独自のポジションを確立する「インブルー」のデニムスーツ
ファッションジャーナリストの評論やハイブランドのコレクションをチェックしていると、世界的なクラシック回帰の流れを感じる現在。一方、国内ではビンテージのデニムアイテムやTシャツの高騰がしばしば話題になっています。今回は、こうしたトレンドに左右されることなく、既存のファッションカテゴリーとは一線を画した独自のポジションを確立するデニムスーツ専門店「inBlue」(インブルー)を展開するナッシュ(岡山県倉敷市)を紹介します。
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売れ行きは10倍以上
デニムの企画・販売を主たる事業としていた同社が開発した色落ちしないデニム「エバーブルーデニム」をスーツとして商品化したのが、インブルーブランドの始まりです。07年に倉敷・児島で最初の店舗をオープン。12年に岡山県でも随一の観光地である倉敷美観地区に移転オープンした後、21年には同地区内で旗艦店として新たに移転オープンしました。
ブランド立ち上げ当初は年間10~30着程度だったという売れ行きも、現在は平均して400着前後と、10倍以上に成長。都市部を中心に、全国でオーダー会を実施しており、売り上げの半数以上を県外が占めています。
主な価格帯は20万~30万円程度。経営者や医師といったエグゼクティブ層の顧客が多く、2着目以降をリピートでオーダーする比率も高いのが特徴です。また、既存顧客がオーダー会に知人を同伴するなど、ブランドのファンが自然と増えていく好循環も生まれました。
インブルーの歴史は、デニムでスーツをあつらえることにネガティブだったファッション業界に新たなカテゴリーを構築する挑戦であり、デニムをフォーマルのど真ん中に持ち込んだ嚆矢(こうし)だったといえます。
〝本物〟を実感させる
しかし、「倉敷・児島」「デニム」「スーツ」と聞けば、ファッション感度の高い人からは「どうせスーベニア(土産物)の類いだろう」といった色眼鏡で見られてしまいそうなきらいもあります。同社の松岡浩文社長にこうした受け止めについて踏み込んで尋ねてみました。
「倉敷美観地区は一大観光地であり、物珍しさから偶然お店に立ち寄られる観光客の方も大勢いらっしゃいます。ただ、洋服がお好きな方であればあるほど、ご説明をして実際に袖を通していただければ本物であることを実感して頂けているように思います。独自に開発した生地、日本屈指の縫製、熟練した採寸技術で作る当社のスーツは、これまでにあまたの高級スーツをあつらえてこられた方の審美眼に耐えるだけでなく、新しい選択肢として受け入れて頂けました。私たちがベンチマークするのは『ブルネロ・クチネリ』のような体制と哲学を持ったブランド。今後は、特に顧客の多い東京への出店も計画しています」(松岡社長)
ややもすれば「イロモノ」にされかねない「デニムスーツ」をオーソライズしたインブルーの挑戦。それは物作りの本懐ともいえるクオリティーへのこだわりが成し得た現在地だと思います。岡山県にお越しの際は、ぜひショップで袖を通してみてください。
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