ネットスーパーを巡る各社の動きが活発化している。コロナ禍を機に日配品や食品など日々、消費するものをネット上で購入し始めた人は少なくなく、ネットスーパーサービスの新規客が増え、一部はそのまま定着化している。こうした機を逃すまいと仮想モール運営事業者、GMSなど様々な事業者が日用品の即配サービスを含むネットスーパー事業に注力しているが、競争は激化しており、各社がしのぎを削っている状況だ。主なプレイヤーの動きとは――。
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楽天は西友と離れ独自展開を開始
楽天グループでは、西友との合弁会社として、2018年4月よりネットスーパー事業「楽天西友ネットスーパー」を運営してきたが、昨年12月20日に合弁関係を解消。楽天が倉庫型ネットスーパー事業の単独運営を、西友は実店舗を起点とする店舗出荷型ネットスーパー事業を単独運営する形態へ移行することを発表した。
8月8日には、子会社「楽天西友ネットスーパー」の社名を「楽天マート」に変更。これに伴い、9月24日にネットスーパー事業のサービス名も「楽天マート」へと変えた。改称後も、生鮮食品、乳製品、冷凍・冷蔵食品などの食品を中心に、日常生活に必要な商品を、最短で注文を受けた当日中に、ネットスーパー専用倉庫から配送する。
サービス分離直前の楽天西友ネットスーパーにおける、店舗出荷と倉庫出荷の売り上げ比率はほぼ半々。コロナ禍においては倉庫出荷が大きく伸びていた。楽天マートの盧誠錫社長は「西友は実店舗のスーパーマーケットがベースであり、楽天はEコマースがベースということで、よりネットスーパー事業を大きくしていく上で、方向性の違いが生まれた」と明かす。西友は実店舗との連動を重視する一方で、楽天は楽天経済圏と連動する形でネットスーパーを拡大していく方針だ。
盧社長は、倉庫型ネットスーパーの強みについて「店舗型ネットスーパーは『その店舗で売っているものがネットでも買える』という利便性がメリット。一方で倉庫型なら、倉庫にある商品を全て売ることができる」と話す。現在楽天マートでは、港北(神奈川県横浜市)、松戸(千葉県松戸市)、茨木(大阪府茨木市)にある倉庫を拠点として、首都圏、関西圏の約1200万世帯を対象にサービスを展開しているが「この規模の商圏をカバーしようとすると、数百店舗を構えなければならないが、倉庫型なら3拠点でまかなえる」(盧社長)。
例えば新商品を扱う場合、たくさんの実店舗の棚に商品を置くのは相当な労力がかかるし、仕入れロットも大きくなる。一方、倉庫型なら拠点に在庫を配置し商品ページを作成するだけだ。そのため「売れるかどうか分からない」というアイテムでも、小ロットで仕入れて売れ行きを見ることができる。
そのため、倉庫型は「楽天市場」や「楽天ふるさと納税」などのグループサービスで扱う商材との相性が良いわけだ。グルメや地域の特産品といった楽天ならではの商品開発や品揃え強化にも取り組む予定で、具体的には楽天ふるさと納税に参画する自治体と連携し、各自治体で取り扱う返礼品提供事業者の商品を販売していく。楽天と西友の協業が終わる来年以降から、徐々に品揃えが変わっていくという。まずは楽天と結びつきの強い店舗・自治体や、ECコンサルタントから推薦のあった商材から取り扱う。
盧社長は「普通のスーパーでは売っていないような商材を、楽天のネットワークを通じて小ロットからでも仕入れ、ネットスーパーという業態で関東・関西の顧客に販売できるのは大きな強みだ」と強調する。品揃えの強化を進めるとともに、グループサービスと連携することで、倉庫型ネットスーパーの強みを活かす狙いだ。
一方、これまでは「楽天西友ネットスーパー」だったこともあり、西友の「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」に引かれてサービスを利用していたユーザーが多いことも事実。盧社長も「『楽天』というブランドで、食品スーパーを思い浮かべるユーザーは現時点ではいない。『西友』はスーパーのブランドとして確立されているので、そこが無くなるのは大きなチャレンジだ」と認める。
一方で、楽天市場や楽天ふるさと納税などのグループサービスにおいては、「食品」は欠かせない商材であり、ユーザーの認知度も高い。盧社長は「『お取り寄せグルメ』や『ふるさと納税』というイメージしかなかったものを、『デイリーユースの食品スーパーとしての楽天』というイメージに徐々に変えていなかればならない。そのために大事なのはやはり品揃えだ」と決意を語る。
ネットスーパーは日常的に利用するユーザーが多いだけに、「顧客接点の増加」という点では、楽天経済圏においても重要なピースとなる。西友との合弁を解消することで顧客離れを招かないためにも、品揃えとともに、食品など日用品の価格面での優位性も大事になってくる。楽天経済圏ユーザーに利用してもらうためにも、「楽天ポイント」の付与が大きなカギになりそうだ。
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