スイス発のスポーツブランド「On」の日本法人であるオン・ジャパン株式会社。Toshimitsu J. Rohlich(TJ)さんはアメリカと日本を含めたアジア地域でマーケティングやオペレーションの経験を経て、現在は「On」のヘッドオブセールスに従事している。なぜ職務領域を越えて「On」への入社を決めたのか。また、ヘッドオブセールスとして考える「On」の日本市場における戦略とはーー。アメリカと日本での豊富な経験を持つTJさんの視点を伺った。
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Toshimitsu J. Rohlich(TJ)さん/オン・ジャパン株式会社 ヘッドオブセールス
大学で日本語を専攻後、日本とアメリカでキャリアを積む。英会話講師、広告代理店、ローカライゼーション、スポーツ業界など多岐にわたる経験を持つ。2023年11月よりオン・ジャパン株式会社のヘッドオブセールスに就任。グローバルな視点と日本市場への深い理解、これまでのマーケティングやオペレーション経験を活かし、「On」ブランドの成長を牽引する。
自分らしさを発揮できる、「On」ならではの雰囲気
― TJさんは、日本とアメリカの両方でキャリアを積まれていますね。オン・ジャパンに入るまでのキャリアについてお聞かせください。
母が日本人で日本語にずっと興味があったこともあり、大学卒業後は日本で英会話講師として働き始めました。様々な経験を経て、アメリカのテレビ番組でゴルフに関わる仕事の機会を得ました。もともとスポーツに興味があったため2010年に、一度アメリカに戻りました。スポーツ業界への扉が開いたのはこの時です。
その後、2012年に大手スポーツアパレルブランドへ転職し、日本法人のサポート役として商品企画やマーチャンダイジング部門で働き始めました。北米ビジネスやアジア全体のマーケティング、オペレーションを担当した後、2021年8月に同社の日本法人で新しいポジションに就きました。
― 10年ぶりの日本ですね。そこから「On」へ入社したきっかけや決め手は何だったのでしょうか。
2023年の夏頃、次のキャリアを考え始めていた時に友人から「On」の求人情報を紹介されたのがきっかけです。友人は元サッカー選手で、怪我の経験から「On」の商品の良さを実感していて、私も調べるうちに興味を持ちました。
入社の決め手は、面接プロセスを通じて「On」の魅力を強く感じたところです。特に印象的だったのは、自分らしさを出せる雰囲気ですね。これまで多くの面接を受けてきましたが、今まで感じたことのないほど“オーセンティシティ”を表現できる環境だと思いました。私にとって「本当の自分を表現できる」ことは、仕事をする上でとても大事な要素なのです。
また、面談の中でヘッドオブセールスというポジションの役割が明確になったことも大きかったです。ヘッドオブセールスは、自分で営業をするよりも、チームと話し合い、方向性や戦略を立てる役割がメインです。セールスポジションの経験はなくても、他の経験を十分活かせると提案してもらい、ポジションへの理解がより深くなりました。面談でオープンに話し合えたことで、疑問や懸念をクリアにして入社できました。
商品特性に合わせた販売戦略の展開
― 「On」の日本市場における戦略についてお聞かせください。
オン・ジャパンの戦略の中心にあるのは、BtoBビジネスの安定的な成長です。日本市場はアジア太平洋地域の中で最も成熟した市場のひとつであり、継続的で安定した売上を生み出すことが期待されています。
そんな中、特に力を入れているのは、商品を適切な販売チャネルで提供することです。今までは商品数が少なかったため、どのチャネルにも同じ商品を紹介していました。しかし、今は様々なデザイン性、機能性を兼ね備えたシューズが豊富にあります。そのため、最高性能のランニングシューズはスポーツ専門店で、デザイナーとのコラボレーション商品はファッション店舗で販売するなど、商品特性に合わせた展開を行うフェーズに入りました。これにより、各販売チャネルの顧客層に適した商品を提供し、ブランド価値を最大化していきます。
― お客様の属性にあった商品を提供することが、今後の戦略の大きなファクターになるんですね。
