ステルスマーケティング依頼の多くは、日本進出を狙う海外企業に主導されている可能性がある。昨年10月以降のステマ規制の導入後、多くの日本企業はこれを遵守する。一方、規制が及びにくい海外企業では、ステマが横行しているという。過度な規制は、国内市場における日本企業の競争力を低下させる恐れがある。
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「ステマ依頼の多くは海外企業」。今年11月、都内では韓国コスメを紹介するあるイベントが行われた。ここ数年、若年層の支持を追い風に、韓国コスメの日本進出が相次いでいる。招待されたインフルエンサーからは、同様の認識が聞かれた。
参加したインフルエンサーは、「韓国企業はダイレクトメッセージで直接働きかけてくる。受ける時もある」(60代女性)、「化粧品だけでなく、サプリ、ファッションも同じ。海外企業からのステマ依頼はたくさん」(20代女性)、「規制後に依頼が減った認識はない」(40代女性)と声を揃えた。一方で日本企業は、「規制を守っているのではないか。仲介会社を通じてたまに依頼される程度」(前出の60代女性)という。
ある企業調査では、ステマ依頼が「減少した」と感じた層は、ステマ規制の導入後、3割から7割に伸びた。「依頼された経験」も4割から2割に減少した。インタビューに協力が得られたインフルエンサーの認識を総合すると、減少したのは日本企業からの依頼とみられる。
消費者庁は、今年8月と11月、立て続けにステマ規制による景品表示法処分を行った。対象は、RIZAPと大正製薬。いずれも「PR」付きのインフルエンサーの投稿を企業サイトに転載した際、「PR」記載を外していたことを問題にした。
ただ、消費者庁が示すステマ規制の運用基準でも「企業サイト」は、CMや新聞広告と並び、一般的に消費者から広告と認識されるものとして扱われている。「それでも分かりづらいケースがある」という〝例外事例〟を取り締まったものだ。処分企業も「担当者は問題がないとの認識だった」としていた。
本来、取り締まるべきは、ウェブで氾濫している「PR」表記等がないステマ投稿だろう。消費者庁は、調査の端緒、インフルエンサーや代理店への聴取など調査手法を開示していないため分からない。こうした投稿がないか調査を行っているのだろうか。
事業活動に影響も出始めている。前出イベントに参加した20代のインフルエンサーは、紹介しやすいブランドについて、「知名度のある日本ブランド→韓国ブランド→日本の無名ブランド」とランク付けした。理由は、「著名な日本ブランドは、企業サイトで特性や成分の目的を知ることができる。韓国ブランドは、知らなくても〝この子は最先端の投稿をしている〟というイメージになるから」。
別のインフルエンサーは「今は薬機法、景表法の表示規制が厳しく、何も紹介できない。隙間を狙うが、書けることは似たり寄ったり」(前出の60代女性)と話す。
日本国内の規制強化、日本企業を対象にした執行で割を食っているのは日本企業といえそうだ。度重なる執行で日本企業の緊張感は強くなるが、取り締まりが難しい海外企業のステマがなくならないのは、規制を導入した消費者庁の目的ともずれている。
SNSマーケティングの重要性が年々高まる中、日本企業はこれを有効活用できず、規制の矢面に立っている。インフルエンサーがランク付けしたように、国内の新興企業に不利な状況が続けば、日本企業の競争力がますます低下していく。
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