『プラグマガジン』がグッドデザイン金賞に
60年以上にわたり「Gマーク」とともに広く親しまれているグッドデザイン賞。この度、私たちが手がける岡山県のファッションカルチャー誌『プラグマガジン』が、「明日を拓く」「未来を示唆する」デザインとして、5000件以上の審査対象の中から「グッドデザイン・ベスト100」に選出。さらに審査を経て、トップ20であるグッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受賞することになりました。金賞以上の受賞は「岡山県の企業」では初めてのこと。また、「雑誌」としても史上初の受賞となりました(受賞歴は受賞者調べ)。今回の受賞を励みに、これからもマガジンを起点とした岡山での諸活動により力強く取り組んでいこうと思いを新たにしています。今回は、地方誌が「グッドデザイン」に選ばれた背景も推察しながら、地方メディアのこれからについて私見を書きたいと思います。
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〝ニッチ〟の捉え方
プラグマガジンを創刊した04年ごろ、日本では雑誌の黄金期と呼べるような時期が続いていました。新しい雑誌が次から次へと創刊され、発行部数や広告出稿額で過去最高を記録するものも多かったと思います。クーポン誌や業界専門誌の地方版も隆盛を極めていました。
しかし、あの頃から時代が大きく変わったことは誰もが実感するところ。全国の書店数はこの20年間で半減しており、地域に書店が一つもない無書店自治体はおよそ4分の1にのぼるそうです。こうした現状に、ついに政府が書店支援へと乗り出しましたが、雑誌や週刊誌の休廃刊はもはや止めようがありません。大手新聞社も夕刊の廃止や配達廃止エリアを発表するような時代です。これから先、「紙媒体」を取り巻く環境は更に厳しさを増していくでしょう。
メディアコンテンツのビジネスとして見ると、雑誌は非常にニッチな市場ですが、私はこの〝ニッチ〟の捉え方に生き残りのヒントがあるような気がしています。
それは、「隙間」というビジネス用語としてではなく、あくまで「生態的地位」としてのニッチであるべきということ。商業誌が縮小する一方で、ブランドやショップ、企業などが独自に発刊する『zine』(ジン)がここ数年で増えているように思いますが、それは表現におけるフォーマットとしての価値が健在であることの証左です。
だとすれば、あとは「どんな雑誌をつくるか」だけが、存続を決定づけるのではないでしょうか。それは、経済合理性を超えた包括的なデザイン思考によってのみ生み出されるもの。これは雑誌に限ったことではなく、近い将来に統廃合や再編が予想されるテレビ局や新聞社なども含めた地方の「レガシー」メディアにこそ、「デザイン」が必要なのだと思います。
新聞部×雑誌
プラグマガジン最新号では、数々の受賞歴を誇る県立岡山南高校新聞部の皆さんとタイアップした巻頭特集を企画しました。デジタル時代のいまを生きる高校生が作る新聞は、〝ニッチ〟そのもの。
彼ら彼女らの作る新聞には、取り組む姿勢から紙面の端々の表現に至るまで、私の言う〝デザイン〟が通っています。
山本佑輔(やまもと・ゆうすけ) 04年に創刊した岡山県発のファッション・カルチャー誌『プラグマガジン』編集長。ローカル誌でありながら内閣総理大臣をはじめとする有力政治家や著名人へのインタビューも多く手掛けている。また、プラグナイトやオカヤマアワードといった地方発のイベントや企画もディレクション。通り名はYAMAMON(ヤマモン)。https://lit.link/yamamon
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