「On」のブランド認知度はまだ10%程度ですが、これは大きな成長の余地があることを意味します。多様な販売チャネルを通じて、まだ「On」を知らない消費者にもブランドを紹介できる点がBtoBビジネスの大きな利点だと思います。
例えば、スニーカーショップで買い物をする20代、30代のお客様は、他のブランドを目的に来店しても、そこで「On」の商品を見て興味を持つ可能性があります。また、ランニング専門店ではランナーに直接アプローチでき、商品の特徴や機能性を詳しく説明することができます。
BtoBパートナーとも協力しながら販売戦略を立案し、安定的にビジネスを成長をさせていきたいと考えています。
― グローバル市場と比べて、日本市場の特徴はどのようなものでしょうか。
日本の消費者はとても商品に詳しく、品質への期待値が高いのが特徴です。デザインやブランド力だけでなく、履き心地や機能性まで細かく見て判断します。この商品に求める高い水準こそが、私たちに商品のプライスバリューを常に意識させ、商品の価値を向上させる原動力となっています。
例えば、マクドナルドのビッグマック指数を見ても、世界的に見て日本は価格が低い一方でサービスレベルは高く、商品の見た目も美しいです。日本の消費者は高品質な商品とサービスに慣れ親しんでいるところが特徴のひとつだと考えます。
― そういった特徴をもつ日本市場も含めて、BtoBのビジネスにおいて重要なポイントは何でしょうか。
消費者に対して、商品を適切に説明することが大切です。そのため、私たちはテックレップ(商品知識や販売能力などを卸先である専門店の販売スタッフに教えることを専門とするチーム)を設けています。
これにより、まずは卸先の販売スタッフ自身に「On」のファンになってもらうのです。そうすることで、店頭に立った際により正しい知識と想いを持って消費者へ説明ができるようになり、お客様に納得して「On」の商品を選んでいただけると考えています。
新領域開拓とチーム成長が今後のカギ
― TJさんの今後の目標について教えてください。
先ほど申し上げた通り、オン・ジャパンの目標は安定的な成長、そして認知の拡大です。それを達成するための方法のひとつとして、新しい事業領域の拡大を考えています。これまでランニングがメインでしたが、テニスやアウトドア、トレーニングなど新しい分野への展開を検討しています。これらの新領域で、どの商品をどのチャネルで販売するかを戦略的に考えていくのが私の目標であり役割です。
また、チームマネジメントも着実に行っていきたいです。セールスチームのメンバーが増え、一人ひとりが成長できる仕組みづくりが重要だと実感しています。自分だけでなく、チームと一緒にビジネスを作っていきたいですね。
― そのような目標を実現するためには、どのような人材がマッチしているでしょうか。
ブランドの価値を理解し、それを適切に伝えられる人材です。「On」はまだ成長段階にあるブランドなので、状況に応じて柔軟に対応できるフレキシビリティが重要です。例えば、新しい課題に直面したときに、慌てずに冷静に対応し、様々な意見を聞きながら解決策を見出せる人が理想的ですね。個のKPIだけを追うのではなく、全体を俯瞰し、ブランドはどう表現していくべきかを一緒に考えられる人がマッチしているでしょう。
また、市場動向や販売データを的確に分析し、次の戦略を立てられる能力も必要となります。新しいカテゴリーの成長戦略などを考える上で、ぜひ大きな力となっていただきたいです。
― 最後に、オン・ジャパンで働く魅力について教えてください。
「On」は自分らしさを出せる環境を大切にしています。私自身、面接プロセスで、“オーセンティックな自分”を表現できたことが決め手になりました。自分の個性や強みを素直に表現できるを伝えられる環境は、それだけで仕事のパフォーマンスに良い影響を与えると考えます。そして、その環境は一朝一夕でつくれるものではありません。それこそOnの魅力であり、カルチャーなのです。このカルチャーに共感する人はぜひエントリーをしていただきたいですね。
また、私の経験からも言えますが、言語力を活かして仕事に入り、そこから仕事の内容を学んでいくというキャリアパスも十分に可能です。多様なバックグラウンドを持つ方々と一緒に、ブランドを日本で成長させていきたいです。
文:金井みほ
撮影:船場拓真
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