持したい」

――5つの拡大方針で掲げる「テクノロジーの収益化」で、もっとも早く収益化できそうな技術は。

「米国で展開しているボディーマネジメントサービス『ZOZOFIT(ゾゾフィット)』は現在、『アプリのみ』と『アプリ+スーツ』という二つのサブスクプランを提供していて、前者は月額14ドル99セントを6カ月間無料で、後者は199ドルを159ドル99セントの割引価格で提供している。無料期間にユーザーを獲得し、想定よりもニーズがあることは分かった。収益化は来年の課題だ」

「ゾゾスーツを着なくても体型を測定できるようになったことは大きな進歩だ。スマホのカメラを使ってわずかな誤差の範囲で体型を測定できる技術はほかにないと思うので、フィットネス以外の領域でも使えるようにしたい」

――買う以外のエンターテイメント性の強化は。

「『ゾゾタウン』では、気象データと連携することで、ユーザーの現在地の天候に合わせたアイテムをレコメンドする取り組みが始まっている。今後は、グループ会社で持っているアセットをもっと使えたらいい。今は『ヤフー天気』のアプリコンテンツに当社の画像をけっこう使っている。『ウェア』に蓄積しているコーディネート画像は投稿されたタイミングから季節性が分かるし、投稿された日の気温も分かるので、冬だけど暖かい日は、『ヤフー天気』に過去の同じような日のコーディネート画像が自動で掲載されている」

「今後は例えば、そうした仕組みに、もう少しパーソナライズ化された『似合う要素』を入れられれば、毎日見るメディアとしてのエンタメ性が高まると思う。ほかにも、気象データと連携して、『過去にゾゾタウンで購入したこの服を着るのに絶好の日です』といったような提案もできれば面白い」

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