1998年に創業したカナダのバンクーバーのプレミアムアスレティックウエアブランド「ルルレモン」。日本へは2017年に上陸し、その高機能なウェアはヨガやトレーニングを行う人々を中心に幅広い層から愛されている。多くのアパレル企業が苦況だったコロナ禍でも成長を続け、現在も売上が好調な同ブランド。今回は、ルルレモン アスレティカ JPでリージョナルマネージャーを務める福林 綾さんに取材し、スタッフを支える企業カルチャー、ストアスタッフの仕事内容やキャリアパスについて話を伺った。
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福林 綾さん/ルルレモン アスレティカ JP リージョナルマネージャー
1981年生まれ。東京都出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新卒でテレビ番組の制作会社に入社し、グリー株式会社へ転職。2017年にルルレモン アスレティカ JPに入社。販売スタッフ、店長を経て、2023年にリージョナルマネージャーに就任。
テレビ、スマホゲーム業界を経て「ルルレモン」へ
― テレビ番組の制作会社、スマホゲームの企業と、福林さんはユニークなキャリアパスをお持ちです。
テレビ番組を制作する会社のディレクターとして報道番組の特集や人物ドキュメンタリーなどを担当していました。やりがいはありましたが、広告費がテレビからインターネットにどんどん流れていった時代で業界の将来性に不安を覚えたんですよね。
学生時代に学んでいたマーケティングやプロモーションをしたいと、2012年にグリーに転職しました。グリーでは、新しいゲームをリリースする際にいかに集客するかが主なミッションでした。ネット広告だけでなく秋葉原でリアルイベントをするなどプロモーションの戦略を練り、実行していました。
― なぜスマホゲームの会社から「ルルレモン」に転職されたのでしょうか。
マーケティングやプロモーションの仕事は続けたかったものの、ゲーム業界にずっといたいという熱い想いが持てなかったんです。そんな中、たまたまルルレモンに出会ったのですが、調べれば調べるほど、自分の価値観にピッタリとあった製品や理念を持っている会社だと知り、まだ日本では「ルルレモン」はあまり知られていませんでしたが、入社を決めました。
― 3社とも異なる業界ですね。
3社とも、コミュニケーションが軸という点では自分の中で繋がっています。テレビはマスメディアだし、グリーはプロモーションを介したコミュニケーション。どういう発信をすると、どんな反応が返ってくるのかを知るのが楽しくて。それができる仕事をしていますね。
店舗の裁量が大きく、様々な経験を積める
―「ルルレモン」に入社し、どのポジションからスタートしましたか。
ストアスタッフです。「ルルレモン」は大きく分けて、ストアとストアサポートセンター(SSC)と呼ばれる本社機能に分かれます。ストアが主役で、SSCがサポートをするのが「ルルレモン」の理念です。接客経験がなかったので最初はストアスタッフとして働くことに躊躇したのですが、話を聞くうちに「ルルレモン」なら店舗からキャリアを始めるメリットが大きそうと感じました。
― どのような点が魅力的に映ったのでしょうか。
「ルルレモン」は店舗の裁量が大きいんです。店舗にいながらプロモーションやマーケティング的な動きができる、と感じたのが大きな決め手でした。また、ストアスタッフでもマイクロマネジメントではなく、個人の判断と責任を持って働けるところが私に合っていました。
― ストアスタッフは販売以外の仕事もできるのですか。
コミュニティイベントの企画・実行をはじめ、社員向けのトレーニングもストアスタッフが担当するのでプロジェクトマネジメントやファシリテーション、プレゼンテーションスキルが身につきます。熱意があれば、ポジションに関わらずプロジェクトも任せてもらえるので、パフォーマンスを発揮するチームの作り方も学べます。
業務の範囲が多岐に渡るからこそ、「ルルレモン」内でのキャリアパスはもちろん、今後転職する際にも通用するスキルを習得できますし、いずれ起業したい人にとってもきっと有意義な経験ができると思います。
― アパレルの販売員でそこまで広い業務を担当できるのは珍しいですよね。
「アパレルの販売員は20代後半になると、つぶしが効かなくて転職が難しい」という話をよく耳にします。でもそんな悲しい思いはしてほしくないし、「ルルレモン」では“「ルルレモン」以外の会社でも通用するスキル”を育む環境を整えている自負があります。確かに仕事は大変ですが、ストアスタッフでありながら一般的なアパレルやリテール業界の販売員では学べないスキルを覚えられるのは財産になるのではないでしょうか。
― 福林さんご自身は未経験でストアスタッフとして働き始めていかがでしたか。
それまで自分が身につけてきたコミュニケーション能力は、接客に活かされると思いましたし、様々な店舗を担当できたことも糧になっています。入社3か月後に副店長、入社1年後ぐらいには店長になり、店長として新店舗のオープンにも何度か立ち会うことができました。ゼロから店を作ることの醍醐味を味わうことができましたね。
熱意があれば自身の描くキャリアパスを歩める
― 店長としてはどのような仕事を行ってきましたか。
