実物大の茶釜「平蜘蛛」のぬいぐるみと総務・広報の鍵弥那緒さん
新聞の戸別配達を行う小川新聞店(岐阜県垂井町)が、新聞と全く異なる業界で名をはせている。新聞店店内に並ぶのは可愛くデフォルメした武将のアクリルスタンド、丸いフォルムの城のぬいぐるみ、家紋をプリントしたおしゃれな折り畳み傘。オリジナルで製造・販売する歴史グッズが「可愛い」「面白い」と人気だ。
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(小坂麻里子)
インパクトを重視
「観光グッズを何か作れないか」。垂井町観光協会の理事の1人だった小川一仁社長に相談が持ち掛けられたのは10年前にさかのぼる。NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で垂井町ゆかりの武将・竹中半兵衛がクローズアップされ、観光客が増えたものの、観光グッズがなかった。
同時期にオンラインゲーム『刀剣乱舞』がはやりだし、若い女性が歴史に興味を持ち始めた頃でもあった。当時の歴史グッズは「中高年向けの渋くて格好良い物が多く、若い女性が日常使いできる可愛い商品がなかった」と小川社長。そのニーズを捉え、〝可愛くてポップ〟をテーマに商品開発を開始した。
地元に貢献したい思いが強く大きな収益は期待していなかったが、ある商品がSNSでバズった。家紋と色を選べるヘッドホンで、徳川家や織田信長など〝推し〟の武将の家紋を好きな色で身に着けられることが歴史好きの人に刺さった。販売開始と同時に1000個の注文が入り、製造に追われたという。
実物大ぬいぐるみシリーズもバズった商品の一つだ。「平蜘蛛(ひらぐも)」のぬいぐるみは側面の模様も刺繍で完全再現した戦国時代の茶釜。「当時は茶器を持つことがステータスだった。現代の所有欲を満たすこととリンクしたのではないか」と背景を推測する。
その後も商品を拡大しリピーターが増えた。大河ドラマなどから着想し、小川社長が企画・製造したグッズは230種類に上る。売り上げの9割は専任のスタッフによって運営されるECサイトだ。
製造はUV(紫外線)プリンター、ガーメントプリンター、刺繍機、レーザーカッターなど揃え、ほとんど自社で行う。
実は小川社長は「元々歴史に興味がなく、知識もほぼゼロだった」という。頼まれたから始めた歴史グッズに多くのファンが生まれた。「歴史グッズの後発企業だからありきたりの物を作っても勝てない。他にない、変な物を作りたかった」と語る。
ユーチューブ1万人超
現在注力しているのは、東海地方を中心に史跡を紹介するユーチューブチャンネル「レキトビラ」。大河ドラマの建築考証を担当する三浦正幸氏をゲストに、地元行政の協力のもと製作している。
撮影、編集はすべて小川社長が行う。製作に必要な機材を200万円ほど初期投資し、独学でノウハウを身に着けた。クオリティーと認知度の向上で1万6000人以上がチャンネル登録している。今後はユーチューブチャンネルの制作・運営でより一層の地域貢献を進めていく。
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