先日、ザ・リード・サミットというファッションビジネスの2日間のコンファレンスに行った時だった。展示会場の一角に、無料でタトゥーを受けられるスペースがあった。このコンファレンス、昨年はネイルを無料で受けられるコーナーがあって、たくさんの若い女性たちが長蛇の列をつくっていた。「え、この人たち、会社から派遣されてこのコンファレンスに来ているのに、こんなところで行列していていいの?」とマジメな私は思ったのだが、今年はビジネスコンファレンスでタトゥーを提供していることに改めて驚き、時代の変化を感じた。
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タトゥーは予約がとれるようになっていて、行列こそできていなかったが、受付の女性が施術を受けている女性をちらりと見て、「あの人、今日7人目か8人目だと思う」と私に小声でささやいた。その時は初日の12時半くらい。ということは、コンファレンスが始まるや否や、そのコーナーに気づいてタトゥーをやってもらう人たちが続出しているということ!それにも驚いた。
マンハッタンでは、ここ2年くらい、タトゥーパーラーが急増している。最初に変化を感じたのは2年前、ソーホーのブロードウエイ沿いに目新しいタトゥーパーラー、リブ・バイ・スウォードを見かけた時だった。ストリートに面した大きなウインドーとガラスドア越しに見渡せる広々とした店内。白い壁に黒でタトゥーのモチーフが描かれている。天井の中央には巨大なシャンデリア。白黒で統一した明るくクリーンな店内は、タトゥーのイメージの変化を反映していると感じさせられた。
タトゥーパーラーが急増しているということは、タトゥーの需要と人気が高まっているということだ。リブ・バイ・スウォードのアシスタントマネージャー、サマンサ・レスマンさんにその理由を聞くと、「タトゥーがより幅広く社会で受け入れられるようになっているから。よりメインストリームになっている」と話してくれた。いわば自己表現手段の一種として定着してきたのであり、タトゥーを何か反逆的あるいは後ろめたいダークなイメージと思うこと自体が古いのだろう。警官、医者、看護師、教師といった職業の人もタトゥーをするようになり、そうした職業の人々にとってさえ、タトゥーをすることは「悪いことではない」という認識になっているという。職場では長袖を着て見えないようにする人もいるけれど、もしも見えることがあっても、だからと言ってドン引きされることはないそうだ。弁護士の友人にもタトゥーをしている弁護士がいるか聞いたところ、「そういえば、前の職場で両腕にタトゥーを大きく入れてる弁護士がいた」とのこと。レスマンさんによると、今は小さいタトゥーがトレンドだそうで、「ちょっと入れてみたい」人により受け入れられやすくなっているのだろう。
リブ・バイ・スウォードのお客さんは18歳から70代までだそうだが、私が店内にいた時は若い女性ばかりだった。30歳前後とおぼしき女性はショーツから伸びる両脚にイカ、雨粒がしたたり落ちる傘、バラ、月などのタトゥーをあちこちに入れ、両腕にもいろいろ。既成のモチーフが載ったブックを熱心に見ていて、やってほしいタトゥーを受付の人に伝えていた。「タトゥーは1つやると、またやりたくなる。くせになる」と聞いたこともある。ニューヨークのタトゥー業界は当分安泰なのかもしれない。ファッションにもなんらかの影響が出てくるのかもしれない。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました
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