人を育てる環境をつくることが一番大きな仕事でした。一人ひとりと話をするだけでなく、人が育つために必要なルーティンやシステムを作ったり、中長期的なビジネスの戦略を立てたりしましたね。店長を経験し、よりビッグピクチャーのビジネスが見えるようになりました。
― ストアスタッフからスタートした場合、その後のキャリアパスにはどんな選択肢がありますか。
実例を挙げると、ストアスタッフを経て、現在はSSCでローカライゼーションをしているスタッフがいます。本国からのキャンペーンは基本的に英語のため、それを翻訳し、コピーライティングをしたりする仕事です。ほかには、販売員をトレーニングするラーニング アンド リーダーシップに就いているスタッフやビジュアルマーチャンダイザーとして全店舗の取りまとめを行うスタッフもいます。みんな店長や副店長経験者ですね。意欲があれば、背中を押してもらえる環境です。昨年から海外との交流にも力を入れており、本国へ1年ほど学びに行っているスタッフもいますよ。
― 福林さんが昨年8月に就いたリージョナルマネージャーのミッションはどのようなものですか。
現在「ルルレモン」全体としても、ジャパン社としても急成長している過渡期を迎えていて、今までの手法の延長だと円滑に進まないことが起き始めています。他部署と交渉しながら、販売員がより働きやすくなるよう、会社全体のサポート体制を構築しています。10人の組織なら目が行き届きますが、100人、200人となったら評価基準をクリアにするなど、色々なシステムの整備が必要ですから。
ライフスキルの向上、成長を加速させる研修も
― 入社後はどのような研修がありますか。
会社の成り立ちなどのカルチャー、店舗で素晴らしいゲストエクスペリエンス(顧客体験)を提供する方法、素晴らしいゲストエクスペリエンスに必要な商品知識。研修では、これらについてしっかりと学びます。
― 中途入社やマネジメント層に対しての研修もありますか。
「ルルレモン」には、「育てたリーダーを世に輩出したい」という想いがあります。我々が「コアトゥエルブ」と呼ぶ、素晴らしいリーダーになるための12のセッションはどの立場のスタッフでも受講することができます。
例えば、業務上、困難に直面したりプレッシャー下におかれると、できないことを人のせいにしてしまいたくなるようなことって誰にでもあると思うんですよね。でもそんな中でも「他責にするのではなく、自分は何ができるか」を常に自問自答する。そんなマインドを育てるセッションで、言わば、ライフスキルを向上させる内容です。異動や昇進をした際のオンボーディングのトレーニングや長年同じポジションで頑張っている人たちの成長を加速させるトレーニングもあります。
― 人の成長を大切にしている会社だからこそですね。
ヨガウェアから始まった会社なので「より幸せに生きるためには」といったヨガ哲学が根本にあるんです。自分と向き合えるスキルが習得できれば、嫌なことがあっても気持ちを切り替えやすくなりますし、それがゲストエクスペリエンスにも生きてくるんです。ライフスキルを磨くことは、仕事にも返ってくるんですよね。
会社の基盤に“人の成長”が組み込まれている
―「ルルレモン」の特徴的な社風はありますか。
人と向き合うことをとても大切にしていて、スキル的な意味でのdoingと、人としての成長という意味でのbeingの両方が評価基準にあることです。スタッフは、「ルルレモン」で昇進していくために、もっと頑張った方がいい部分を指摘されます。それを認めて努力することで自身の成長に繋がります。
私の仕事はスタッフの考え方の癖や本人が無意識でいるbeingに気づいてもらい、変化を促すことですが、その関わりを通じて私自身が気づかされることも多いです。そういった意味でも、本当に成長できる会社ですね。
― 人の成長を大切にするのは会社の雰囲気でしょうか、それとも構造でしょうか。
構造ですね。職務記述書にも各ポジションで求められることのほか、「ルルレモン」のスタッフとして必要な共通の姿勢も明記されていますから。会社の基盤に人の成長が組み込まれていて、その企業理念にスタッフ一人ひとりが腹落ちしているんです。そういう会社は珍しいのではないでしょうか。
― スタッフ一人ひとりが自立した企業という印象を受けます。
トップダウンではなく、個人の強みや情熱を持ってできることをしよう、という考え方なのです。もちろん店舗の中でスタッフのバランスが必要なので、好きなことだけをできるわけではありませんが、その人が熱意を向けていることを理解した上で、その熱意や強みを生かせる役割や機会をなるべく作るようにしています。言った者勝ちなところがあるので、チャレンジしたい方には最適な環境ですね。
―「ルルレモン」で活躍できる人材に共通点はありますか。
自分で考えてアクションを起こせる人。自身の成長に意欲があって、スタッフと正面から話し合うことが煩わしくない人ならどんどん成長していける環境です。
― 今後の展望を教えてください。
グローバルも日本もさらに成長していくことが予想されていますし、店舗を増やす計画もあります。会社が大きくなっても根幹にあるカルチャーを薄めることなく、拡大させていくのが私の使命だと思っています。
文:津島千佳
撮影:船場拓真
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